セディラニブが再発卵巣癌患者の生存期間を延長

キャンサーコンサルタンツ

再発卵巣癌の女性患者が試験薬セディラニブと化学療法の併用治療を受け、また化学療法後に維持療法としてセディラニブの投与を受けた場合に生存期間が有意に延長することがアムステルダムで開催された2013年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表された。

卵巣癌はすべての婦人科癌のうちで最も死亡率が高く、米国女性における癌死亡の5位が卵巣癌であり、2012年にはおよそ22,000人の女性が新たに卵巣癌と診断され、15,000人が死亡すると推定される。卵巣癌治療には通常、外科手術や化学療法が実施される。進行卵巣癌と診断された女性患者の転帰は未だに不良であり、研究者らは新たな治療法の研究評価を継続している。

標的治療薬は癌細胞の増殖や生存に関係している特定の経路を阻害する抗癌剤である。セディラニブ(AZD2171)は、血管内皮増殖因子(VEGF)として知られるタンパク質を阻害する標的治療薬である。VEGFは血管新生に重要な役割を担っている。セディラニブは3種類すべてのVEGFチロシンキナーゼ(VEGF-1, 2, 3)に対する強力な経口阻害薬であり、VEGFのシグナル伝達、血管新生および腫瘍細胞の増殖を阻害する。

ICON6試験はランダム化国際共同比較試験であり、456人のプラチナ製剤感受性の再発卵巣癌患者を対象としている。この試験は、初めての経口VEGF阻害薬とプラチナ製剤の化学療法の併用治療を再発卵巣癌に施行し、維持療法としてVEGF阻害薬投与を受ける場合の効果を検討する試験であった。患者は以下の3つの治療群のいずれかにランダムに割り付けられた。

・プラチナ製剤ベースの化学療法+プラセボの併用後、維持療法としてプラセボを投与する群
・プラチナ製剤ベースの化学療法+セディラニブの併用後、維持療法としてプラセボを投与する群
・プラチナ製剤ベースの化学療法+セディラニブの併用後、維持療法としてセディラニブを投与する群

患者は、18カ月間または疾患進行がみられるまでのいずれか早い時期まで治療を受けた。試験結果は画期的であった。セディラニブとプラチナ製剤ベースの化学療法の併用によって無増悪生存期間が30%延長した。維持療法としてセディラニブが継続投与された場合には、無増悪生存期間および全生存期間ともに有意に延長した。セディラニブと化学療法の併用治療を受け、維持療法としてセディラニブの投与を受けた患者においては、無増悪生存期間中央値が11.1カ月であったのに対し、化学療法の単独治療のみを受けた患者では8.7カ月であった。さらに維持療法としてセディラニブの投与を受けた患者では全生存期間中央値が26.3カ月であったのに対し、維持療法を受けず化学療法の単独治療のみを受けた患者では20.3カ月であった。

セディラニブ投与に伴う有害事象のうち多かったものは高血圧、疲労、下痢および悪心であった。ほとんどの場合、投与量の減量または投与の中断により管理可能であった。

有望な結果が得られたが、卵巣癌治療におけるセディラニブの将来性は現在のところ不明である。これは、セディラニブが承認取得に必要となる評価項目を満たしておらず製造業者であるアストラゼネカ社が開発を中断しているためである。

しかしながら、再発卵巣癌患者においてセディラニブとプラチナ製剤ベースの化学療法の併用によって無増悪生存期間が延長し、維持療法としてセディラニブが継続投与された場合には無増悪生存期間および全生存期間がともに有意に延長することが結論づけられた。

参考文献:
Ledermann JA, Perren JG, Raja FA, et al. Randomised double-blind phase III trial of cediranib (AZD 2171) in relapsed platinum sensitive ovarian cancer: Results of the ICON6 trial. Presented at the 38th Congress of the European Society for Medical Oncology (ESMO), Amsterdam, Netherlands, September 27-October 1, 2013. Abstract LBA10.


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翻訳担当者 寺本瑞樹

監修 辻村信一 (獣医学/農学博士、メディカルライター/株式会社メディア総合研究所)

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