デノスマブはアンドロゲン抑制療法(ADT)を受けている前立腺癌男性患者の骨折リスクを減少

キャンサーコンサルタンツ
2009年5月

デノスマブがアンドロゲン抑制療法(ADT)を受けている前立腺癌男性患者で新たな椎体骨折の発生を有意に減少させたと、国際多施設試験を行った研究者らは報告した。この試験の詳細は、フロリダ州オーランドで開催された2009年5月31日の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表された。[1]

継続的にADTを受けている患者は、治療開始後24ヶ月以内に骨密度(BMD)が著しく低下する。骨量が低下すると、骨粗鬆症や骨折、疼痛、入院、寝たきりのリスクが高まり、その結果、医療費が増大する。ADTによる骨量の低下は、早期のビスフォスフォネート治療で軽減されるというエビデンスがある。しかし、転移していない前立腺癌男性患者に対する診療の明確なガイドラインは未だに確立されていない。(骨転移性前立腺癌男性患者にはビスフォスフォネートが推奨されている)

デノスマブは完全ヒトモノクローナル抗体で、骨リモデリングにおける骨吸収の重要なメディエーターであるNF-B活性化受容体リガンド(RANKL)を特異的に標的としたものである。デノスマブは骨粗鬆症、治療誘発性骨量減少、リューマチ性関節炎、骨転移、多発性骨髄腫など様々な疾病で試験中である。デノスマブは、転移性乳癌のみられる女性患者でBMDを増加させ、骨吸収を減少させる。また、デノスマブはアロマターゼ阻害剤で長期に渡って治療を受けている非転移性乳癌患者のBMDを増加させる。

2009年のASCOで発表された他の試験結果では、ADTを受けている限局性前立腺癌男性患者において、36カ月デノスマブを投与した患者ではプラセボを投与した患者に比べて骨密度の改善がみられた[2]。この 最近の試験は、局所前立腺癌男性患者を3年間に渡り6カ月ごとにデノスマブを投与した群(n=734)およびプラセボを投与した群(n=734)に無作為に割り付けて、骨折の発生を評価した。割り付けられた全参加者はADT療法を受けており、ビタミンDおよびカルシウムのサプリメントを摂取した。デノスマブは、試験期間中の3年間で新たな椎体骨折の発生を62%減少させ、椎体以外の骨折の発生を28%減少、椎体以外の部位での複雑骨折の発生も72%減少させた。研究者らは、デノスマブによる椎体以外の骨折の発生の減少に関連する一貫した傾向についても発表した。3年間で全ての部位の骨折の発生はデノスマブ投与群で43% 、プラセボ投与群で77%であった。6箇所の高リスク部位(舟状骨、上腕骨、坐骨、骨盤、下肢骨、鎖骨)の骨折の発生がデノスマブによって減少することがわかった。 デノスマブによる明らかな副作用はみられなかった。研究者らは「デノスマブは新たな椎体骨折の発生を有意に減少させ、post-hoc分析(多重比較)で、ADT療法を受けている非転移性前立腺癌男性患者における椎体以外の骨折に対しては肯定的な効果がみられる傾向がある」と結論づけている。

コメント: これらのデータから、ADT療法を受けている前立腺癌男性患者へのデノスマブの投与は骨密度の改善だけではなく、骨折の発生を予防する効果もみられる。

参考文献:
[1] Saad F, Smith MR, Smith B, et al. Denosumab for prevention of fractures in men receiving androgen deprivation therapy (ADT) for prostate cancer. Journal of Clinical Oncology. 2009;27:15s, abstract number 5056.
[2] Smith MR, Ellis G, Saad T, et al. Effect of denosumab on bone mineral density (BMD) in women with breast cancer (BC) and men with prostate cancer (PC) undergoing hormone ablation therapy. Journal of Clinical Oncology. 2009;27:15s, abstract number 9520.


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翻訳担当者 部谷 美樹

監修 武田裕里子(薬学)

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