OncoLog 2014年9月号◆In Brief「大規模な分子生物学的データ解析により得られる多様な成果」

MDアンダーソン OncoLog 2014年9月号(Volume 59 / Number 9)

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大規模な分子生物学的データ解析により得られる多様な成果

複数の癌種を含めた大規模患者集団からさまざまな分子生物学的データを得て臨床像と組み合わせると、患者の全生存期間の予測に役立てられることが最新の研究によりわかった。この研究ではまた、複数の癌種の大規模な分析により、単独の癌種の解析では見過ごされてしまう可能性が高い重要な遺伝子変異を検出できることが示された。

多施設共同試験において、4種の癌(淡明細胞型腎細胞癌、膠芽腫、卵巣浸潤腺癌、および肺の扁平上皮癌)の953検体から得られた数種の分子細胞学的データ(体細胞コピー数変異、DNAメチル化、ならびにmRNA、miRNAおよびタンパク質発現)が分析された。同一の患者群における患者の年齢と癌の病期などの臨床像も合わせて検討された。分子生物学的データおよび臨床データは、癌ゲノムアトラスから提供された。

テキサス大学MDアンダーソンがんセンター、バイオインフォマティクス・計算機生物学部門の助教であるHan Liang博士のチームが開発した統計モデルにより、検討した4種の癌のうち3種(腎、卵巣および肺)において、分子生物学的データと臨床要因の組合せで臨床要因のみと比較してより正確に全生存が予測できることが示された。

「単独の癌種あるいはデータ種が用いられていた先の研究とは対照的に、われわれは複数の分子生物学的データから患者の生存予測を評価し、予測される予後や治療方法の妥当性を複数の癌種にわたって述べることができました」Liang博士は述べる。

12種類の癌の追加分析により、臨床的に関連性のある遺伝子に10,281種の体細胞変異が特定された。単一の癌種の分析では、変異はこれほどまでの頻度では解明されず、追加調査を行うことを正当化できなかったであろうとLiang博士は述べる。

「複数の癌種から得られたデータを分析することで、われわれは予後モデルを体系的に評価し、腫瘍形性につながる遺伝子変異を徹底的に特定することができました」Liang博士は述べる。「1種の癌から得られたデータだけを見ていたのでは、この成果を得ることはできなかったでしょう」。

大規模な分子生物学的な特性のデータを臨床的な変動データとともに使用して、癌患者をリスク群に層別化し、調査の指針として治療方針策定に役立てることができるかどうかを判断するために必要な検体数は、今後、独立した患者コホートによる研究が必要である、とLiang博士はつけたした。

本研究の報告は、Nature Biotechnology誌電子版6月号に掲載された。

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翻訳担当者 石岡優子

監修 石井一夫(ゲノム科学/東京農工大学)

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