新たな2段階免疫療法は再発性卵巣癌患者に有望

• 卵巣癌では、新規の別種治療法に関するニーズが満たされていない
•患者に自分自身の血液細胞と癌から作られた個別化ワクチンを接種した。

第104回米国癌学会(4月6~10日ワシントンD.C.にて開催)で発表された2件の第I相臨床試験のデータによると、新規の2段階に渡る免疫療法により、進行卵巣癌患者に対し奏効が得られ、その中の1人は完全奏効を示した。

「この免疫療法の治療戦略は2段階に渡ります。1つは樹状細胞ワクチン療法で、もう1つは養子T細胞治療です。この様な併用免疫療法のアプローチが卵巣癌患者の治療に使用されるのは今回が初めてです」とLana Kandalaft氏(ペンシルベニア大学(フィラデルフィア市)ペレルマン ペンシルベニア大学医学大学院、臨床薬学博士、トランスレーショナル・リサーチ学修士、博士、准教授、卵巣がん研究センター臨床開発・臨床試験実施責任者)は述べた。「卵巣癌患者の多くは進行癌の状態で診断されます。また、その多くは2年以内に再発し、ほとんどは5年以内に死亡します。このように転帰が悪いため、新規の別種治療法開発に関しては非常に大きな期待があります」。

Kandalaft氏によると、この免疫療法のアプローチの第1段階は、手術時の患者の卵巣癌の保存である。その目的は、その卵巣癌を利用して、患者自身の免疫系に卵巣癌を攻撃するよう認識させる個別化ワクチンを製造できるようにするためである。

Kandalaft氏らは、このプロトコルに基づいて、病期3、4の再発進行卵巣癌患者31人の血液から、樹状細胞という免疫細胞を単離した。次に、手術時に採取した各患者の卵巣癌組織に、各患者の樹状細胞を曝露させることで、個別化ワクチンを調製した。最初の6人は1件目の臨床試験の個別化ワクチン接種患者に割り付けた。その一方で、他の25人を卵巣がん研究センターで開発された最適化済プラットフォームにより改良された個別化ワクチン接種患者に割り付けた。

これらの患者のうち、19人は個別化ワクチン接種後に奏効と抗腫瘍免疫反応が得られた。この19人中8人には、本臨床試験終了時に測定可能病変が認められず、その後、維持ワクチン療法を受け続けた。この8人中1人は、個別化ワクチン接種後42カ月間、再発を認めなかった。

第1段階の樹状細胞ワクチン療法に反応したが、残存病変がまだ認められた11人は、第2段階である養子T細胞治療に移行した。Kandalaft氏らはこの時点で、患者の血液からT細胞という免疫細胞を採取し、研究室内でT細胞を活性化し増殖させた。次に、そのT細胞を患者に再導入した。このT細胞はすでに卵巣癌細胞を攻撃する樹状細胞ワクチンにより曝露されているため、養子T細胞移植により抗腫瘍免疫反応が強化されていたことをKandalaft氏らは発見した。11人中7人は病状安定を示し、1人は完全奏効を示した。

樹状細胞ワクチン療法のみでは奏効率は約61%だったが、樹状細胞ワクチン療法と養子T細胞治療を併用することで約75%に増加したとKandalaft氏は述べた。「私たちは、卵巣癌患者に副作用が軽微で、良好な生活の質を維持することができる治療法を提供します」とKandalaft氏は述べた。Kandalaft氏らはワクチンプラットフォームを改良し、その効果をさらに高めるよう尽力し続けている。
樹状細胞ワクチン療法と養子T細胞治療のいずれも、ベバシズマブ(血管新生阻害剤)と併用して実施される。ベバシズマブ+併用免疫療法は強力な組み合わせになるとKandalaft氏は述べる。2段階に渡る免疫療法の臨床試験は現在も患者登録を受け付けており、新規併用療法試験を実施している。

翻訳担当者 渡邊岳

監修 田中謙太郎(呼吸器・腫瘍内科、免疫/テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)

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