OncoLog2015年6月号◆In Brief「より早期に卵巣がんを検出する新検査法」

MDアンダーソン OncoLog 2015年6月号(Volume 60 / Number 6)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

In Brief「より早期に卵巣がんを検出する新検査法

腫瘍タンパク質TP53(p53としても知られる)に対する自己抗体のスクリーニングは、がん抗原125(CA125)検査よりも早期に卵巣がんを発見できる可能性があると、最近の試験で示唆された。

「進行期に至ってから卵巣がんが発見される患者は、全体の4分の3にものぼります。もっと早期に検出されれば、患者全体の13%から30%において、現在可能な手術と化学療法で治癒につなげることができるかもしれないのです」とテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター、実験治療学部門教授であり橋渡し研究部の副代表者であるRobert Bast Jr.医師は述べ、次のように続けた。

「卵巣がん標準リスクの女性が年に1度受けるCA125検査と超音波診断検査により早期に卵巣がんを発見できるか、というスクリーニングに対する評価が、米国MDアンダーソンおよび英国ロンドン大学ユニバーシティカレッジ・ロンドンの共同臨床試験において行われている。しかし、CA125が発現するのは卵巣がんの80%にすぎないため、他のバイオマーカーが必要である。

TP53遺伝子変異およびTP53過剰発現は、ほぼ全ての高悪性度漿液性卵巣がんで起こるため、卵巣がんの発育・増殖に伴いCA125値が上昇するよりも前に検出可能な卵巣がんバイオマーカーとして、TP53に対する免疫応答を利用できるのではと、Bast医師らは仮説を立てた。

彼らは、微量(2 μL)の血清からTP53特異的自己抗体の力価を測定する新規免疫アッセイを開発した。そこで、このアッセイを用いて、英国多施設共同卵巣がんスクリーニング研究から入手した保存血液サンプルを解析した。

その結果、後に卵巣がんと診断された女性から得た血液サンプルの約25%において抗-TP53自己抗体力価の上昇が検出された。そのうち、CA125値の上昇が認められた卵巣がん患者では、CA125値が上昇し始める平均13.5カ月前のサンプルで抗-TP53自己抗体力価が上昇しており、CA125値の上昇が認められなかった患者では、診断の平均33カ月前のサンプルで抗-TP53自己抗体力価の上昇が検出された。

Bast医師ら研究者たちは、抗-TP53自己抗体スクリーニングとCA125スクリーニングとの併用が卵巣がんの早期発見に役立つ可能性があるという結論に至った。「これまで試した100を超えるバイオマーカーのうち、卵巣がん患者においてCA125より先に上昇を検出できたのは抗-TP53自己抗体が初めてです」とBast医師は述べる。

Bast医師らは2015年4月、米国がん学会(AACR)年次総会にて以上の知見を発表した。

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

翻訳担当者 八木佐和子

監修 喜多川 亮(産婦人科/NTT東日本関東病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

卵巣がんに関連する記事

【ASCO2024年次総会】進行卵巣がんにリンパ節郭清が不要である可能性の画像

【ASCO2024年次総会】進行卵巣がんにリンパ節郭清が不要である可能性

ASCOの見解(引用)「このランダム化第3相臨床試験は、進行卵巣がんの手術を受ける患者が、原発巣からの転移がないと思われるリンパ節の追加切除を安全に回避できる可能性を示していま...
デリケートゾーン用タルクの使用は卵巣がんリスク上昇と関連の画像

デリケートゾーン用タルクの使用は卵巣がんリスク上昇と関連

ASCOの見解「本研究は、インティメイトケア製品、特にデリケートゾーン用タルクに関連する潜在的リスクを強調している。このような製品が、特に頻繁に使用する人や20代や30代で使用...
【ASCO2024年次総会】ホルモン補充療法、エストロゲン単剤でがんリスク増加、エストロゲン+プロゲスチン併用でリスク低下の画像

【ASCO2024年次総会】ホルモン補充療法、エストロゲン単剤でがんリスク増加、エストロゲン+プロゲスチン併用でリスク低下

ASCOの見解(引用)「Women's Health Initiative研究の長期追跡調査から、閉経後の女性が結合型エストロゲン(CEE)を単独で服用した場合、プラセボを服用...
一部の進行卵巣がんにミルベツキシマブ ソラブタンシン承認、治療選択肢が拡大の画像

一部の進行卵巣がんにミルベツキシマブ ソラブタンシン承認、治療選択肢が拡大

進行卵巣がんの場合、当初はプラチナ製剤ベースの化学療法薬でうまく治療できるが、がんが再発することが多い。プラチナ製剤抵抗性の卵巣がんは治療が困難であることが証明されているが、最近、米国...