卵巣癌予防手術の転帰を検討する

米国国立がん研究所(NCI)ニュースノート

原文掲載日 :2014年9月8日

卵巣癌の症状を有しておらず、リスク低減両側付属器(卵巣卵管)切除術(risk-reducing salpingo-oophorectomy:RRSO)を受けた、卵巣癌の高リスク女性を対象として、新たな試験を実施した。本試験の結果、参加者の2.6%(966人中25人)で切除組織内に癌が検出された。RRSOとは、卵巣および卵管を予防的に切除する手技である。本試験の参加者は、BRCA1またはBRCA2遺伝子に有害な変異を有することが確認されている女性、および家族歴から卵巣癌の高リスクと考えられる女性であった。切除組織内の癌検出率は、BRCA1遺伝子変異を有する女性で4.6%、BRCA2遺伝子変異を有する女性では3.5%、BRCA1およびBRCA2遺伝子変異を有さないが卵巣癌の家族歴を有する女性では0.5%であった。また、なかには卵管から発生した癌があったことが明らかとなり、この結果は、卵巣癌に分類される悪性腫瘍の多くは実際には卵管から発生した腫瘍であるとの新たなエビデンスを裏付ける。この知見は、卵巣癌のリスク低減手術の一環として卵管も切除する重要性を強調する。これらの発癌リスクを推定することで、RRSOを考慮している高リスク女性に最も有用な情報を提供できる。

 本試験は、NCIの癌疫学・遺伝学部門(DCEG)の臨床遺伝学科の上席研究者であるMark H. Greene医師、ならびにDCEGおよび癌予防部門の研究者の主導で実施され、Journal of Clinical Oncology誌(2014年9月8日号)に発表された。本試験の参加者は、30歳以上で、卵巣癌の症状を有さない、高リスク女性であった。RRSO実施前に、参加女性は危険因子に関する情報を提供し、卵巣癌をスクリーニングするための血液検査(CA-125抗原)および経腟超音波検査を受けた(これらのスクリーニング検査は、現在、高リスク女性に対する標準検査法であるが、一般集団に対する標準検査法ではない)。本試験の結果、BRCA1またはBRCA2遺伝子変異を有する女性、閉経後の女性、術前の血中CA-125値が高値の女性、あるいは経腟超音波検査で異常所見が認められた女性では、癌が検出される可能性が上昇することが明らかとなった。一方、高リスク女性のうち、BRCA1およびBRCA2遺伝子変異を有しておらず、術前の血中CA-125値が正常値で、かつ経腟超音波検査で異常所見が認められなかった女性では、癌は検出されなかった。RRSOにより癌が検出された女性の半数以上は早期癌(0、IまたはII期)であったのに対し、一般集団では早期段階で診断される卵巣癌患者は約15%のみである。BRCA1またはBRCA2遺伝子変異を有する女性において、RRSOは発癌リスクを低下させ、生存率を改善させるが、不妊と早発閉経ももたらす。そして、この不妊と早発閉経は、RRSO選択の意思決定を困難なものとする。本試験で得られた新たな知見は、高リスク女性が最善の治療計画を選択する一助になり得る。

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  訳
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原文 

翻訳担当者 永瀬祐子

監修 喜多川亮(産婦人科/NTT東日本関東病院)

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