TAPUR試験が新たに4つの患者群を追加し登録を拡大

4コホート(患者群)に患者を追加登録:免疫療法薬の組み合わせにより登録患者総数は500人を越える

米国臨床腫瘍学会(ASCO)のTargeted Agent and Profiling Utilization Registry(TAPUR)試験は、4つの患者群(コホート)を拡大して新規患者を追加登録した。同試験の規模は登録患者数で500人を越え、利用可能な治療法が16種類と、拡大し続けている。

「この試験は重要な到達点に達しました。われわれはこれらの治療法の調査をさらに深めることができると高揚しています」とASCO医務部長であるRichard L. Schilsky医師(FACP、FASCO)は述べた。「現時点で薬効についての結論を出すべきではないが、TAPUR試験の進展と拡大は喜ばしいことです」。

TAPUR試験は、薬剤の標的となる一つあるいは複数の遺伝子多型を有する進行がん患者において、市販の分子標的抗がん剤の活性シグナルを同定するようにデザインされている。
TAPUR試験のデータ安全性モニタリング委員会(DSMB)は、次のコホート(患者群)に関して患者の追加登録を推奨している。

・セツキシマブを投与された、KRAS、NRAS、BRAFの野生型多型を有する卵巣がん患者

・ペムブロリズマブを投与された、腫瘍の遺伝子変異総量が多い乳がん患者

・ベムラフェニブにコビメチニブを併用投与された、BRAF V600E変異を有する大腸がん患者

・単剤治療でパルボシクリブを投与された、CDKN2A欠損あるいは変異を有する非小細胞肺がん患者

ステージ2への拡大について上記推奨事項を前提として、TAPUR試験の実施施設は、これらのコホートに適格な患者を継続して登録する予定である。

TAPUR試験のDSMBはまた、次のコホートの恒久的な封印を推奨している。

・単剤治療でパルボシクリブを投与された、CDKN2A欠損あるいは変異を有する膵がん患者

TAPUR試験参加者は、腫瘍タイプ(進行固形がん、多発性骨髄腫、B細胞非ホジキンリンパ腫)、遺伝子多型、そして試験薬に基づいてコホートに登録される。ステージ1は、一つのコホートで最大10人まで登録され、客観的奏効や病勢安定を16週間以上モニタリングする。2人以上の患者で良好な転帰を示せば、そのコホートはステージ2に拡大される。ステージ2ではさらに18人の患者が登録されモニタリングされる。ステージ2の肯定的結果としては、28人中少なくとも7人の患者で少なくとも16週間の病勢安定という客観的奏効が求められる。あるコホートの登録拡大は、そのコホートにおける薬剤のさらなる試験の正当化に十分な薬剤活性が、少数の患者でみられたことを示唆しているが、その薬剤についてプロトコルで定義する肯定的結果の最終的証明については、結論を出すべきではない。ステージ2からの全データが利用できるようになると、TAPUR試験のデータ安全性モニタリング委員会は、データを再審査し、これらの基準に適合するかを決定する予定である。

一つの患者群で良好な転帰を示す患者が2人に達しない場合、その群はそこで閉じられる。患者群の閉鎖は、薬剤、遺伝子多型および疾患の間に有効性を示すシグナルが得られなかったことを示している。

現在、TAPUR試験には510人の患者が登録され、20州83臨床施設で登録が可能である。Bristol-Myers Squibb社は、がんを攻撃するために患者の免疫システムを解き放つ免疫療法として、新しい薬剤併用(ニボルマブ+イピリムマブ)療法を提供している。これを加えると現在、薬剤が合計19種類、それらを用いた分子標的療法選択肢が16種類(一部の薬剤は併用で使われる)が利用できる。
TAPUR試験は、登録/除外基準に関する一般的な情報やその他の情報を含むClinicalTrial.gov(NCT 02693535)に登録されている。患者や臨床医は、www.TAPUR.orgから、一般的な適格性基準、参加している臨床施設そして施設の試験チームの連絡先などの試験情報を入手できる。参加に関心のある研究者や診療施設は、TAPUR試験ウェブサイトで詳細情報を得るか、http://www.tapur.org/contact-usからASCO試験チームに連絡することができる。

翻訳担当者 中野駿介

監修 石井一夫(バイオ統計学/久留米大学バイオ統計センター)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

卵巣がんに関連する記事

一般的な卵巣がんに対する特殊なナチュラルキラー細胞の有効性が非臨床で示されるの画像

一般的な卵巣がんに対する特殊なナチュラルキラー細胞の有効性が非臨床で示される

研究タイトルメソセリンの膜近位領域を標的とするCARメモリー様NK細胞が卵巣がんに有望な活性を示す掲載誌Science Advances誌著者(ダナファ...
一部の早期婦人科がんにペムブロリズマブ+化学放射線や抗Claudin6抗体薬物複合体が有益の画像

一部の早期婦人科がんにペムブロリズマブ+化学放射線や抗Claudin6抗体薬物複合体が有益

ESMO 2024で報告された研究により、現在の標準治療に免疫療法を追加することで臨床的に意味のある利益が得られる早期の子宮体がん(子宮内膜がん)(1)および子宮頸がん(2)の新たな患...
【ASCO2024年次総会】進行卵巣がんにリンパ節郭清が不要である可能性の画像

【ASCO2024年次総会】進行卵巣がんにリンパ節郭清が不要である可能性

ASCOの見解(引用)「このランダム化第3相臨床試験は、進行卵巣がんの手術を受ける患者が、原発巣からの転移がないと思われるリンパ節の追加切除を安全に回避できる可能性を示していま...
デリケートゾーン用タルクの使用は卵巣がんリスク上昇と関連の画像

デリケートゾーン用タルクの使用は卵巣がんリスク上昇と関連

ASCOの見解「本研究は、インティメイトケア製品、特にデリケートゾーン用タルクに関連する潜在的リスクを強調している。このような製品が、特に頻繁に使用する人や20代や30代で使用...