Rucaparibが再発卵巣がんの維持療法に有望
Rucaparib[ルカパリブ]は、ARIEL3試験においてITT(Intention To Treat)解析およびサブグループ解析において、卵巣がんの再発を遅らせた
悪性度の高い、プラチナ製剤感受性再発卵巣がん、卵管がんまたは原発性腹膜がん患者の維持療法に、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤であるルカパリブ内服とプラセボを比較した第3相ランダム化試験(ARIEL3)の結果が発表され、無増悪生存期間を延長したことが明らかになった。これは、スペイン、マドリッドで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2017の年次総会で報告された。
Jonathan Ledermann腫瘍内科教授(UCL Cancer Institute, UCL Hospitals英国、ロンドン)は、プラチナ製剤を中心とした化学療法に奏効を示した悪性度の高い卵巣がん、卵管がんまたは原発性腹膜がん患者に対して、プラセボと比較しrucaparibの維持療法を検証した、多国間共同二重盲検第3相試験であるARIEL3 (NCT01968213)の結果を発表した。
プラチナ製剤治療6カ月以降に病態の増悪がみられたとして定義されるプラチナ製剤感受性患者が試験の対象となった。
試験参加者は、プラチナ製剤を中心とした治療を過去に2回以上受け、直近のプラチナ療法に対しRECIST v1.1基準で完全奏効または部分奏効を示したか、婦人科がん国際共同研究グループ(GCIG)の CA-125基準で奏効を示した者とされた。
また全患者が、正常値上限より低いCA-125を示していることとした。
564人が、2:1にランダム化され、375人がrucaparib 600mgを1日2回投与、189人がプラセボの投与を受けた。
前もって定義された3階層のサブグループにおいて、研究担当医師により評価された無増悪生存期間を有効性の主要評価項目とし、変数減少法を用いて評価した。
3階層のサブグループとは、1)遺伝性の生殖細胞突然変異、あるいは非遺伝性の体細胞突然変異をもつBRCAの突然変異、2)BRCA突然変異、あるいはBRCA野生型/高いヘテロ接合性消失(LOH)をもつ相同組換えDNA修復欠陥(HRD)、3)ITTをさす。
盲検独立中央判定された無増悪生存期間は、重要な副次評価項目であり、BRCA野生型卵巣がん患者のヘテロ接合性消失の状態は、探索的評価項目とした。
rucaparibは、プラセボと比較しすべてのサブグループで、無増悪生存期間改善を示した
Rucaparibによる維持療法で、ITT解析、相同組換えDNA修復欠陥を有するがん患者、生殖細胞系・体細胞含むBRCA突然変異を有するがん患者において、無増悪生存期間を延長させた。
[グラフ中の語句、キャプション訳]
BRCA突然変異を有するがん患者(A) 、相同組換えDNA修復欠陥を有するがん患者(B)、ITT(C)における、rucaparibとプラセボでの、研究担当医師により評価された無増悪生存期間のカプラン・マイヤー推定値
訪問カットオフ値:2017年4月15日
CI=信頼区間
HR=ハザード比
HRD=相同組換えDNA修復欠陥
著作権=Jonathan Ledermann医師
ITT解析において、研究担当医師による無増悪生存期間中央値はrucaparibで10.8カ月、プラセボで5.4カ月と、rucaparibでより良い結果を示した([HR] 0.36 (p < 0.0001))。
独立中央解析では、rucaparibは無増悪生存期間をプラセボと比較し8.3カ月改善した([HR] 0.35(p < 0.0001))。
BRCA突然変異、あるいは野生型/高いヘテロ接合性消失を有するがん患者の両方を含んだ、相同組換えDNA修復欠陥を有するサブグループの解析では、研究担当医師の判定による無増悪生存期間の中央値は、rucaparibで13.6カ月、プラセボで5.4カ月であった([HR] 0.32 (p < 0.0001))。独立中央解析では、無増悪生存期間中央値は、rucaparibで22.9カ月、プラセボで5.5カ月であった([HR]0.34(p < 0.0001))。
BRCA突然変異サブグループにおいて、研究担当医師による判定による無増悪生存期間の中央値は、rucaparibで16.6カ月、プラセボで5.4カ月であった([HR]0.23 (p < 0.0001))。
研究担当医師の判定による無増悪生存期間の中央値の延長は、プラセボ5.4カ月に対し、rucaparibで26.8カ月と顕著であった([HR] 0.20 (p < 0.0001))。
BRCA野生型と低いヘテロ接合性消失を有するがん患者で、無増悪生存期間の差が最も少なくなった
BRCA野生型の卵巣がん患者でヘテロ接合性消失状態に関する探索的検討において、rucaparibによる恩恵が最も低かった。BRCA野生型/高いヘテロ接合性消失を有するがん患者では、研究担当医師の判定による無増悪生存期間の中央値は、rucaparibで9.7カ月、プラセボで5.4カ月であった([HR]0.44(p < 0.0001))。独立中央判定によると、無増悪生存期間中央値はrucaparibで11.1カ月に対し、プラセボで5.6カ月であった([HR]0.55(p =0.0.0135))。
BRCA野生型/低いヘテロ接合性消失を有するがん患者のサブグループでは、rucaparib 6.7カ月に対し、プラセボ5.4カ月と最も低い研究担当医師の判定による無増悪生存期間中央値を示した([HR]0.58 (p = 0.0049))。独立中央判定による無増悪生存期間の中央値は、rucaparibの8.2カ月に対し、プラセボでは5.3カ月であった([HR]0.47(p =0.0003))。
グレード3以上の有害事象では、rucaparib、プラセボともに、貧血(18.8%、0.5%)、AST/ALT上昇(10.5%、0%)が多くみられた。
病態進行を除き、治療薬により生じた有害事象がのために試験を中止にした割合は、rucaparibで13.4%に対し、プラセボで1.6%であった。また有害事象(病態進行含む)による死亡がrucaparib1.6%、プラセボ1.1%に確認された。
結論
著者は、プラチナ製剤感受性再発卵巣がん患者でのすべての主要解析グループにおいて、rucaparibはプラセボと比較し、有意に無増悪生存期間を改善したと結論づけた。
高いヘテロ接合性消失、あるいは低いヘテロ接合性消失を有するBRCA野生型卵巣がん患者においても、サブグループ解析で、無増悪生存期間の改善が少なからずみられた。
本研究結果について考察した、Sandro Pignata氏(イタリア、ナポリ国立がん研究所、Fondazione G Pascale)によれば、プラチナ製剤感受性患者にとってrucaparibは維持療法の代替になり得ると述べた。
BRCA野生型の患者においても、明らかな効果を確認できた。
ヘテロ接合性消失の状態により、薬剤への反応不良例を見極めることはできなかった。
利益相反
本試験は、Clovis Oncology社がスポンサーについている。
参照文献
LBA40_PR – Ledermann J, et al. ARIEL3: A Phase 3, Randomised, Double-Blind Study of Rucaparib vs Placebo Following Response to Platinum-Based Chemotherapy for Recurrent Ovarian Carcinoma (OC).
原文掲載日
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