アバスチンと抗癌剤治療の併用がプラチナ系抗癌剤抵抗性(プラチナ抵抗性)卵巣癌患者の無増悪生存期間を改善

キャンサーコンサルタンツ

イリノイ州シカゴで開催された2012年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された研究結果によると、標準的な抗癌剤治療にアバスチン(ベバシズマブ)を併用することでプラチナ抵抗性卵巣癌患者の無増悪生存期間が2倍延長するという。

毎年米国ではおよそ22,000人の女性が卵巣癌と診断され、15,000人以上が死亡している。卵巣癌治療は主に外科手術または化学療法、あるいはその両方で行われる。プラチナ系抗癌剤を用いた治療期間中または終了後6カ月以内に癌が増悪した患者は、プラチナ抵抗性卵巣癌と診断される。研究者らはプラチナ抵抗性患者への新たな治療法を模索し続けている。

アバスチンはVEGFとして知られるタンパク質を阻害する分子標的薬である。VEGFは血管新生において重要な役割を果たす。アバスチンがVEGFの働きを阻害した結果、血管を介して癌に送り届けられる栄養素と酸素を不足させ癌の増殖を妨げる。現在アバスチンは肺癌、大腸癌、腎臓癌、膠芽腫のうち一部の患者に使用されている。しかし過去の研究では、卵巣癌の初回治療および二次治療においてもアバスチンが有効であることが示されてきた。

今回の研究は、アバスチンと抗癌剤の併用を抗癌剤単独療法と比較した国際的な多施設共同ランダム化試験である。上皮性卵巣癌・卵管癌・腹膜原発癌患者のうち、プラチナ系抗癌剤の最終投与から6カ月以内に癌が増悪した患者361人が対象となった。すべての患者は、過去に投与された薬剤にも応じて、プラチナ抵抗性卵巣癌に主に使用される標準的な3種類の抗癌剤(パクリタキセル、トポテカン、ペグ化リポソーマルドキソルビシン)のうちどれか1種類の投与を受けた。

13.5カ月(中央値)の追跡期間後、抗癌剤単独群の91%、アバスチンと抗癌剤併用群の75%が増悪した。無増悪生存期間の中央値はアバスチンと抗癌剤併用群で6.7カ月、抗癌剤単独群は3.4カ月であった。

アバスチン併用群は高血圧、胃腸穿孔、瘻孔(ろうこう)・膿瘍(のうよう)形成などの有害事象の発現率が高かった。グレード3以上の有害事象の発現率は両群間で差はなかった。

研究者らはアバスチンと抗癌剤の併用が抗癌剤単独よりプラチナ抵抗性卵巣癌患者の無増悪生存期間において統計学的有意かつ臨床的に重要な改善をもたらすと結論づけた。単剤治療より併用療法がプラチナ抵抗性卵巣癌の無増悪生存期間を有意に改善することを示したのは本研究が初めてである。

参考文献:

Pujade-Lauraine E, Hilpert F, Weber B, et al. AURELIA: A randomized phase III trial evaluating bevacizumab (BEV) plus chemotherapy (CT) for platinum (PT)-

resistant recurrent ovarian cancer (OC). Presented at the 2012 annual meeting of the American Society of Clinical Oncology, June 1-5, 2012, Chicago, IL. Abstract LBA5002.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 芝原広子

監修 喜多川 亮(産婦人科/NTT東日本関東病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

卵巣がんに関連する記事

欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライトの画像

欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライト

ESMOアジア会議2024は、アジア地域における集学的腫瘍学に特化した年次イベントである。新しい治療法、特定のがん種の管理に関する詳細な議論、アジア全域を対象とした臨床試験、アジア地域...
一般的な卵巣がんに対する特殊なナチュラルキラー細胞の有効性が非臨床で示されるの画像

一般的な卵巣がんに対する特殊なナチュラルキラー細胞の有効性が非臨床で示される

研究タイトルメソセリンの膜近位領域を標的とするCARメモリー様NK細胞が卵巣がんに有望な活性を示す掲載誌Science Advances誌著者(ダナファ...
一部の早期婦人科がんにペムブロリズマブ+化学放射線や抗Claudin6抗体薬物複合体が有益の画像

一部の早期婦人科がんにペムブロリズマブ+化学放射線や抗Claudin6抗体薬物複合体が有益

ESMO 2024で報告された研究により、現在の標準治療に免疫療法を追加することで臨床的に意味のある利益が得られる早期の子宮体がん(子宮内膜がん)(1)および子宮頸がん(2)の新たな患...
【ASCO2024年次総会】進行卵巣がんにリンパ節郭清が不要である可能性の画像

【ASCO2024年次総会】進行卵巣がんにリンパ節郭清が不要である可能性

ASCOの見解(引用)「このランダム化第3相臨床試験は、進行卵巣がんの手術を受ける患者が、原発巣からの転移がないと思われるリンパ節の追加切除を安全に回避できる可能性を示していま...