【ASCO2024年次総会】HPVワクチンは子宮頸がん以外のがんリスクも低減

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

ASCOの見解(引用)

「HPVワクチンが経口HPV感染率を低下させることは知られていましたが、本研究は、特に男児や男性において、ワクチン接種がHPV関連の中咽頭頭頸部がんのリスクを低下させることを示しています。HPVワクチン接種はがん予防なのです」 - Glenn J. Hanna医師、ダナファーバーがん研究所頭頸部腫瘍学センター、がん治療イノベーションセンター長。

研究要旨

目的ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種患者のがんリスク
対象者米国の9~39歳の患者3,413,077人(1,706,539人[男性760,540人、女性945,999人]は2010年から2023年までにHPVワクチン接種を受けた)。
主な結果HPVワクチン接種は、男性の頭頸部がんや女性の子宮頸がんなど、女性や男性のHPV関連がんの罹患率低下と関連している。さらに、HPVワクチン接種者は、がん治療のために特定の外科手術を受ける可能性が低い。
意義これまでの研究では、HPVワクチンは子宮頸がんのリスクを減らすのに有効であることが示されているが、2006年に初のHPVワクチンが導入されて以来、他のHPV関連がんを発症する可能性を低下させることに関連する証拠は限られている。

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、HPVによって引き起こされる数種類のがん、特に男性の頭頸部がんの発症予防に有効であることが、新たな研究結果から示唆された。この研究結果は、5月31日から6月4日までイリノイ州シカゴで開催される2024年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される。

研究について

「本研究は、HPVワクチン接種を受けた人々の間でHPV関連がんの発生率が減少したことを示す証拠が増加したことを示している。CDC(疾病管理予防センター)の報告によると、2022年に15~17歳の男児のHPVワクチン接種率は60%未満であり、大部分がHPV感染に脆弱であり、ひいてはHPV関連がんの発症に対して脆弱であることを示唆している。HPVワクチン接種率を向上させる効果的な介入策を特定することは、米国における過度のがん負担を軽減する上で極めて重要です」と、トーマス・ジェファーソン大学の研究員で筆頭著者であるJefferson DeKloe氏は述べた。

HPVワクチン接種に関するこれまでの研究は、主に子宮頸がんに関する結果に焦点を当てたものであった。世界保健機関(WHO)によると、子宮頸がんは世界で4番目に多いがんであり、毎年約66万人が新たにがんと診断され、約35万人が死亡している。本研究では、HPVワクチン接種者が頭頸部、肛門、陰茎、外陰部、膣および子宮頸部のがんを発症するリスクを検討する。この研究は、HPVワクチン接種が、がんおよび前がん病変の外科的治療の必要性に及ぼす影響を調べることも目的としている。

この研究には、HPVワクチン接種を受けた患者1,706,539人と、年齢をマッチさせた対照患者1,706,538人(HPVワクチン接種歴なし)が含まれている。56%が女性、53%が白人、21%が黒人/アフリカ系アメリカ人、5%がアジア人、0.4%がアメリカインディアンまたはアラスカン先住民、0.4%がハワイ先住民またはその他の太平洋諸島民、21%がその他の人種または人種不明であった。

主な知見

HPVワクチン接種を受けた男性は、ワクチン未接種男性と比較して、すべてのHPV関連がんの発症リスクが低く(ワクチン接種患者10万人当たり3.4例対未接種患者10万人当たり7.5例)、頭頸部がんの発症リスクも低かった(ワクチン接種患者10万人当たり2.8例に対し未接種患者10万人当たり6.3例) 。
HPVワクチン接種を受けた女性は、ワクチン未接種女性と比較して、子宮頸がんの発症リスクが低く(ワクチン接種患者10万人当たり7.4例に対し未接種患者10万人当たり10.4例)、HPVに関連するすべてのがんの発症リスクも低かった(ワクチン接種患者10万人当たり11.5例に対し未接種患者10万人当たり15.8例)。しかし、頭頸部がんや外陰部がん、膣がんを発症する確率は、ワクチン接種女性とワクチン未接種女性で有意差はなかった。パップテストで異常所見の診断を受けたことのないワクチン接種女性では、子宮頸部の前がん病変の異形成を発症する可能性が低く、前がん病変の治療や予防のために侵襲的な処置を受ける可能性も低かった。

次のステップ

次のステップとしては、HPVワクチンが20年近く利用可能になった現在、39歳以上のHPVワクチン接種者の転帰を検討することである。研究者らは、ワクチン接種時の年齢、ワクチン接種からがん発症までの期間に基づく転帰を調べたり、どの集団がHPVワクチン接種を受けにくいかを明らかにしたと考えている。

本研究は外部からの資金提供を受けていない。

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  • 監訳 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
  • 翻訳担当者 青山真佐枝
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  • 原文掲載日 2024/05/23

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