間欠的ホルモン療法は前立腺癌に有効

キャンサーコンサルタンツ

放射線治療の施行後にPSA再発(前立腺特異抗原値の上昇)を認めた前立腺癌患者において、間欠的に(治療を中断しながら)施行するホルモン療法は、継続的に施行するホルモン療法と同程度の有効性があることが明らかになった。この結果は泌尿生殖器癌シンポジウム(2011 Genitourinary Cancers Symposium)で発表された。

アンドロゲン除去療法とは、テストステロンがホルモン依存性前立腺癌の増殖を刺激しないよう阻止する治療法である。持続的アンドロゲン除去療法(CAD:continuous androgen deprivation)では、骨粗しょう症、顔面紅潮、性欲減弱などの副作用があるほか、ほとんどの前立腺癌ではホルモン療法の耐性を持ってしまうため、研究者らは引き続き代替の治療法を調査している。

間欠的アンドロゲン抑制療法(IAS:intermittent androgen suppression)は、この代替治療のひとつである。IASとは、十分な治療反応が得られた時点で治療を中断するホルモン療法である。必要に応じてこのサイクルを繰り返し行う。IASでは副作用の減少およびホルモン耐性の回避が期待できる。

放射線治療の施行後にPSA値の上昇が認められた前立腺癌患者においてIASの有効性を評価するために、研究者らは1,386人の患者を調査した。半数の患者にCADを施行し、半数の患者にIASを施行した。IASは8カ月間を1回として実施し、治療中断中にPSA値が10 ng/mlを超えた時点で治療を再開した。

フォローアップ期間中に、IAS群の患者は27%の時間で治療(ホルモン療法)を受けた。

IASとCADの全生存期間(OS)にほぼ差がないことが明らかになった時点で、本試験は早期に終了した。

  • IAS群のOSは8.8カ月であったのに対して、CAD群のOSは9.1カ月であった。
  • IAS群は、CAD群と比べて、前立腺癌に関連する死亡は増加したが、他の死因による死亡は減少した。
  • IAS群は、CAD群と比べて、顔面紅潮の減少が認められた。他の副作用の発現頻度については、両群で差はなかった。

これらの結果から、間欠的ホルモン療法と持続的ホルモン療法のOSについては、同程度の有効性があることが明らかになった。間欠的にホルモン療法を施行するにより、前立腺癌患者の生活の質の改善と治療費の軽減が期待できる。

参考文献:

Klotz L, O’Callaghan J, Ding K et al. A phase III randomized trial comparing intermittent versus continuous androgen suppression for patients with PSA progression after radical radiotherapy: NCIC CTG PR.7/SWOG JPR.7/CTSU JPR.7/UK Intercontinental Trial CRUKE/01/013. Presented at the 2011 Genitourinary Cancers Symposium. Abstract 3.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved. These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein. Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc. 本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。 Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 森島 由希

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

前立腺がんに関連する記事

前立腺がんにおけるテストステロンの逆説的効果を解明の画像

前立腺がんにおけるテストステロンの逆説的効果を解明

デューク大学医学部デューク大学医療センター最近、前立腺がんの治療において矛盾した事実が明らかになった: テストステロンの産生を阻害することで、病気の初期段階では腫瘍の成長が止ま...
一部の生化学的再発前立腺がんに、精密医薬品オラパリブがホルモン療法なしで有効な可能性の画像

一部の生化学的再発前立腺がんに、精密医薬品オラパリブがホルモン療法なしで有効な可能性

ジョンズホプキンス大学抗がん剤オラパリブ(販売名:リムパーザ)は、BRCA2などの遺伝子に変異を有する患者に対し、男性ホルモン療法を併用せずに、生化学的再発をきたした前立腺がんの治療に...
転移性前立腺がん試験、アンドロゲン受容体経路阻害薬の変更よりも放射性リガンド療法を支持の画像

転移性前立腺がん試験、アンドロゲン受容体経路阻害薬の変更よりも放射性リガンド療法を支持

第3相PSMAforeの追跡研究研究概要表題タキサン未投与の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者における[177Lu]Lu-PSMA-617の有効性とARPI変更との比較:ラ...
転移性前立腺がんに生物学的製剤SV-102とデバイスの併用免疫療法SYNC-Tは有望の画像

転移性前立腺がんに生物学的製剤SV-102とデバイスの併用免疫療法SYNC-Tは有望

低温プローブを用いる治験的治療では、前立腺がん細胞の一部を死滅させ、腫瘍特異的ネオアンチゲン(※がん細胞特有の遺伝子変異などによって新たに生じた抗原)を放出させ免疫反応を促進する。...