150回達成: ロボット手術HIFUで変わる前立腺がん治療

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)

リスク少なく回復が早い高密度焦点式超音波療法(HIFU)で世界をリードする

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)ヘルスは、前立腺がん患者に対するロボット支援高密度焦点式超音波(HIFU)療法による部分治療をこれまでに150回実施した。150回達成は西海岸で初めて、またUCヘルス・システムでも初めてのことである。

HIFU技術は、超音波を用いて前立腺がん組織を破壊する。この超音波を患部に集めることで、HIFUは局部を加熱し、周囲の健康な組織を傷つけることなく前立腺内のがん細胞を死滅させる。この技術は精度が高いため、必要なだけ何度でも安全に繰り返して行なうことができる。超音波は標的に到達するまで、途中にある組織層に害を与えることなく通過することができる。

ロボット支援HIFUの部分治療には、他の治療法と比較していくつかの利点がある。この治療法では、全身麻酔下での施術1回で正確な焦点照射が可能である。この治療法は非侵襲的で、メス、傷跡、放射線、切開を必要としない。治療は前立腺の病変部を正確に破壊し、生活の質の維持を優先する。失禁や勃起不全など、治療後の副作用のリスクは低い。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)、泌尿器科Richard and Leilani Grinold寄附講座教授であるHao Nguyen医学博士(泌尿器科腫瘍医・外科医)は、次のように話す。「これは、私たちにとって実に喜ばしい節目となる通過点です。UCSFでロボット支援HIFUによる部分治療を始めてから、この治療法が前立腺がん患者の生活をいかに改善するかを目の当たりにしてきました」。

ロボット支援HIFUを用いた部分治療は2021年5月に開始された。それ以来、UCSFはこの治療法に関する医師やスタッフのトレーニング、患者教育におけるリーダーとして認知されている。

UCSF泌尿器科教授である篠原克人医師(泌尿器がん外科医)は、「この治療法によって、臨床的に有意な前立腺がん患者のQOLを維持することができます。放射線や手術による従来の治療法と比較して、合併症のリスクが低く、回復期間も短くなります」と言う。

UCSF前立腺がんセンターは、前立腺がん患者だけでなく、その発症リスクの高い男性にも包括的で最先端の治療を提供している。早期スクリーニングと早期発見に重点を置き、低リスクのがんに対する監視療法から、限局性(前立腺に限局)、進行性(骨盤外の組織への転移)であるかを問わず全ステージがんに対する最新技術まで、幅広いサービスを提供している。UCSFは後期前立腺がんの主要研究センターであり、現状で最良の治療法を提供している。

  • 監訳 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)
  • 翻訳担当者 山田登志子
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2023/09/20

 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

 

前立腺がんに関連する記事

前立腺がんにおけるテストステロンの逆説的効果を解明する研究結果の画像

前立腺がんにおけるテストステロンの逆説的効果を解明する研究結果

デューク大学医学部デューク大学医療センター最近、前立腺がんの治療において矛盾した事実が明らかになった: テストステロンの産生を阻害することで、病気の初期段階では腫瘍の成長が止まり、一方...
一部の生化学的再発前立腺がんに、精密医薬品オラパリブがホルモン療法なしで有効な可能性の画像

一部の生化学的再発前立腺がんに、精密医薬品オラパリブがホルモン療法なしで有効な可能性

ジョンズホプキンス大学抗がん剤オラパリブ(販売名:リムパーザ)は、BRCA2などの遺伝子に変異を有する患者に対し、男性ホルモン療法を併用せずに、生化学的再発をきたした前立腺がんの治療に...
転移性前立腺がん試験、アンドロゲン受容体経路阻害薬の変更よりも放射性リガンド療法を支持の画像

転移性前立腺がん試験、アンドロゲン受容体経路阻害薬の変更よりも放射性リガンド療法を支持

第3相PSMAforeの追跡研究研究概要表題タキサン未投与の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者における[177Lu]Lu-PSMA-617の有効性とARPI変更との比較:ラ...
転移性前立腺がんに生物学的製剤SV-102とデバイスの併用免疫療法SYNC-Tは有望の画像

転移性前立腺がんに生物学的製剤SV-102とデバイスの併用免疫療法SYNC-Tは有望

低温プローブを用いる治験的治療では、前立腺がん細胞の一部を死滅させ、腫瘍特異的ネオアンチゲン(※がん細胞特有の遺伝子変異などによって新たに生じた抗原)を放出させ免疫反応を促進する。...