再発卵巣がんのニラパリブ維持療法は患者の生活の質を維持する

以前の報告で、プラチナ製剤感受性再発卵巣がん患者において、ニラパリブによる維持療法はプラセボと比較し、無増悪生存期間(PFS)の有意な改善がみられた

プラチナ製剤感受性再発卵巣がん患者において、ニラパリブはプラセボと比較し、無増悪生存期間を延長し、維持療法期間中はQOLも維持できる、忍容性良好な維持療法薬であると、ESMO2017(スペイン・マドリッド)で研究者らは報告した。

ランダム化二重盲検第3相試験において、プラチナ製剤を中心とした化学療法後に完全、あるいは部分奏効となった患者に対し、維持療法としてニラパリブの投与を受けた患者において、プラセボと比較し有意に無増悪生存期間(PFS)を延長した。

生殖細胞系BRCA(gBRCA)変異の有無、あるいは相同組換えDNA修復欠損(HRD)の有無に関わらず、PFSの改善がみられた。ニラパリブ群はプラセボ群と比較し、PFS中央値を有意に延長させた。gBRCA変異陰性コホートでは、ニラパリブ群で無増悪生存期間9.3カ月に対し、プラセボ群で3.9カ月であった([HR] 0.45; 95% confidence interval [CI] 0.34, 0.61)。gBRCA変異陽性コホートでは、ニラパリブ群で無増悪生存期間21.0カ月に対し、プラセボ群で5.5カ月であった(HR 0.27; 95% CI 0.17, 0.41)。さらにgBRCA変異陰性コホートで、相同組換えDNA修復欠損を有するグループにおいても、ニラパリブ群12.9カ月に対し、プラセボ群は3.8カ月であった(HR 0.38; 95% CI 0.24, 0.59; p < 0.001 for all three comparisons)。

QOL改善において、ニラパリブとプラセボは同等であった

研究者らは、ENGOT-OV16/NOVA試験で、QOL評価尺度である、FOSIとEQ-5D-5L指標を用いて、ニラパリブとプラセボのQOLにおける効果を比較した。

FOSIの項目別データにより、ニラパリブ治療が、疼痛レベルや疲労を継時的に改善する傾向にあることが示された。

個別のFOSI指標により、ニラパリブ治療が、疲労や疼痛を継時的に改善する傾向にあることが示された。

© Amit M. Oza医師

ニラパリブ治療がいくつかの項目でQOLを改善することをFOSIデータで示した

さらに、研究者らは、各評価において、治療と患者報告アウトカム(PRO)との関連をみるため、ベースライン時の患者基本情報と3つの層別化因子を補正した、混合効果成長曲線モデルを構築した。補正されたEQ-5D 5L健康効用値(HUI)を用いた横断解析により、健康状態とPROとの関連が評価された。血液毒性の有害事象に対する、不効用解析が異なる時期になされた。

研究者らは、ニラパリブ群とプラセボ群との間で、PRO平均値に有意差は無いとした。

本モデルによれば、補正された健康効用値はベースライン時、両群で同等であった。一方で、進行前の平均健康効用値は、gBRCA変異陽性コホートにおいて、プラセボ群(0.803)と比較し、ニラパリブ群(0.812)の方が高く、gBRCA変異陰性コホートでも、プラセボ群(0.828)と比較し、ニラパリブ群(0.845)の方が高い傾向を示した。

なお血液毒性は、患者の全体の健康関連QOLに影響を及ぼさなかった。

結論

本研究の患者集団において、薬物治療の効果を評価するためには、QOL評価を行うことが重要であると著者らは述べた。QOLにも関連する、PROデータや、患者個々の自覚症状の報告から、プラチナ製剤を中心とした化学療法で完全あるいは部分奏効のみられた再発卵巣がん患者にとって、ニラパリブ維持療法はQOLを維持できることがわかった。

利益相反

TESARO Inc社より、資金提供あり

翻訳担当者 白神ルミ子

監修 原野謙一(乳腺・婦人科腫瘍内科/国立がん研究センター東病院)

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