プラチナ抵抗性卵巣がん患者の1/3が複合体療法ミルベツキシマブにより寛解

プラチナ製剤ベースの化学療法を受けた卵巣がん患者を対象とした臨床試験において、新たな「複合体」療法は標準治療と比べて大幅に優れた効果を示した。アリゾナ州フェニックスで開催される米国婦人科腫瘍学会(SGO)年次総会のセッションで、ダナファーバーがん研究所の研究者が報告する。

この治療薬mirvetuximab soravatansineは、試験に参加した患者の約33%に客観的奏効(がんの負荷が測定できるほど減少すること)をもたらした。これは、プラチナ製剤ベースの化学療法を受けて効果が得られていない卵巣がん患者に対する現行の治療法の奏効率が1桁であることと比べられる。

この新薬は、最近増えつつある抗体薬物複合体の一つで、ADCとも呼ばれるが、がん細胞を直接標的とする抗体に薬剤を結合させたものである。Mirvetuximab[ミルベツキシマブ]は、高悪性度漿液性卵巣がんの葉酸受容体α分子を標的とする抗体と、微小管形成を阻害するDM4と呼ばれる薬剤分子を結合させたものである。(微小管は、細胞に形と構造を与える細胞骨格の主要な構成要素である。)葉酸受容体とよばれるこのタンパク質は、一部の腫瘍細胞では正常細胞よりもはるかに多く存在するため、抗がん剤の恰好の標的となり得る。

SORAYA試験と名付けられた同試験には、葉酸受容体αを高発現しているプラチナ製剤抵抗性の高悪性度漿液性卵巣がん患者106人が登録された。すべての患者は、腫瘍がより多くの酸素と栄養を取り込むための血管形成を阻害する薬剤であるベバシズマブの投与歴があることが条件とされた。参加者は、卵巣がんに対して最大3回の治療を受けていた。

中央値8.1カ月の追跡の結果、試験参加者の32.4%が抗がん作用の客観的奏効を示し、そのうち5人では完全奏効、すなわち、すべてのがんの徴候消失が認められた。現在、奏効期間の中央値は6.9カ月である。

Mirvetuximabの試験参加者に対する忍容性は良好であった。本剤の投与による最も一般的な有害副作用は、霧視(かすみ目)、角膜症(目の非炎症性疾患)、吐き気であった。

SORAYA試験の共同主任研究者であり、SGOでこれらの結果を発表する予定であるダナファーバーがん研究所婦人科腫瘍部門長のUrsula Matulonis医師は、「これらのデータは、卵巣がんの患者とその担当医にとって大きな変化をもたらす可能性があります」と述べている。そして、「プラチナ製剤抵抗性の患者、特に2次治療以降の治療を受けている患者は、現在使用可能な治療法での奏効率は1桁台であり、毒性も強く出ています。プラチナ製剤抵抗性の卵巣がん患者に対してmirvetuximabは、30%を超える客観的奏効率、約6カ月の奏効期間、治療中止率7%という優れた有効性と忍容性を示しています。これらのデータは、mirvetuximabが将来、葉酸受容体α陽性の卵巣がん患者に対する標準治療薬となる可能性があることを裏付けるものです」と述べている。

翻訳担当者 瀧井希純

監修 峯野知子(薬学・分子薬化学/高崎健康福祉大学)

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