BRCA遺伝子変異を有する進行性卵巣癌の女性に対してオラパリブが有効
キャンサーコンサルタンツ
臨床試験研究中の分子標的治療薬であるオラパリブ(olaparib)は、BRCA遺伝子変異を有するプラチナ製剤感受性進行性卵巣癌の女性において61.5%の奏効率を示した。これらの結果は、Journal of Clinical Oncology誌にて最近発表された。[1]
卵巣癌患者の大多数はプラチナ製剤ベースの化学療法に対して初めは奏効するが、その多くは最終的に再発する。プラチナ製剤ベースの化学療法による治療後に再発するという場合、以下の3パターンに分類される。プラチナ製剤に感受性のある患者(最終投与から6カ月以上経過後の再発または進行)、プラチナ製剤に耐性を示す患者(最終投与から6カ月未満の再発または進行)、あるいはプラチナ製剤に不応性を示す患者(投与中の再発または進行)。再発卵巣癌における治療の予後は現在のところ不良であり、研究者らは新しい治療を研究し続けている。
分子標的療法は、癌細胞の増殖あるいは存在を特異的に阻害する抗癌剤治療である。分子標的薬の中には、癌細胞に送られる増殖因子を阻害するもの、あるいは癌細胞への血流を阻害するもの、さらに免疫系を刺激して癌細胞を識別し攻撃させるものがある。標的とする因子によって、分子標的療法は癌細胞増殖を遅らせたり癌細胞の死滅を増長させたりする。
オラパリブ(olaparib)は臨床試験中の経口のPARP阻害剤である。PARPは化学療法により損傷を受けたDNAの修復などのDNA修復に関与する酵素である。この酵素を阻害することで、癌細胞死や化学療法感受性を増加させる可能性がある。
BRCA1あるいはBRCA2遺伝子変異に起因する癌は、特にPARP阻害剤に反応を示しやすい可能性がある。BRCA遺伝子は、それ自体もDNAを修復する機序をもつ。BRCA遺伝子変異はこのDNA修復能力を欠き、さらにPARP機序のDNA修復機構の欠損を特に受けやすい細胞を作る可能性がある。
現在進行中の研究において、BRCA遺伝子変異を有する進行性卵巣癌患者50人に対し、オラパリブの連日投与を行った。オラパリブは良好な忍容性を示し、最も多い副作用は疲労および軽度の消化管症状であった。プラチナ製剤による無治療期間は(プラチナ製剤ベースの化学療法の最終投与日から再発までの時間)オラパリブの有効性と関連があるようだ。下記の奏効率は、目視可能な癌の縮小またはCA-125数値の低下、あるいはその両方に基づいている。
• プラチナ製剤感受性卵巣癌患者における奏効率は61.5%
• プラチナ製剤耐性卵巣癌患者における奏効率は41.7%
• プラチナ製剤不応性卵巣癌患者における奏効率は15.4%
BRCA遺伝子変異を有する進行性卵巣癌において、オラパリブは有望な安全性および有効性を示したと研究者らは結論を下した。また、プラチナ製剤耐性はPARP阻害剤に対する感受性を低下させるとも結論付けた。しかし、これらの結果はさらなる大規模研究により裏付けされる必要がある。
参考文献:
[1] Fong PC, Yap TA, Boss DS, et al. Poly (ADP)-Ribose Polymerase Inhibition: Frequent Durable Responses in BRCA Carrier Ovarian Cancer correlating With Platinum-Free Interval. Journal of Clinical Oncology [early online publication]. April 20, 2010.
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