前立腺癌予防試験参加者の長期生存の詳細

米国国立がん研究所(NCI)ニュースノート

原文掲載日 :2013年8月14日

NCI(米国国立癌研究所)が支援した前立腺癌予防試験(PCPT)において、10年前の最初の知見は、フィナステリドは前立腺癌リスクを有意に低下させるが、矛盾したことに、前立腺癌を発症した人の中ではフィナステリドが高悪性度前立腺癌のリスクの増加と関係あることを示した。NEJM誌の2013年8月15日号で発表された、最長18年間の臨床試験参加者へのフォローアップを基にした新たな知見は、フィナステリドを投与された男性の生存期間は、投与されていない男性の生存期間と同等であり、ひきつづき前立腺癌のリスクは減少している。ランダム化されたほぼ1万9千人の適格性をもつ男性のうち、フィナステリド群の10.5%および、プラセボ群の14.9%が前立腺癌と診断され、リスクは約30%減少した。前立腺癌と診断された男性については、診断から10年生存率は全ての群(78%)、低悪性度前立腺癌群(82%)、高悪性度前立腺癌群(73%)で同等であり、この試験でのフィナステリド群の男性で高悪性度前立腺癌がわずかに多いということが死亡率の増加を意味しないというのは安心である。

2003年の最初の解析を基にした前回の研究は、高悪性度前立腺癌の増加は前立腺縮小およびより高悪性度の前立腺癌を検出する感受性の増加のせいである可能性があると既に示唆している。事実、PCPT試験は、高悪性度前立腺癌の問題に取り組むために特別に計画されたものではない。2011年以降、フィナステリドのような薬剤には、高悪性度前立腺癌リスク増加の可能性についての警告文をつける必要があり、前立腺癌予防では認可されていない。特に、フィナステリドを投与された男性に高悪性度前立腺癌が増加し、死者数の増加に繋がるかもしれないという懸念があった。この新たな分析は、部分的にせよ、このような懸念が正しいかどうかを理解するために行われた。

PCPT試験についての最新のQ&Aは、こちらのサイト(英文)になる。

原文

翻訳担当者  岩崎多歌子

監修 榎本 裕(泌尿器科/東京大学医学部付属病院)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

前立腺がんに関連する記事

前立腺がんにおけるテストステロンの逆説的効果を解明の画像

前立腺がんにおけるテストステロンの逆説的効果を解明

デューク大学医学部デューク大学医療センター最近、前立腺がんの治療において矛盾した事実が明らかになった: テストステロンの産生を阻害することで、病気の初期段階では腫瘍の成長が止ま...
一部の生化学的再発前立腺がんに、精密医薬品オラパリブがホルモン療法なしで有効な可能性の画像

一部の生化学的再発前立腺がんに、精密医薬品オラパリブがホルモン療法なしで有効な可能性

ジョンズホプキンス大学抗がん剤オラパリブ(販売名:リムパーザ)は、BRCA2などの遺伝子に変異を有する患者に対し、男性ホルモン療法を併用せずに、生化学的再発をきたした前立腺がんの治療に...
転移性前立腺がん試験、アンドロゲン受容体経路阻害薬の変更よりも放射性リガンド療法を支持の画像

転移性前立腺がん試験、アンドロゲン受容体経路阻害薬の変更よりも放射性リガンド療法を支持

第3相PSMAforeの追跡研究研究概要表題タキサン未投与の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者における[177Lu]Lu-PSMA-617の有効性とARPI変更との比較:ラ...
転移性前立腺がんに生物学的製剤SV-102とデバイスの併用免疫療法SYNC-Tは有望の画像

転移性前立腺がんに生物学的製剤SV-102とデバイスの併用免疫療法SYNC-Tは有望

低温プローブを用いる治験的治療では、前立腺がん細胞の一部を死滅させ、腫瘍特異的ネオアンチゲン(※がん細胞特有の遺伝子変異などによって新たに生じた抗原)を放出させ免疫反応を促進する。...