前立腺がん治療薬、塩化ラジウム223(ゾーフィゴ)の使用制限を推奨―欧州医薬品庁(EMA)

塩化ラジウム223の使用は3次治療以降、または他の治療が受けられない場合に限定されるべき

欧州医薬品庁(EMA)安全委員会であるファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC)は、2018年7月9日~12日に行われた会合において、がん治療薬塩化ラジウム223(ゾーフィゴ[Xofigo])の使用は、すでに2次治療まで受けたか、他の治療が受けられない転移性前立腺がん患者に限定すべきという推奨を出した。

この制限は、ゾーフィゴを投与された患者がプラセボを投与された患者より早期に死亡するリスクを有し、骨折も多かったことを示唆する研究データの検討結果として出された。ゾーフィゴは症状のある患者にのみ適応が承認されているが、この研究では、症状のないか、軽度の患者も含まれていた。この研究において、ゾーフィゴとの併用でアビラテロン酢酸エステル(ザイティガ)とプレドニゾン/プレドニゾロンを投与された患者は、プラセボとの併用でザイティガとプレドニゾン/プレドニゾロンを投与された患者に比べ、平均で2.6カ月早く死亡した。さらに、ゾーフィゴとの併用療法を投与された患者で骨折したのが29%だったのに対し、プラセボを投与された患者で骨折したのは11%だった。

ゾーフィゴは、骨に取り込まれ、骨粗しょう症や微小骨折などですでに損傷を受けている箇所に蓄積することで骨折リスクを増加させると考えられている。しかし、本研究での早期死亡リスクについては完全には理解されていない。

ファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC)は、ゾーフィゴとザイティガおよびプレドニゾン/プレドニゾロンとの併用を禁止した中間的推奨に変更がないことも確認した。

ゾーフィゴは、ホルモン療法を除く他の全身がん治療と併用されるべきではない。また、現行の適応のとおり、症状のない患者や造骨性転移箇所の少ない患者への投与もすべきではない。

ゾーフィゴによる治療の前、最中、および終了後に、患者の骨折リスクを慎重に評価すべきである。ゾーフィゴによる治療を開始または再開する際には、ビスホスホネートやデノスマブなど骨の強度を上げる薬剤の使用を検討すべきである。

ゾーフィゴを販売している企業には、研究で報告された早期死亡リスクと骨折リスク増加のメカニズムなどを調査する研究が要請された。制限された適応におけるゾーフィゴの利益・不利益の特性も詳細に示すべきである。

ファーマコビジランス・リスク評価委員会の推奨内容は、ヒト用医薬品に関する疑問に対応する欧州医薬品庁ヒト用医薬品委員会(CHMP)に送られ、CHMPが同庁の見解を採択する。

医薬品についてより詳しく

ゾーフィゴは現在、前立腺がんに罹患した成人男性の治療に用いられている。内科的・外科的去勢では効果がなく、骨転移がみられ、疼痛などの症状が認められるが他の内臓への転移は確認されていない患者への適応が承認されている。

ゾーフィゴはEUにおいて2013年11月に承認された。ゾーフィゴのより詳細な情報はここをクリック

審査の流れについてより詳しく

ゾーフィゴの審査は、規則第726/2004号の第20条に基づき、欧州委員会の要請で2017年12月1日に開始された。

審査は、ヒト用医薬品の安全性を評価する委員会であるファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC)によって行われ、PRACはいくつかの推奨を出した。

2018年3月、PRACは、審査継続中であるものの、中間的措置としてゾーフィゴとザイティガおよびプレドニゾン/プレドニゾロンとの併用禁忌を推奨した。

PRACの推奨内容はヒト用医薬品に関する疑問に対応する欧州医薬品庁ヒト用医薬品委員会(CHMP)に送られ、CHMPが同庁の見解を採択する。

審査の最終段階は欧州委員会による採択で、これによりEU加盟国すべてに適用され、法的拘束力を持つようになる。

翻訳担当者 関口百合

監修 榎本裕(泌尿器科/三井記念病院)

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