2012/12/11号◆FDA情報「FDAが進行前立腺癌治療薬アビラテロンの適応を拡大承認」「FDAが稀な甲状腺癌の治療薬カボザンチニブを承認」
NCI Cancer Bulletin2012年12月11日号(Volume 9 / Number 24)
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◇◆◇ FDA情報 ◇◆◇
FDAが進行前立腺癌治療薬アビラテロンの適応を拡大承認
転移を伴う去勢抵抗性前立腺癌の患者において、化学療法前に酢酸アビラテロン[abiraterone acetate](商品名:Zytiga)による治療が可能となった。米国食品医薬品局(FDA)は、12月10日、アビラテロンの適応を拡大承認した。
FDAは当初、2011年4月、ドセタキセルによる化学療法後に進行がみられた前立腺癌患者への使用に対しアビラテロンを承認した。アビラテロンはテストステロンの合成を抑制する経口の錠剤である。
テストステロンは前立腺癌の増殖を促進することから、前立腺癌の進行を遅らせるために、テストステロンの合成を抑制あるいはテストステロンの作用を遮断する薬剤や手術が用いられている。しかし、ほとんどの前立腺癌は、最終的にこれらの治療に対し抵抗性を示すようになる。そういった去勢抵抗性前立腺癌は、たとえテストステロン値が極めて低くても増殖し続ける。アビラテロンは、精巣、副腎、そして前立腺癌の腫瘍組織自体でアンドロゲンが合成されるのを阻害することにより、抵抗性を示す腫瘍を治療するよう設計されている。
適応拡大に関するアビラテロンの安全性と有効性は、化学療法を受けていない進行性の去勢抵抗性前立腺癌患者1,088人を対象とした臨床試験により確立された。患者は、アビラテロンまたはプラセボのいずれかの投与を受けた(いずれもステロイドであるプレドニゾンとの併用)。
試験は、患者が死亡するまでの期間(全生存期間)と、画像検査により腫瘍増殖が認められなかった期間(画像診断による無増悪生存期間:rPFS)を測定するように計画された。
この試験の中間結果は、New England Journal of Medicine誌12月10日号で発表された。FDAのニュースリリースに引用された最新解析によると、アビラテロン投与群の全生存中央値が35.3カ月であったのに対し、プラセボ投与群では30.1カ月であった。未発表の最新結果でも、アビラテロンがrPFSを延長することが示された。プラセボ群のrPFSの中央値は8.3カ月であり、まだアビラテロンのrPFS中央値に達していない。
報告されたうち最も頻度の高かった副作用には、疲労、関節の腫脹または違和感、体液貯留による腫脹、ほてり、下痢、嘔吐、咳、高血圧、息切れ、尿路感染症、挫傷などがあった。
最も多くみられた検査値異常は、赤血球数減少、アルカリホスタファーゼ値の上昇(他の重篤な医学的問題の徴候である可能性がある)、血中脂肪酸、血糖値、肝酵素値の上昇や、血中のリンパ球、リン酸値、カリウム値の減少などであった。
FDAが稀な甲状腺癌の治療薬カボザンチニブを承認
FDAは、体の他の部位に転移した甲状腺髄様癌の治療薬としてカボザンチニブ[cabozantinib](商品名:Cometriq)を承認した。
甲状腺髄様癌は稀な種類の甲状腺癌である。この癌は、血中のカルシウム濃度を正常に維持するカルシトニンというホルモンを産生する甲状腺細胞から発生する。カボザンチニブはキナーゼ阻害薬で、髄様癌細胞の発生や増殖に関与する異常なキナーゼタンパク質を遮断する。
「今回と2011年4月の(バンデタニブの)承認以前は、この稀で治療が難しい癌に罹った患者にとっての治療法の選択肢は限られていました」とFDA医薬品評価研究センター血液腫瘍製品室長であるDr. Richard Pazdur氏はニュースリリースで述べた。
カボザンチニブの安全性と有効性は、甲状腺髄様癌患者330人を対象とした臨床試験によって確立された。カボザンチニブで治療を受けた患者は、癌の進行なく生存期間が延長され、一部の患者では腫瘍の縮小が認められた。
カボザンチニブが投与された患者の無増悪生存期間の中央値は11.2カ月だったのに対し、プラセボが投与された患者の中央値は4カ月であった。 カボザンチニブ治療群のうち27%に腫瘍の縮小がみられ、中央値約15カ月の間その反応が継続したのに対し、プラセボ投与群ではどの患者においても腫瘍の縮小はみられなかった。カボザンチニブによる治療では患者の生存期間延長は認められなかった。
本薬剤は、使用により一部の患者で大腸に重篤かつ致死的な出血、穿孔、瘻孔が生じたことについて、枠組み警告を表示し、患者および医療従事者に対して注意喚起を行うことを条件に承認された。
最も頻度の高かった副作用には、下痢、口腔の炎症あるいは痛み、手足症候群、悪心、疲労、高血圧の発症あるいは悪化、腹痛、便秘などがあった。最も多くみられた検査値異常は、肝酵素の上昇、カルシウム値およびリン値の低下、白血球および血小板の減少などであった。
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佐々木亜衣子 訳
榎本 裕 (泌尿器科/東京大学医学部付属病院) 監修
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