卵巣がんスクリーング検査(検診)を推奨しない―FDA安全性通達
[2016年9月7日]
患者、産婦人科、腫瘍科向け
課題:FDAは、卵巣がん検診として市場に出回っている検査の受診に伴う危険性について、女性に警鐘を鳴らしている。とりわけ同局は、こうした検診を受診することにより、症状を認めないものの依然として卵巣がんの発現リスクが高い女性に対する有効な予防的治療の遅れにつながることを懸念している。
広範囲の研究や、すでに発表されている研究の実施にも関わらず、誤った結果を多く出さず卵巣がんを確実に発見できる、十分な精度の卵巣がんの検査は現在のところない。しかしながら、長年にわたり、多くの企業が卵巣がんの検診および検出が可能であると主張し、複数の検査を市場に導入してきた。
FDAは、女性および担当医がこうした主張に惑わされ、誤った検査結果を信用して治療選択を行う可能性があることを懸念している。同局は、入手可能な卵巣がんスクリーニング(検診)試験の臨床データ、ならびに学会および米国予防医学専門委員会(USPSTF)の推奨事項の再評価を行った。その結果、入手したデータでは、無症候性の初期卵巣がん患者に対するスクリーニングにおいて、現在実施されている卵巣がんスクリーニング検査の正確性や信頼性は示されなかった。例えば一部受診者が、がんがないにもかかわらず卵巣がんを示唆する検査結果(偽陽性)を受け取れば、追加の医学的検査や不要な外科手術が実施される可能性があり、またそれらに関連した合併症をきたす可能性が考えられる。逆に、がんがあるにもかかわらず検査結果で卵巣がんと示されず(偽陰性)、そのために卵巣がんの外科手術やその他の治療の実施が遅れる、またはそれらが希望されない可能性も考えられる。
有効性が証明されていない卵巣がん検診の受診は、卵巣がんの発現が高リスクの女性にとっても有害となりうる。例えば、このような卵巣がんが高リスクの女性とその担当医が、検査時点でがん陰性とする検査結果を信用した場合、将来のがん発現リスクを減少させる適切な処置が行われない可能性が考えられる。しかし、遺伝子変異を有することや家族歴から、こうした女性集団のその後の卵巣がん発現リスクは依然として高い状態にある。FDAは、卵巣がんの高リスク女性は、現在卵巣がんスクリーニング検査として提供されている検査を受診するべきではないとの見解を示している。
背景:卵巣内または近傍で異常細胞が増殖して悪性(がん性)腫瘍を形成し、卵巣がんが発生する。米国では、卵巣がんは女性のがん関連死の原因の第5位である。国立がん研究所(NCI)は、2016年中に22,000人以上の女性が卵巣がんと診断されると推定している。閉経期以降の女性、卵巣がんの家族歴を有する女性、ならびにBRCA1あるいはBRCA2遺伝子に変異を有する女性では、卵巣がんの発現リスクが最も高くなる。
推奨:現時点で入手可能な情報をもとに、FDAは現在卵巣がんの検診として提供されている検査に対し、以下のとおり勧告している。
女性(卵巣がんの高リスク女性を含む)に対して:
- 現在、安全で有効な卵巣がんの検診方法はないことに留意する。
- 健康評価または治療選択を行う際、卵巣がんスクリーニング検査の結果を信用してはならない。
- 特に卵巣がんの家族歴やBRCA1あるいはBRCA2遺伝子に変異を有する場合、担当医に卵巣がんの発症リスクを低下させる方法を相談する。
医師に対して:
- 一般集団の女性に対して卵巣がん検診とされている検査を推奨および利用しないこと。無症候性の卵巣がん高リスク患者に対する検診においては、有用性が証明されておらず、同検査がリスク減少を期待できる予防的処置とはならないことに留意する。
- 卵巣がんの高リスク女性(BRCA遺伝子変異者を含む)に関しては、より専門的な治療を提供するため、遺伝子カウンセラー、婦人科腫瘍医、もしくはその他適切な医療従事者への紹介を検討すること。
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