アビラテロンは転移前立腺がんの進行を18カ月遅延、生存期間を延長

ASCOの見解

「進行性前立腺がんと診断された患者にとって、まず化学療法による治療、そして今度はアビラテロンと、治療はより効果的なアプローチへと発展しています」と、ASCO ExpertのSumanta Kumar Pal医師は述べた。「これは朗報です。アビラテロンの使用は、極めて少ない副作用で多くの患者の生存期間を延長できる可能性があります」。

ハイリスクの転移性前立腺がんと新たに診断された患者に対して、標準的なホルモン療法にアビラテロン酢酸エステル(ザイティガ)およびプレドニゾンを併用することで、死亡率が38%低下した。患者1,200人が参加した第3相臨床試験では、アビラテロンが無増悪期間の中央値を14.8カ月から33カ月へと、倍以上に延長させた。この研究は、本日の報道会見で紹介され、2017年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される。

 「平均して5年以内に死亡に至る転移性がんと新たに診断された患者に対する治療を改善する大きな要望があります」とフランス、ヴィルジュイフのパリ・シュッド大学グスタフ・ルッシーがん研究所悪性腫瘍部門長で、この試験の筆頭著者であるKarim Fizazi 医学博士は述べた。「本試験でみられたアビラテロンの早期使用による効果は、以前の臨床試験で観察されたドセタキセル化学療法の利点と少なくとも同等ですが、アビラテロンの忍容性ははるかに高く、多くの患者が副作用をまったく報告していません」。

 前立腺がんの増殖は、テストステロンの影響を受けて促進される。アンドロゲン除去療法(ADT)は、精巣でのテストステロン産生を抑制することで前立腺がんに有効である。アンドロゲン除去療法を施行したにもかかわらず、副腎および前立腺がん細胞では少量のアンドロゲンを産生し続ける。アビラテロンは、他のホルモンをテストステロンに変換する酵素を遮断することにより、体内のテストステロン産生を阻害する。すでにFDAは、アンドロゲン除去療法にもかかわらず増悪した転移性前立腺がん患者に対する治療としてアビラテロンを承認した。

 本研究について

 LATITUDE試験は、ADTを受けたことがない未治療ハイリスク転移性前立腺がんと新たに診断された患者を対象とした国際共同第3相ランダム化プラセボ対照試験である。すべての患者は、3つのリスク因子のうち少なくとも2つを有していた。すなわち、グリーソンスコア(腫瘍の悪性度を判断するのに用いられる指標)が8以上、3つ以上の骨転移、または3つ以上の内臓転移(肝臓等の他臓器への浸潤)である。

 患者は、アンドロゲン除去療法(ADT) +アビラテロン+プレドニゾン投与群またはADT +プラセボ投与群に無作為に割り付けられた。糖質ステロイドであるプレドニゾンは、低カリウム血症または高血圧などといったアビラテロンの特定の副作用を管理する目的で、アビラテロンとともに日常的に併用されている。

 主な知見

 追跡期間中央値は30.4カ月、アビラテロン投与群はプラセボ投与群より死亡リスクが38%低かった。全生存期間中央値はアビラテロン投与群では未到達(解析時に患者群の50%以上が生存していたため、生存期間中央値は計算できなかった)、プラセボ投与群では34.7カ月であった。また、プラセボ投与群と比較すると、アビラテロン投与群では増悪リスクが53%低下し、無増悪期間中央値は18.2カ月延長した。

 アビラテロン酢酸エステル+プレドニゾン投与群ではプラセボ投与群よりも重大な副作用が認められた。主なものは高血圧(20%対10%)、低カリウム血症(10.4%対1.3%)、および肝酵素異常(5.5%対1.3%)であった。

 「糖尿病患者等の心臓疾患リスクの高い患者がアビラテロンを使用する際には注意が必要です」とFizazi博士は述べている。

 次のステップ

「2015年にドセタキセル化学療法が生存率を改善することが示されるまで、われわれは転移性前立腺がんに対して、70年間同じ治療をおこなってきました。そして2017年の現在、アビラテロンが転移性前立腺がん患者の生存率の延長に寄与することが本試験で示されました」とFizazi博士は語った。「次のステップは、ドセタキセルにアビラテロンを上乗せすることで治療成績がさらに向上するかを評価することです」。現在この試験はヨーロッパで実施中である。

 本研究は、Janssen Research and Developmentの資金提供を受けた。

要約全文はこちらを参照のこと。

翻訳担当者 小熊未来

監修 榎本裕(泌尿器科/三井記念病院)

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