アパルタミドは前立腺がん転移までの期間を2年以上延長

専門医の見解

「明らかな転移の所見がないにもかかわらず血液中のマーカーが上昇する前立腺がんの患者がいる。これらの患者は予後不良の可能性があり、現在のところ適切な治療法は確立されていない。今回の試験結果は、これらの患者にとって自身の健康と寿命を延ばす可能性のある治療法がついに登場する可能性を示唆している」と、本日のプレスキャストの座長を務めたASCOの専門医、Sumanta K. Pal 医師は述べた。

プラセボ対照第3相臨床試験、SPARTAN試験の結果から、アパルタミドは、転移リスクが高いものの承認されている治療法のない非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)患者の有効な治療法となることが示唆されている。アパルタミドを服用した患者はプラセボと比較して転移あるいは死亡のリスクが72%低かった。

報告者らによれば、米国の約10万人の男性患者が対象になり、試験結果はカリフォルニア州サンフランシスコで開催予定の2018年泌尿器生殖器がんシンポジウムで発表される予定である。

「この臨床試験を実施する以前は、標準的なホルモン治療を実施しているにもかかわらず進行する非転移前立腺がん患者にとって有効性が示された薬剤はなかった。試験の結果、アパルタミドが転移までの期間を延長する点で有意な差が示された」と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部教授であり試験責任者のEric J. Small医師は述べた。

去勢抵抗性前立腺がん

手術や放射線治療といった局所治療の後に再発する前立腺がんの男性は、アンドロゲン除去療法(ADT)と呼ばれるホルモン療法によって治療される。その後ADTに対して抵抗性を獲得した前立腺がんは、去勢抵抗性と呼ばれている。非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)の治療においてFDAが認可した薬剤はなく、一部の医師はこれらの患者を注意深く経過観察している。しかしながら、ADT施行中に前立腺特異抗原(PSA)が急激に上昇(PSA倍加時間が8~10カ月未満)する患者は転移や死亡のリスクが著しく高い。SPARTAN試験ではこのような患者を主に登録した。

臨床試験について

SPARTAN試験は世界332施設で行われ、1207人の男性を登録した。ADTに対して反応しなくなり、かつPSA倍加時間10カ月以下を基準に、転移のリスクが高い非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者を、アパルタミドまたはプラセボを連日内服する治療にランダムに割付けた。転移が発生した時には、主治医の判断により標準的なセカンドラインの治療を受けたが、本研究が提供する標準治療であるアビラテロンとプレドニゾン治療を受ける選択肢もあった。

主要な結果

試験登録時のPSA倍加時間の中央値はアパルタミドおよびプラセボ服用群の両方で約4.5カ月であった。アパルタミドはプラセボと比較して転移および死亡を72%減少させ、無転移生存期間中央値を2年有意に延長させた(アパルタミド群で40.5カ月、プラセボ群16.2カ月)。現時点での全生存解析に関する中間解析では、統計的に有意差はないもののプラセボに対してアパルタミド内服の全生存期間の改善傾向が確認された。無転移生存期間の解析に基づき、独立データモニタリング委員会の推奨により2017年7月に研究の治療方法の盲検化が解除され、全患者がオープンラベル下でアパルタミドの内服を指示された。

有害事象による治療中止はアパルタミド群で10.7%、プラセボ群で6.3%であり、アパルタミドの忍容性が良好であることが示された。生活の質(QOL)スコアは、ADTに加えてアパルタミドを内服した患者でよく維持されていた。

「これらの結果は、転移前にアパルタミドを使用することが従来のホルモン治療に反応しない前立腺がん患者に明らかに利益をもたらすことを示している。現在承認された治療法のない、高リスクの患者にとって、これほど忍容性の高い薬剤ができたことは喜ばしいことである」とSmall医師は述べた。

次のステップ

報告者らは、血液サンプル中の分子マーカーあるいは循環マーカーを分析することで、アパルタミドが最も有効である患者層を特定できることを期待している。また、患者側の観点からも試験の成功/不成功を評価するために、患者の報告によるアウトカムについても深く分析する予定である。

SPARTAN試験はジョンソン・エンド・ジョンソンの100%子会社であるAragon Pharmaceuticals Inc.社の資金で実施された。

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読者への参考:

•前立腺がん指針

翻訳担当者 滝坂美咲

監修 榎本裕(泌尿器科/三井記念病院)

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