ホルモン維持療法で再発卵巣/腹膜がんの生存率が改善

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らによる新たな研究によると、低悪性度漿液性がん(LGSC)として知られる卵巣上皮がん、または腹膜がんのまれなサブタイプを有する女性において、ホルモン維持療法は有意に生存率を改善すると考えられる。

本研究はJournal of Clinical Oncology誌に掲載され、2016年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で初めて発表された研究結果の最新情報である。

研究者らによると、低悪性度漿液性がんは卵巣/腹膜の漿液性がんのわずか10%を占めている。 一般に、40代および50代前半の女性で診断されるが、10代、および20代、30代女性でも診断されることがある。 通常、進行がんで見つかる。

MDアンダーソンは、このまれな卵巣がん領域で研究の歴史が長く、2004年に発表した研究では、漿液性がんの分類方法を変更し、それによって低悪性度漿液性がんを分類した。MDアンダーソンの研究によると、高悪性度漿液性がんに比べ、低悪性度漿液性がんは比較的、化学療法抵抗性であることも示されていると、婦人科腫瘍・生殖医療科(Gynecologic Oncology and Reproductive Medicine)の教授、David M. Gershenson医師は述べた。

この新たな後ろ向き研究のデータがランダム化試験で検証された場合、本結果が、今後、最新の標準的治療として明らかな改善を示す可能性がある。

「これらの患者に対しては、確かに治療開発の必要性があります。この疾患を有する女性の約70%が、ある時点でがんを再発すると考えられます」と、本研究の連絡先著者であるGershenson医師は述べた。「われわれのグループは、ホルモン療法が、がんを再発した場合に有望であり、ほとんどの患者が奏効するか、病勢安定を示すことを実証した研究を発表しました。女性患者が一次化学療法を受けた後の治療として、われわれがこの前向き研究を始めたのは自然な流れでした」。

この後ろ向きコホート研究では、1981年から2013年にMDアンダーソンで治療を受けたステージ2~4の低悪性度漿液性がんを有する女性203人のデータを分析してホルモン維持療法の効果を評価し、手術および化学療法後のサーベイランス(経過観察)と比較した。ホルモン維持療法を受けた女性(70人)の平均無増悪生存期間(PFS)は64.9カ月であったのに対し、サーベイランス群の患者(133人)では26.4カ月であった。全生存期間(OS)は、ホルモン維持療法後では115.7カ月であり、サーベイランス群では102.7カ月であった。

さらに、一次化学療法完了後に疾患の所見が認められなかった患者149人では、ホルモン維持療法は、サーベイランス群に比べ、PFSが81.1カ月対30カ月、OSが191.3カ月対106.8カ月と、生存率においても改善をもたらしたと考えられる。

「ホルモン療法は、がんの再発率の低下に関して有望な結果を示しており、このアプローチを一次治療に組み入れることへの関心が高まっています」と、Gershenson医師は述べた。「ホルモン維持療法が、このがんのサブタイプの再発を予防または遅延させる可能性が臨床試験において確認された場合、標準治療が変わるでしょう」。

この患者集団の募集は、希少な疾患であることから困難であるために、前向き第3相国際共同臨床試験が計画されているとGershenson医師は指摘した。この試験では、化学療法および観察、化学療法およびホルモン維持療法、ならびに他の試験においても早期に有望であることが示されているホルモン療法単独を比較する。

Gershenson医師を筆頭に、すべてのMDアンダーソンの研究著者は以下のとおりである。Diane Bodurka, M.D.、Robert L. Coleman, M.D.、Karen H. Lu, M.D., chair; and Charlotte Sun、all of the Department of Gynecologic Oncology and Reproductive Medicine、Anais Malpica, M.D., of Pathology.

本研究は、Sara Brown Musselman Fund for Serous Ovarian Cancer ResearchおよびMD Anderson Cancer Center Support Grant from the National Cancer Instituteから支援を受けた(No. P30 CA016672)。

翻訳担当者 霜出佳奈

監修 勝俣範之(腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院) 

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