FDAが広く使用されている前立腺癌治療薬GnRHアゴニストの安全性評価を実施

FOR IMMEDIATE RELEASE: 2010年5月3日
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FDAが広く使用されている前立腺癌治療薬GnRHアゴニストの安全性評価を実施

GnRHアゴニストによる治療を受けた男性で糖尿病や特定の心血管疾患のリスクが上昇すると中間解析で示唆された。

性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニストは主に前立腺癌患者の治療に使用されるタイプの薬剤であるが、米国食品医薬品局が行っている試験の中間解析の結果、これらの薬剤について、投与された男性で糖尿病、心臓発作、卒中および突然死のリスクがわずかに上昇していることとの関連性が明らかになった。

この解析に基づくFDAの勧告は以下の通りである:

• 医療関係者は、前立腺癌患者の治療を決定する際にこれらの潜在的リスクを認識しGnRHアゴニストのリスクとベネフィットを入念に検討するべきである。

• GnRHアゴニストを投与されている患者において糖尿病や心血管疾患の発症がないか観察すべきである。

• 喫煙、血圧、コレステロール、血糖値および体重の増加といった心血管リスク要因は現在の標準的治療に基づき管理すべきである。

• 患者は医療関係者の指示なしにGnRH治療を中止すべきでない。

今回FDAは、前立腺癌治療にいずれかのGnRHアゴニストが投与されている患者で、糖尿病や心疾患のリスクが上昇するかどうかについて結論は出していない。

「前立腺癌治療に対する解析は継続中でデータにはいくらか制約があるが、FDAとしては重篤な副作用のリスクが高まる可能性があることを患者や医療関係者に伝えることが重要であると考えている」とFDA医薬品評価・研究センターの抗腫瘍薬製品室所長Robert Justice医師は述べた。

GnRH系の薬剤はEligard、Lupron、Synarel、Trelstar、Vantas、ViadurおよびZoladexの商品名で販売されており後発医薬品もある。

前立腺は男性の生殖器官の一部である。前立腺癌は米国で皮膚癌に続き2番目に多い癌で通常年配の男性に発症する。疾病管理センター(CDC)によると今年は203,415人が新たに前立腺癌と診断されそのうち28,372人が死亡するであろうと推定されている。

GnRHアゴニストはテストステロン(前立腺癌の増殖に関連するホルモン)産生を抑制する薬剤である。このタイプの治療をアンドロゲン除去療法またはADTと呼ぶ。テストステロン抑制は前立腺の癌の収縮または成長を遅らせる作用があることが示されている。

またGnRHアゴニストの中には子宮内膜症による痛みの管理、子宮摘出手術に先立つ子宮筋腫に伴う貧血の改善、またあるケースでは進行乳癌の緩和治療などに使用されるものもある。これらの薬剤は乳癌治療の女性を除き1年を超えて投与してはならない。GnRHアゴニストが投与されている女性の糖尿病や心疾患のリスクを評価した既知の比較試験はない。

GnRHアゴニストの中には中枢性思春期早発症の治療で小児に投与されるものもある。GnRHアゴニストが投与されている小児の糖尿病や心疾患のリスクを評価した既知の試験はない。

Eligardはニュージャージー州BridgewaterのSanofi-Aventis社、Lupronはイリノイ州Abbot ParkのAbbot Laboratories社、Synarelはニュヨーク市のファイザー、Trelstarはカリフォルニア州CronaのWatson Pharmaceuticals社、Vantasはペンシルバニア州Chadds FordのEndo Pharmaceuticals社、Vidurはニュージャージー州Wayneのバイエル薬品、Zoladexはデラウェア州Wilimingtonのアストラゼネカがそれぞれ販売している。

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西川 百代 訳
後藤 悌(呼吸器内科医/東京大学大学院医学系研究科)監修 
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原文


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