大規模病院で治療を行うことで卵巣癌患者の死亡率が減少する

キャンサーコンサルタンツ

大規模病院で手術を受けた卵巣癌患者の転帰は、小規模病院で治療を受けた患者よりも良い、という研究結果がJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。研究では、合併症の発生率が低いことによるものではなく、合併症への対応が良いことによるものだと述べている。

米国では、毎年22,000人前後の女性が卵巣癌と診断され、15,000人以上が死亡している。一般的に、卵巣癌の治療には手術や化学療法(症例により併用)を行う。だが、卵巣癌は進行してはじめて診断されることが多いため、転帰が改善しにくいのが現状である。

研究班は米国入院患者サンプルデータベース(Nationwide Inpatient Sample)のデータから、1988〜2009年に卵巣摘出術(片側性ないし両側性)を受けた女性を特定した。全体として、1,166カ所の病院で合計36,624人の女性(18〜90歳)が治療を受けており、施術回数にもとづき病院のランク付けを行った。研究班は、合併症発生率と「救命失敗」率(重大合併症が発生し、その後死亡したことを指す)を評価した。

死亡率は全体で1.6%であった。研究班は、統計的に有意な傾向をいくつか特定した。実のところ、重大合併症の発生率は大規模病院で高くなっており、小規模病院で20.4%、中規模病院で23.4%、大規模病院で24.6%であった。だが救命失敗率は小規模病院で8.0%であり、大規模病院の4.9%と比較して著しく高かった。患者や病院の特徴を補正した後の結果をみると、小規模病院で治療を受け合併症が発生した女性は、大規模病院で治療を受け合併症が発生した女性よりも死亡リスクが48%高いことが分かった。

研究班は、大規模病院で治療を受けた卵巣癌患者の死亡率は中小規模病院よりも低い、と結論づけている。こうした死亡率の減少は、合併症の発生した患者に対する大規模病院の対応能力によるもの思われる。研究結果から、合併症予防と医療の質に関するガイドラインの遵守、そして最高の医療が重要であることがうかがえる。

参考文献:
Wright JD, Herzog TJ, Siddiq Z, et al. Failure to Rescue As a Source of Variation in Hospital Mortality for Ovarian Cancer. Journal of Clinical Oncology. 2012; 30(32): 3976-3982.


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翻訳担当者 渋谷武道

監修 北村裕太 (内科研修医 東京医科歯科大学医学部付属病院)

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