ロボット支援前立腺手術は外科医の経験量が重要

キャンサーコンサルタンツ

泌尿器癌に関するシンポジウム(2011 Genitourinary Cancers Symposium)で発表された研究によると、外科医がロボット支援による前立腺癌手術に熟達するには、1,000を優に超える手術症例を経験する必要があるようだ。

早期の前立腺癌の治療には、外科手術、放射線治療、監視療法(AS−癌が悪化の徴候を呈するまで治療は行わず注意深い経過観察のみ)といった選択肢がある。

根治的前立腺切除術では、前立腺全体とその周辺組織を外科的に切除する。切除の方法は、従来の観血手術か、腹腔鏡下手術(低侵襲手術とも呼ばれる)となる。前者では1か所が長く切開され、後者では数か所が小さく切開される。腹腔鏡下手術中、外科医は、切開個所のひとつから小型ビデオカメラを挿入し、腹部の内部を見る。ロボット支援腹腔鏡下手術は、腹腔鏡下手術のいわば変種で、外科医は手術台の近くに置かれたコンソールに座り、手術器具を装備したロボットの腕を操作することによって施術する。

これまでの研究では、外科医がロボット支援前立腺癌手術を安全に行うようになるまでに、さほど時間はかからないとされてきた。しかしながら、可能な範囲内で癌の最良の予後を得るためには、より多くの経験を積む必要があるようだ。

外科医がロボット支援前立腺手術を完全にマスターするために経験すべき手術症例数を評価するため、研究者たちは、3人の外科医のいずれか1人による手術を受けた3,794人の患者を調査した。

この研究では、切除断端陽性率を主な治療成績とした。

切除断端陽性とは、手術によって切除された組織の断端に癌細胞が含まれていたことを意味する。つまり、癌が完全には除去されなかった可能性を示している。

切除断端陽性率は外科医が経験を積むにつれて低くなった。切除断端陽性率が最低レベル(10%未満)になったのは、外科医がロボット支援前立腺手術を1,600例以上も重ねた後だった。

予め用意された声明文で、この研究に携わった研究者の1人は次のように述べている。「年間に数百件の手術を行っている外科医ですら、実現しうる最良の手術結果を達成できるようになるまでには長い時間がかかります。我々の研究結果は、ロボット支援前立腺手術が、癌の高い治癒率と低い断端陽性率を可能にするものではあるものの、かなりの経験を要する手術であることを示しています。」

ロボット支援前立腺癌手術を検討している患者には、この手術方法に豊富な経験を持つ外科医を探すことを勧めたい。

参考文献:

Sooriakumaran P, John M, Leung R et al. A multi-institutional study of 3,794 patients undergoing robotic-assisted laparoscopic radical prostatectomy to determine the surgical learning curve for positive margins and operating time. Presented at the fourth annual Genitourinary Cancers Symposium; February 17-19, 2011; Orlando, FL. Abstract 102.


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翻訳担当者 村上 智子

監修 北村 裕太(農学/医学)

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