PARP阻害薬ニラパリブは再発卵巣がんのQOL維持に有益
プラチナベース化学療法で寛解に至った再発卵巣がん患者では、ニラパリブによる治療は、症状や毒性の現れない期間(TWiST)を有意に延長できることがダナファーバーがん研究所の最新の研究で明らかになった 。
本日、電子版Journal of Clinical Oncology誌に公開された本研究では、少なくとも2コースのプラチナベースの化学療法による治療を受けたプラチナ感受性卵巣がんの女性を対象に、ニラパリブとプラセボとを比較した第3相ENGOT-OV16/NOVA試験の553人の患者データを解析した。
結果は、遺伝性(生殖細胞系列)BRCA遺伝子変異を有する患者と変異のない患者について評価された。
解析により、ニラパリブ維持療法を受けている女性において、TWiST(症状や毒性の現れない期間)平均値はBRCA変異群でプラセボ群よりも4倍以上高く、非変異群で2倍高いことが示された。
ニラパリブ(販売名Zejula・日本未承認)は、DNAの損傷を修復する能力を低下させることによりがん細胞を弱体化させるPARP阻害薬として知られる製剤である。
2017年に米国食品医薬品局(FDA)によって、プラチナ化学療法に奏効した再発上皮卵巣、卵管、または原発腹膜がんの女性の維持療法として承認された。
「再発卵巣がん患者がプラチナベースの治療後に寛解に入ると、PARP阻害薬を使用して無増悪生存期間を延長する選択肢が得られます」 と、筆頭著者であるダナファーバー研究所婦人腫瘍科長のUrsula Matulonis医師は述べた。
TWiST(症状や毒性の現れない期間)は、疾患の進行や治療による毒性がなく、患者が生活の質を良好に維持できる可能性が高い期間の推定値を提示する統計的尺度である。
この研究では、研究者らはまず、ニラパリブ治療群とプラセボ投与群の無増悪生存期間平均値と毒性のあった期間の平均値を推定した(毒性は、グレード2以上の疲労、悪心、または嘔吐として定義された)。
無増悪生存期間平均値と毒性のあった期間の平均値の差により、研究者らはそれぞれの群のTWiSTを算出した。
ENGOT-OV16/NOVAデータの以前の解析では、ニラパリブ治療群はプラセボ群よりも病勢進行なしで長期間生存することが示された。
Matulonis氏は次のように述べている。「維持療法を追加する場合、女性の生活の質を大幅には変えていないことを示すことは本当に重要です」。
本研究の統括著者は、コペンハーゲン大学病院(デンマーク)のMansoor Mirza医師である。共著者は、以下のとおりである。Lydia Walder, MSc, and Holly Guy, MSc, of FIECON, St Albans, United Kingdom; Trine J. Nøttrup, MD, PhD of Copenhagen University Hospital, in Denmark; Paul Bessette, MD, of University of Sherbrooke, Quebec, Canada; Sven Mahner of University of Munich, Munich, Germany; Marta Gil-Martin, MD, of Institut Catala` d’Oncologia-IDIBELL, L’Hospitalet, Barcelona, Spain; Elsa Kalbacher, MD of University Hospital Besançon, Besançon, France; Jonathan A. Ledermann, MD, of National Cancer Research Institute and University College London Cancer Institute, London, United Kingdom; Robert M. Wenham, MD of H. Lee Moffitt Cancer Center; Kathrine Woie, MD, PhD, Haukeland University Hospital, Bergen, Norway; Susie Lau, MD, of Jewish General Hospital, Montreal, Quebec, Canada; Frederik Marme ́, MD, PhD, of Universitatsklinikum Heidelberg, Heidelberg, Germany; Antonio Casado Herraez, MD, PhD, Hospital Universitario San Carlos, Madrid, Spain; Anne-Claire Hardy-Bessard, MD, of Centre Amoricain D’Oncologie, Paris, France; Susana Banerjee, PhD, MA, of the National Cancer Research Institute and The Royal Marsden NHS Foundation Trust and Institute of Cancer Research, London, United Kingdom; Gabriel Lindahl, MD, of Linkoping University Hospital, Linkoping, Sweden; Benedict Benigno, MD, of Northside Hospital, Atlanta, Ga.; Joseph Buscema, MD, of Arizona Oncology, Tucson, Ariz.; and Karin Travers, DSc, of TESARO, Waltham, Mass.
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