癌細胞の薬剤感受性を高める遺伝子を同定
NCIニュースノート
NCIの研究者らにより、遺伝子Schlafen-11(SLFN11)が、細胞において、回復不能な損傷をDNAに与えるとして知られる薬剤に対する感受性を高めることが判った。研究の一環として、研究者らは、DNA傷害性薬剤に対する癌細胞の反応予測因子を同定するため、60種類の細胞データを用いた。DNA傷害性薬剤は、化学療法として多種の癌に対し広く使用されている。NCIの臨床試験で、DNA傷害性薬剤 による治療を受けた卵巣癌患者群の全生存を、SLFN11が高発現することにより単独で予測できることが判明した。同様の結果が、大腸癌に対する化学療法の反応にもみられた。NCI癌研究センターのYves Pommier医学博士により導かれた以上の結果は、2012年8月27日付け全米科学アカデミー会報誌に掲載された。
具体的には、研究者らはDNA傷害性薬剤の毒性を予測する候補遺伝子を特定するのに、NCI-60(新たな抗癌剤を選別し、その特徴を明らかにするのに用いられる60種の細胞株パネル)から得た17,000を超える遺伝子発現と、4種のトポイソメラーゼI(Top1)阻害剤の効果とを関連づけた。その結果、SLFN11は検証したいずれのTop1阻害剤にもきわめて高い正の相関関係を示す単一遺伝子であると同定された。研究者らは、Top1阻害剤に対するこの重要な遺伝子を発見すると、NCI-60において広く試験が行われている1,444種の薬剤にまで分析範囲を拡げた。その薬剤の多くは作用機序が既に知られており、臨床診療で日常的に用いられている。SLFN11発現は、Top1阻害剤との間のみならず、シスプラチン、ドキソルビシン、エトポシドなど他のDNA傷害性薬剤との間にもきわめて高い正の相関性が一定して認められた。臨床所見を二次的に検査するため、SLFN11発現が抑えられていることがわかっているさまざまなタイプの腫瘍組織から得た癌細胞を調べたところ、多くの DNA傷害性薬剤に反応し、細胞死または細胞周期停止が起きた。以上の試験結果は、SLFN11が研究対象として興味深い遺伝子であることをさらに裏づけるものである。
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