DenosumabのFDA承認
商品名:Xgeva, Prolia
・成人および骨格の成熟した青年の切除不能骨巨細胞腫に対して承認(2013年6月13日)
・固形腫瘍からの骨転移を有する患者における骨関連事象(SRE)の予防薬として承認(2010年11月18日)
・骨折リスクの高い骨粗鬆症を有する閉経後女性の治療薬として承認(2010年6月1日)
臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などのXgevaの全処方情報(原文)が参照できます。
Denosumabが、成人および骨格の成熟した青年の切除不能骨巨細胞腫に対して承認
2013年6月13日、米国食品医 薬品局(FDA)はDenosumab(Xgeva® 注, Amgen Inc.皮下注射用)を、切除不能または外科的切除が重度の障害を来たす可能性が高い成人および骨格の成熟した青年の骨巨細胞腫の治療に対し承認しました。
Denosumabの承認は、成人および骨格の成熟した青年を組み入れた2つの多施設非盲検臨床試験における、組織学的に確認され測定可能な骨巨細胞腫の、継続的客観的評価の観察に基づいています。これらは再発性、切除不能もしくは予定される手術が重度の障害を来たす可能性が高い腫瘍でした。患者はdenosumabを4週間毎120 mg皮下投与され、最初の月の8日目および15日目にも追加投与を受けました。
総勢304名の患者がdenosumab投与を受けました。患者年齢の中央値は33歳、年齢幅13歳から83歳で、13歳から17歳の全部で10名の患者が骨格の成熟した青年とされました。治療開始時とdenosumab治療後のレントゲン写真による評価が可能だったのは187名、61%でした。客観的奏効のレトロスペクティブ判定は、修正された固形癌の治療効果判定のためのガイドライン(RECIST 1.1)を使用し、独立した審査委員会により行われました。客観的効果は187名のうち47名において認められ、全奏功率は25%(95%信頼区間は19から32)であり、全て部分寛解でした。奏効までのおよその平均時間は3ヶ月で、客観的効果を示した47名の患者の追跡期間の中央値は20ヶ月(2から44ヶ月)で、47名のうち24名、51%で8ヶ月間反応が持続しました。3名の患者は客観的効果に続いて疾患進行を認めました。
安全性データは、一度でもdenosumabの投与を受けた骨巨細胞腫の304名の患者について評価されました。145名で1年以上治療を受けていました。最も一般的な副作用は、関節痛、頭痛、悪心、背部痛、悪寒、および四肢疼痛でした。最も一般的な重篤な副作用は、顎の骨壊死と骨髄炎でした。
Denosumabの骨巨細胞腫治療に対する推奨投与用量と投与スケジュールは、4週間毎120 mg皮下投与し、最初の月の8日目および15日目にも追加投与することです。
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藤平あや訳
高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部)監修
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デノスマブは、骨吸収を担う細胞である破骨細胞の形成、活性化、および生存に関与するタンパク質であるNF-kB活性化受容体リガンド(RANKL)に結合するモノクローナル抗体である。
本承認は、非転移性前立腺癌に対するADTを受けている患者、または乳癌に対するAIを用いた術後補助療法を受けている患者を対象とした、2つの多国籍ランダム化(1対1)、二重盲検、プラセボ対照試験の結果に基づくものである。20040138試験は、前立腺癌男性(年齢中央値76歳)1,468人を登録した3年間の試験であった。70歳未満の男性の場合は、ベースライン時の腰椎、股関節部、または大腿骨頸部の骨密度(BMD)のTスコアが-1.0~-4.0であるか、あるいは骨粗鬆性骨折の既往歴を有することを条件とした。20040135試験は、乳癌女性(年齢中央値59歳)252人を登録した2年間の試験であった。これらの女性は、ベースライン時の腰椎、股関節部、または大腿骨頸部のBMDのTスコアは-1.0~-2.5であり、25歳以降の骨折の既往歴は無いものとした。
患者は、プラセボあるいはデノスマブ60 mgを6カ月ごとに皮下注射する群に無作為に割り付けられ、20040138試験では計6回、20040135試験では計4回の投与を受けた。
各試験における主要評価項目は、20040138試験ではベースライン時から24カ月後の時点まで、20040135試験ではベースライン時から12カ月後の時点までの腰椎のBMDの変化とした。20040138試験における副次的評価項目は、36カ月後の時点までの新たな椎体骨折の発生とした。
20040138試験では、年齢(70歳未満または70歳以上)および試験登録時のADTの期間(6カ月以下または6カ月超)により層別化してランダム化された。試験登録時において6カ月以上にわたりADTを受けていた患者は79%であった。
20040135試験では、試験登録時のAIによる術後補助療法の期間(6カ月以下または6カ月超)により層別化してランダム化された。試験登録時において6カ月以上にわたりAIによる術後補助療法を受けていた患者は62%であった。
デノスマブはプラセボと比較して、非転移性前立腺癌患者または乳癌患者において、それぞれ24カ月後および12カ月後の時点で統計的に有意なBMD増加効果をもたらした。プロリアはまた、前立腺癌男性において、36カ月後の時点での新たな椎体骨折の発生を有意に減少させた。36カ月後の時点における新たな椎体骨折を有する男性の割合は、プラセボ投与群では3.9%であったのに対し、プロリア投与群では1.5%であった [絶対的リスク比(ARR) 2.4%, 95% 信用区間(CI:0.7, 4.1); 相対的リスク比(RRR) 62% (CI: 22, 81); p=0.0125]。
非転移性前立腺癌に対するADTあるいは乳癌に対するAIによる術後補助療法を受けている骨折リスクが高い患者におけるプロリアの有効性の結果
20040138試験 | 20040135試験 | |||
非転移性前立腺癌 | 非転移性乳癌 | |||
プロリア | プラセボ | プロリア | プラセボ | |
ベースライン時から試験期間終了時*までの腰椎のBMDの変化 | +5.6% | -1.0% | +4.8% | -0.7% |
治療による変化 (95% CI) | 6.7%(6.2, 7.1) | 5.5%(4.8, 6.3) | ||
p値 | < 0.0001 | < 0.0001 |
*20040138試験では24カ月後の時点、20040135試験では12カ月後の時点
報告された副作用のうちプロリア治療群で10%以上、およびプラセボ群でより頻度の高かったのは、関節痛および背部痛であった。さらに四肢痛および筋骨格痛も認められた。低カルシウム血症(血清カルシウム値が8.4 mg/dL未満)は1カ月後の来院日の時点でプロリア治療群の患者(2.4%)においてのみ観察された。
非転移性前立腺癌に対するADTあるいは乳癌に対するAIによる術後補助療法を受けている骨折リスクの高い患者において、骨量増加を目的とする治療薬としてのデノスマブの推奨用量および投与計画は、6カ月ごとに60 mgを皮下投与することである。
固形腫瘍からの骨転移を有する患者における骨関連事象(SRE)の予防薬として承認
2010年11月18日、米国食品医薬品局(FDA)は、固形腫瘍からの骨転移を有する患者における骨関連事象(SRE)の予防薬としてdenosumab(XgevaTM、Amgen Inc.製造)を承認しました。Denosumabは多発性骨髄腫患者におけるSREの予防に対しては適応がありません。
denosumabは、破骨細胞の形成、機能、生存に関わるタンパク質であるRANKLに結合するモノクローナル抗体です。破骨細胞はRANKLに刺激されて活性化し、固形腫瘍からの骨転移における骨の病的変化に関与します。
今回の承認は、骨転移を有する患者を対象とした、denosumabをゾレドロン酸と比較した、3件の国際的なランダム化(1:1)二重盲検ダブルダミー臨床試験の結果に基づくものです。20050103試験にはホルモン抵抗性前立腺癌患者1,901人、20050136試験には乳癌患者2,046人、20050244試験には進行性多発性骨髄腫患者また乳癌・前立腺癌以外の固形腫瘍患者1,776人が登録されました。
3件いずれの試験でも、患者は4週間ごとにdenosumab 120 mgを皮下投与する群と4週間ごとにゾレドロン酸4 mg(腎機能が低下している場合は用量を調節)を静脈内投与する群のいずれかに無作為に割り付けられました。クレアチニンクリアランスが30 mL/min未満の患者は除外され、ビスフォスフォネート製剤による治療を受けたことのある患者は参加できませんでした。
各試験の主要評価項目は、最初のSRE発現までの期間について、denosumab群のゾレドロン酸群に対する非劣性を判定することでした。SREは、病的骨折、骨に対する放射線治療、骨に対する手術、癌による脊髄圧迫のいずれかと定義されました。他の評価項目は、最初のSREまでの期間についての優越性、最初およびその後のSREまでの期間についての優越性などでした。
20050244試験では、患者の40%が非小細胞肺癌、10%が多発性骨髄腫、9%が腎細胞癌、6%が小細胞肺癌でした。他のタイプの癌はそれぞれ、登録患者全体の5%未満でした。
乳癌患者(20050136試験)およびホルモン抵抗性前立腺癌患者(20050103試験)では、denosumab投与により、最初のSREまでの期間と最初および2回目のSREまでの期間が、ゾレドロン酸に比べて統計学的に有意に長くなりました。20050244試験では、denosumabは最初のSREまでの期間の延長についてゾレドロン酸よりも有効性が低くはありませんでしたが、denosumabの優越性は示されませんでした。
Xgevaの有効性結果―ゾレドロン酸との比較
試験 1 転移性乳癌 | 試験 2 転移性固形腫瘍または多発性骨髄腫 | 試験 3 転移性ホルモン抵抗性前立腺癌 | ||||
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Xgeva | ゾレドロン酸 | Xgeva | ゾレドロン酸 | Xgeva | ゾレドロン酸 | |
N | 1026 | 1020 | 886 | 890 | 950 | 951 |
試験中最初のSRE | ||||||
SREを発現した患者数(%) | 315 (30.7) | 372 (36.5) | 278 (31.4) | 323 (36.3) | 341 (35.9) | 386 (40.6) |
最初のSREの内訳 | ||||||
骨への放射線照射 | 82 (8.0) | 119 (11.7) | 119 (13.4) | 144 (16.2) | 177 (18.6) | 203 (21.3) |
病的骨折 | 212 (20.7) | 238 (23.3) | 122 (13.8) | 139 (15.6) | 137 (14.4) | 143 (15.0) |
骨の手術 | 12 (1.2) | 8 (0.8) | 13 (1.5) | 19 (2.1) | 1 (0.1) | 4 (0.4) |
脊髄圧迫Spinal Cord Compression | 9 (0.9) | 7 (0.7) | 24 (2.7) | 21 (2.4) | 26 (2.7) | 36 (3.8) |
SREまでの期間の中央値(カ月) | NRb | 26.4 | 20.5 | 16.3 | 20.7 | 17.1 |
ハザード比(95% CI) | 0.82 (0.71, 0.95) | 0.84 (0.71, 0.98) | 0.82 (0.71, 0.95) | |||
非劣性p値 | < 0.001 | < 0.001 | < 0.001 | |||
Superiority p-value優越性p値c | 0.010 | 0.060 | 0.008 | |||
最初およびその後のSREd | ||||||
患者あたりの平均発現数 | 0.46 | 0.60 | 0.44 | 0.49 | 0.52 | 0.61 |
発現比 (95% CI) | 0.77 (0.66, 0.89) | 0.90 (0.77, 1.04) | 0.82 (0.71, 0.94) | |||
優越性p値e | 0.001 | 0.145 | 0.009 |
bNR=到達せず。
c優越性検定は、試験内でdenosumabのゾレドロン酸に対する非劣性が示された場合にのみ実施。
dランダム化後すべての骨関連事象(skeletal events)。以前の事象から21日以上経ってから発現した事象を、新しい事象とした。
e補正後p値。
3件の試験いずれも、全生存(overall survival)については投与群間で明らかな差は認められませんでした。20050244試験の多発性骨髄腫患者のサブグループ解析では、denosumab群のほうがゾレドロン酸群に比べて死亡率が高いようでした(ハザード比2.26、95%CI 1.13~4.50、n=180)が、サブグループの患者数が限られていたため、確定的な結論は得られませんでした。
Denosumab群において頻度の高い(患者の25%以上)副作用は、疲労、無力症、低リン酸血症、悪心でした。Denosumab群において頻度の高い重篤な副作用は呼吸困難でした。Denosumab投与中止に至った副作用で頻度が高かったのは、骨壊死と低カルシウム血症でした。
重度の低カルシウム血症(補正血清カルシウム値が7 mg/dL未満、または1.75 mmol/L未満)がdenosumab群の3.1%、ゾレドロン酸群の1.3%の患者に発現しました。顎骨壊死はdenosumab群の1.8%、ゾレドロン酸群1.3%の患者に認められました。
固形腫瘍からの骨転移を有する患者における、SRE予防のためのdenosumabの推奨投与量およびスケジュールは、4週間ごとの120 mg皮下投与です。
臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などのProliaの全処方情報(原文)が参照できます。
骨折リスクの高い骨粗鬆症を有する閉経後女性の治療薬として承認
2010年6月1日、denosumabは骨折リスクの高い骨粗鬆症を有する閉経後女性の治療薬として承認されました。現在ProliaTMの商品名で販売されています。この適応に対する用法用量は、6カ月ごとの60 mg皮下投与です。
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安田詠美 翻訳
榎本 裕(泌尿器科/東京大学医学部付属病院) 監修
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この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。 FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。 |
原文掲載日
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