英国で、進行した子宮体がんに新薬ドスタルリマブの選択が可能に
Dostarlimab[ドスタルリマブ](販売名:Jemperli[ジェンペルリ])が、一部の進行または再発した子宮体がん(子宮内膜がん)の治療薬としてNICE(英国国立医療技術評価機構)により推奨されることとなった。
本薬剤は、化学療法と併用して投与されるが、ミスマッチ修復機構欠損、または高頻度マイクロサテライト不安定性が確認された患者に推奨される。
つまり、DNAの間違いを修復することを阻止する変異のあるがん、またはマイクロサテライトと呼ばれるDNAの長い反復配列にいくつかの変異のあるがんが治療の対象となる。
NICEは、この結論がこれらのタイプのがん患者約500人に影響を与えるだろうと推定している。
ドスタルリマブとは?
ドスタルリマブは、モノクローナル抗体と呼ばれる免疫療法薬の一種で、免疫系を刺激してがん細胞を破壊する。
ドスタルリマブは、がん細胞表面上のPD-1と呼ばれるタンパク質に結合することにより作用する。この作用は免疫系ががんを認識し攻撃することを促進する。
ドスタルリマブは1回に約30分間、静脈内に投与される。
子宮がんの主な治療法は手術である。その後に放射線療法や化学療法が行われる場合がある。ドスタルリマブは、がんがステージ3または4であるか、初回治療後に再発した患者に投与される。
ドスタルリマブの効果は?
NICE委員会の推奨はRUBYー1試験のエビデンスに基づいている。この試験では、ドスタルリマブ+化学療法薬のカルボプラチン(販売名:カルボプラチン、パラプラチン)およびパクリタキセル(販売名:タキソール、パクリタキセル)を併用した治療法と、プラセボ+同化学療法薬を併用した治療法とを比較した。
その結果、プラセボを投与された群と比較して、ドスタルリマブは、がんが大きくなるまでの期間を延長し、全生存期間を有意に改善したことが示された。
しかし、本試験は短期間88人の患者を調査したにすぎず、長期的な有益性は不明のままである。そのため、ある薬剤がNHS(英国民保険サービス)の財源の用途として適切かどうかをNICEが決定する際に参考となる、長期間の費用対効果は不明瞭である。
そのため、ドスタルリマブの長期的効果に関する、より多くのエビデンスが収集されている間、ドスタルリマブはCancer Drugs Fund(がん治療薬基金)を通じて利用可能となる。
NICEの決定はイングランドに適用され、ウェールズと北アイルランドでは通常の場合、採用される。スコットランドでは、どの薬剤が英国民保険サービスで使用できるか決定するプロセスが異なる。
- 監訳 原野謙一(乳腺・婦人科腫瘍内科/国立がん研究センター東病院)
- 翻訳担当者 山口みどり
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- 原文掲載日 2024/03/08
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