2010/03/09号◆特集記事「進行前立腺癌患者に有望な試験段階の治療薬 」
同号原文|
NCI Cancer Bulletin2010年3月9日号(Volume 7 / Number 5)
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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇
進行前立腺癌患者に有望な試験段階の治療薬
進行した前立腺癌において、標準的な化学療法を受けた患者と比較し、研究段階にある薬剤cabazitaxel[カバジタキセル]の投与を受けた患者の一部では生存期間の延長が認められた。ランダム化第3相臨床試験から得られたこの結果は、先週サンフランシスコで行われたGenitourinary Cancers Symposium(泌尿生殖器癌シンポジウム)で発表された。Cabazitaxelによる生存期間の延長は中程度(数カ月)だが、転移を有する去勢抵抗性、あるいはホルモン不応性と呼ばれるタイプの前立腺癌患者には現在のところ他に有効な治療法がない。
「このタイプの研究では初めての有効性が示された研究です」とUS Oncology社の治療薬開発委員会の長で医療ディレクターでもあるDr. Nicholas Vogelzang氏は、シンポジウムに先立つ3月3日に行った記者会見で語った。Cabazitaxelは、標準化学療法が奏効しなかった患者の選択肢として検討されるべき薬であることは明らかである、と同氏はつけ加えた。
国際的に実施されたTROPIC試験 は、ホルモン療法およびその後に進行前立腺癌の標準治療薬であるドセタキセルによる化学療法を受けたあと病勢が進行した前立腺癌患者755人が参加した。試験に参加した患者はcabazitaxel +プレドニゾン投与群、または別の化学療法薬であるミトキサントロン+プレドニゾン投与群に無作為に割り付けられた。
観察期間中央値12.8カ月で、全生存期間中央値は、ミトキサントロン+プレドニゾン併用群で12.7カ月であったのに対し、cabazitaxel+プレドニゾン併用群では15.1カ月であった。この結果は死亡リスクを30%低減させることになると、試験責任医師であるTulane Cancer CenterのDr. Oliver Sartor氏は述べた。
Cabazitaxelはドセタキセルと同様に、タキサン系として知られるクラスの薬剤で、多くの前立腺癌患者に生じるドセタキセル抵抗性癌細胞に対して作用するようデザインされている。前立腺癌細胞は抗癌剤が効果を発揮する前に細胞外へ排出してしまうが、研究者らによると、Cabazitaxelはこのメカニズムを回避するとみられる。
全生存期間の延長は、年齢、人種や併存症などで層別化したサブグループすべてで一貫していたとSartor氏は述べた。Cabazitaxel治療をうけた患者では、腫瘍増殖のみられない生存期間(無増悪生存期間)や治療後の有意な腫瘍縮小(奏効率)といった重要な評価項目が改善した。
有害事象に関しては、cabazitaxelの投与を受けた患者で、好中球と呼ばれる白血球の著しい減少に関連して高熱が出る発熱性好中球減少症が多くみられた。この毒性のため、cabazitaxelで治療を受けた患者はこの毒性に関して「注意深く観察」する必要があるとSartor氏は助言した。
ドセタキセルに反応しなくなった前立腺癌患者に対して一般的に認められている標準治療法がないため、cabazitaxelと比較する療法を選ぶのは難しいことだったとSartor氏は述べた。プラセボの代わりにミトキサントロンを選択したのは、ミトキサントロンがこのタイプの患者に対し一定の作用があるためであると、同氏は説明した。
「二次治療で患者をタキサン系の化学療法で治療でき、一定の有効性と適切な忍容性が得られるというのは有望な結果です」と、デューク大学医学部総合がんセンター内科・泌尿器外科助教のDr. Daniel George氏は述べた。ドセタキセルを使用した一次治療への反応が良好な患者では、二次、三次治療においても反応が良い傾向にあるとGeorge氏は付け加えた。「つまり、そのような患者にとっては、cabazitaxelによる治療は一歩前進という以上のものになるかもしれません。」
さらにこの試験の結果は、進行前立腺癌の患者にとって、化学療法が最後の砦と決定づけられたわけではなく、「当初に考えられていたよりも、生存期間を実際に延長できる」ということを立証するものだとGeorge氏は述べた。
癌治療における進歩が常に緩やかであったことを考えると、今回の試験は、2004年に進行前立腺癌治療でのドセタキセルの有効性を示した成果に類似する、とVogelzang氏は述べた。
Cabazitaxelの製造会社であるサノフィ・アヴェンティス社は、米国食品医薬品局に二次治療薬として本剤の承認申請を行うとみられる。Cabazitaxelは、この適応でFDAの承認を受ける初めての薬剤となる可能性がある。この3回目となる年次シンポジウムは、米国臨床腫瘍学会(ASCO)、米国放射線腫瘍学会(ASTRO)および米国泌尿器腫瘍学会(SUO)の協賛を受けて開催された。
–—Edward R. Winstead and Carmen Phillips
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岡田 章代 訳
榎本 裕 (泌尿器科)監修
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