進行前立腺がん転移巣への放射線療法+ホルモン療法がPFSを改善

MDアンダーソン、ASTRO 2022で第2相EXTEND試験の結果を発表

アブストラクト LBA 05

オリゴメタ(少数の転移巣)がある前立腺がん患者を対象に、間欠的ホルモン療法に転移巣に対する放射線療法を追加することで無増悪生存期間(PFS)が改善したことを、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らが明らかにした。多施設共同のEXTEND試験の結果が10月25日、2022年米国放射線腫瘍学会(ASTRO)年次総会で発表された。

追跡期間中央値22.1カ月の時点で、併用療法を受けた男性では無増悪生存期間中央値にまだ到達しておらず、ホルモン療法のみを受けた男性の無増悪生存期間中央値15.8カ月よりも有意に改善したことが示唆された。この併用療法は忍容性が良好で、進行することなくホルモン療法を中断できる期間を延長したことから、この手法が進行前立腺がん患者の生活の質(QOL)を改善する可能性があることを示唆している。

「照射技術は直接転移巣を標的とし、副作用を軽減して前立腺がんの患者さんをより良く治療するために進化してきました。この試験は、治療成績を向上させるためにこれらの新たな照射技術とホルモン療法を併用することの有用性について、本当に必要なデータを提供しています」と、主任研究者で放射線腫瘍科准教授のChad Tang医師は述べた。

転移巣に対する治療(MDT)は、手術や放射線によって転移巣を直接、局所的に治療し、その部位のすべてのがん細胞を死滅させることを目的としている。転移前立腺がんでは通常全身療法が行われ、その中で最も一般的なのは持続的ホルモン療法である。近年では、転移巣に対する治療を用いてオリゴメタを有する患者を治療することが増えている。

画像検査で確認される転移巣が5個以下と定義されるオリゴメタは、限局性のがんと広範囲に転移したがんの間の過渡的な状態である。根治的局所療法の有用性を示した最初の研究はMDアンダーソンで実施され、2016年に発表された。それ以来、この領域では多くの研究が行われてきた。

しかし、先行ホルモン療法の有用性やホルモン療法と放射線療法との相乗効果を支持するデータがあるにもかかわらず、オリゴメタ前立腺がん患者に対してこの併用療法を検証したランダム化比較試験は行われていなかった。

EXTEND試験は、複数の固形がんを対象とした第2相ランダム化バスケット試験であり、転移巣に対する治療の追加によりオリゴメタの患者の無増悪生存期間が改善されるかどうかを検証している。無増悪生存期間は41件の進行イベント発生時点で独立して評価し、報告するよう事前に規定しており、評価・報告は追跡期間中央値22.1カ月後であった。

前立腺がんコホートでは、87人の男性が放射線療法+間欠的ホルモン療法またはホルモン療法単独のいずれかを受けるように無作為化された。参加した患者のほとんど(72人)は白人で、黒人が7人、ヒスパニック系が6人、その他2人であった。

ホルモン療法は、黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト/アンタゴニストと第二世代アンドロゲン受容体標的薬の併用または非併用であった。転移巣に対する治療の有用性は、第二世代のアンドロゲン遮断薬の投与を受けたかどうかに関係なく、患者全体で維持された。登録から6カ月後にホルモン療法を終了し、進行時には全員がホルモン療法を再開した。

副次的評価項目として、ホルモン療法を中断している間に正常なテストステロン値を維持できる期間もモニターした。転移巣に対する放射線治療の追加により、無増悪期間が延長した。併用群では中央値に達せず、ホルモン療法のみを受けた男性では無増悪期間中央値は6.1カ月であった。これらの知見から、放射線療法と間欠的ホルモン療法の治療戦略は、男性が安全に正常なテストステロン値を維持できる期間を最大限延長し、それにより患者の生活の質を維持できることが示された。

この治療法は忍容性が良好で、グレード3の毒性は各群で3例に認められた。その内訳は筋肉運動障害、泌尿器系および消化器系の副作用であったが、いずれも容易に管理可能であった。

Tang氏は、「この試験は、オリゴメタの患者で転移巣に対する放射線療法と間欠的ホルモン療法を併用すると、無増悪生存期間が有意に改善し、その毒性は管理可能であることを示しています。このデータと今後の試験で得られる知見を合わせ、前立腺がん診断後の男性の生活の質を安全に維持できるようになることを期待しています」と述べた。

研究者らは、ベースライン時と追跡調査3カ月後の末梢血を用いて、フローサイトメトリーやT細胞受容体シーケンシングを含む臨床検体の探索的解析も実施した。その結果、特に併用療法群でT細胞の活性化、増殖およびクローン性増殖のマーカーが増加したことが示された。

これらの知見をより良く理解し、どの特性を持つ男性がこの併用療法から利益を得るかを予測するバイオマーカーを特定するために、さらに研究が必要である。また、持続的ホルモン療法と間欠的ホルモン療法を直接比較する大規模なランダム化試験が必要である。

本研究は、Cancer Prevention and Research Institute of Texas(CPRIT)(RP200669)、米国国立衛生研究所の国立がん研究所(P30 CA016672)およびAndrew Sabin Family Fellowshipの支援を受けた。Tang氏に利益相反はない。共著者一覧と開示情報はアブストラクトを参照。

監訳:河村光栄(放射線科/京都桂病院)

翻訳担当者 坂下美保子

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