遺伝的リスク予測モデル構築のための大規模研究の将来性

NCIニュースノート

NCIの研究者らは、前立腺癌のような高頻度疾患の遺伝的リスク予測を評価する新たなパラダイムを構築した。この遺伝リスク予測概念は、多遺伝子解析(一塩基多型(SNPs)の共通DNA配列の分類調査)を基にしており、ひとつひとつのSNPsは、全ての疾病リスクに対する貢献は非常に少ないが、総合的に分類化した場合の影響は大きい。米国国立癌研究所(NCI)、癌疫学・遺伝学部門生物統計学課のNilanjan Chatterjee博士と同僚らは、一般集団内において、個人の遺伝的疾患のリスクスコアの計算が可能な多因子モデルを開発するために、全ゲノム関連研究(GWAS)利用の可能性を評価した。彼らの研究結果は2013年3月3日付けのNature Genetics誌に掲載された。

研究者らは2型糖尿病から癌までにわたり、数千のSNPsが及ぼすであろう一般的な健康への影響について概算した。このプロジェクトは、将来GWASサンプル数が増加するにつれて、リスクモデルの予測精度がどのように向上するかを示す。例えば、(現在使用できる最大のGWASを基にして)前立腺癌の多遺伝子モデルでは、集団の7%が、前立腺癌リスクが平均的リスクの男性の2倍高いリスクグループに分類されると計算される。研究者らは、将来GWASサンプル数を3倍にしたなら、重症度分類モデルが改良され、集団の12%が高リスクグループに分類されると計算した。もし、多因子モデルが非常に大きなサンプル数を用いて作成されたなら、集団中の多くの高リスクの個人を特定することに役立つかもしれない。しかし、著者らは、早期発見と予防策は遺伝的に高リスクの個人だけを対象にしたのでは不十分だと注記した。この分析では、これらのモデルの有用性を上げるには、家族の病歴を含めた他のリスク要素についての情報が必要だと示唆している。

翻訳担当者 岩崎多歌子

監修 高山吉永(分子生物学/北里大学医学部分子遺伝学)

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