BRCA陽性卵巣がんに対するオラパリブ維持療法の効果は2年治療後も持続
新たに卵巣がんと診断されたBRCA遺伝子変異を有する女性において、2年間のオラパリブ(販売名:リムパーザ)維持療法後に持続的な無増悪生存率の改善が認められることが臨床試験の解析により明らかとなった。
本試験は、BRCA遺伝子変異を有し、進行した高異型度漿液性卵巣がんや類内膜卵巣がんと新たに診断され、プラチナベース化学療法に対して完全奏効または部分奏効が認められた女性を対象とした。オラパリブ 300 mg を1日2回投与する群(n=260)とプラセボ投与群(n=131)に2対1の割合で患者を無作為に割り付け、2年間の維持療法を行った。
無増悪生存期間は、オラパリブ投与群よりプラセボ投与群で有意に短かった(ハザード比0.33)、と研究者らがLancet Oncology誌で発表している。
オラパリブ投与群の追跡期間の中央値は4.8年、無増悪生存期間の中央値は56カ月であった。これに対し、プラセボ投与群の追跡期間の中央値は5.0年、無増悪生存期間の中央値は13.8カ月であった。
「5年間の追跡調査の解析では、オラパリブの効果が2年以上持続しており、その有効性の程度から、目に見えるがんがない患者であれば2年間のオラパリブ維持療法終了後も、その効果が持続することが証明されたのです」と、本研究の筆頭著者である、ロンドンのRoyal Marsden NHS Foundation Trust およびInstitute of Cancer ResearchのSusana Banerjee医師は語った。
「これほどの有効性は、誰もが待ち望む素晴らしいものです」と、Banerjee医師は電子メールで述べている。
本試験に参加した患者の大半(72%)はBRCA1 遺伝子変異を、106人(27%)はBRCA2 遺伝子変異を、3人(1%)は両変異を有していた。
治療期間の中央値は、オラパリブ投与群で24.6カ月、プラセボ投与群で13.9カ月であった。研究デザインで目標とされた2年より前の時点で治療を中止した患者は、オラパリブ投与群で123人(47%)、プラセボ投与群で92人(71%)であった。
有効性に関する副次評価項目である、2回目の病勢進行または死亡までの期間の分析では、5年間の無増悪生存率がオラパリブ投与群で64%、プラセボ投与群で41%であった。
最も多いグレード3以上の有害事象は貧血であり(オラパリブ投与群22%、プラセボ投与群2%)、次いで好中球減少症(オラパリブ投与群8%、プラセボ投与群5%)、疲労または無力症(オラパリブ投与群4%、プラセボ投与群2%)であった。
重篤な有害事象は、オラパリブ投与群(21%)でプラセボ投与群(13%)より多く発生した。治療関連の重篤な有害事象も同様に、オラパリブ投与群(10%)でプラセボ投与群(2%)より多く発生した。
本試験では、過去のオラパリブ研究でみられていない新たな安全性シグナルは認められなかったと研究者らは言及している。また、本臨床試験でこれまでに確認された骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病について、新たな症例はなかった。
全生存期間のデータは、未達のため得られていない。
「それでも、新たに進行卵巣がんと診断されたBRCA遺伝子変異を有するすべての女性に対して、術後のプラチナベース化学療法が奏効した後にオラパリブ維持療法を検討すべきである、ということを本試験結果は示唆しています。
理由は明らかです。がんが再発せずに生きている女性が増えたからです。これは、より多くの女性が治癒できる可能性を示しています。われわれは全生存期間データの分析を待っています」とBanerjee医師は述べた。
出典:https://bit.ly/32x0DuX Lancet Oncology誌 オンライン版 2021年10月26日
翻訳担当者 平 千鶴
監修 北丸綾子(分子生物学)
原文掲載日
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