卵巣がんにPARP阻害薬ニラパリブが第3相試験で有益なデータ

PARP阻害薬のニラパリブ(販売名:ゼジューラ)を用いた維持療法は、進行上皮性卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんと新たに診断された女性を対象としたPRIME試験において、バイオマーカーの状態に関係なく無増悪生存期間(PFS)に統計学的に有意で臨床的にも意味のある改善をもたらした。

「PRIME試験のデータは、一次治療であるプラチナ製剤ベースの化学療法後に行われる標準治療としてのニラパリブ単剤療法をバイオマーカーの状態に関係なく引き続き支持しています」と、本試験に出資したZai Lab社の社長兼がん領域グローバル開発責任者であるAlan Sandler医師はニュースリリースで述べた。

この第3相試験の結果は、米国婦人科腫瘍学会(Society of Gynecologic Oncology)年次総会で発表された。

本試験には、一次治療であるプラチナ製剤ベースの化学療法で完全奏効または部分奏効が得られ、初回治療としての、あるいは初回化学療法中の腫瘍減量手術を受けた進行卵巣がんの女性384人が登録された。術後の残存病変の状態は不問とされた。

女性らは維持療法として、個別に設定された用量のニラパリブまたはプラセボにランダムに割り付けられた。無増悪生存期間の追跡期間中央値は27.5カ月であった。

PRIME試験の期間中、無増悪生存期間の中央値はニラパリブ群の方がプラセボ群よりも有意に長かった(24.8カ月対8.3カ月、ハザード比0.45、P <0.001)。

生殖細胞系列のBRCA変異がある女性において、ニラパリブ群では無増悪生存期間の中央値は未達、プラセボでは10.8カ月であった(ハザード比0.40)。

生殖細胞系列のBRCA変異がない女性では、無増悪生存期間中央値はニラパリブでは19.3カ月であったのに対し、プラセボの8.3カ月であった(ハザード比0.48)。

全生存期間のデータは解析に必要な事象数に達していないが、データカットオフ時点でニラパリブに有利な傾向が見られた。

新たな安全性シグナルは検出されなかった。治療中に発現した有害事象で最も多かったのは血液系と消化器系であり、ニラパリブ群で急性骨髄性白血病と骨髄異形成症候群が各1例報告された。

「PRIME試験のデータは、中国やその他の国で卵巣がんの一次治療に関する臨床診療に大きな影響を与えると考えています。個別に設定された開始用量レジメンによって有効性と安全性プロファイルの向上が実証されたからです」と、本論文の著者の一人である中国医学科学院・北京協和医学院のLingying Wu医師はニュースリリースで述べた。

本試験は、Zai Lab (Shanghai) Co., Ltd社から資金提供を受け、2020年「重要な新薬開発」のための中国国家科学技術重大特別プロジェクトから一部支援を受けた。

出典:https://bit.ly/3ts4qES  婦人科腫瘍学会(SGO)年次総会、アリゾナ州フェニックス、2022年3月18~21日

翻訳担当者 白濱紀子

監修 東海林洋子(薬学博士)

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