SELECT試験でビタミンEサプリメントが前立腺癌の発症率上昇が判明

米国補完代替療法センター(NCCAM)

ビタミンEサプリメントの摂取が、健康な男性における前立腺癌の発症率を有意に上昇させることがJAMA誌に報告された。これは、50歳以上の比較的健康な男性35,000人を対象としたSELECT試験(Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial)の最新の解析結果によるものである。SELECT試験は、米国国立癌研究所(NCI)、米国国立補完代替医療センター(NCCAM)、その他米国国立衛生研究所(NIH)に属する複数機関の資金提供を受けて実施されている。

SELECT試験では、参加者はセレニウム(セレン)(200μg/日)群、ビタミンE(400国際単位[IU]/日)群、セレニウム(セレン)+ビタミンE群、プラセボ群の4グループのいずれかに無作為に割り付けられた。初回の試験報告で述べられたのは、セレニウム(セレン)およびビタミンEを単独で摂取、または併用しても、前立腺癌の予防にはならないということであった。この報告により、参加者は2008年にサプリメントの摂取を中止するよう指示されている。また同時に、ビタミンEを摂取した男性では前立腺癌の発症率がわずかに増加していることも報告されていた。しかし、その増加は統計的に有意なものではなく、偶然出た結果にすぎない可能性が高いとされた。2008年以降、研究者らは試験参加者の健康状態を観察し続けてきており、今回の最新結果はその観察結果に基づくものである。

追跡期間7年(中央値)の時点で、ビタミンEサプリメントを単独摂取した男性のほうが、プラセボを摂取した男性に比べて、前立腺癌の発症率が17%増加していることがわかった。ビタミンEとセレニウム(セレン)を併用した場合には、発症率の増加は認められなかった。

研究者らは、得られたデータからは、ビタミンE群で前立腺癌の発症率が増加したことの生物学上の説明はつかないが、より長い観察期間を経たことで、その増加は明らかになったと述べている。サプリメントの影響は、介入中止後も続く可能性があるとされる。また、消費者は、健康上の利益について臨床試験に裏付けられた確固たる根拠がない場合、栄養機能表示に対して懐疑的になる必要性があるとも述べている。

参考文献

Klein EA, Thompson IM Jr, Tangen CM, et al. Vitamin E and the risk of prostate cancer: the Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial (SELECT). Journal of the American Medical Association. 2011; 306(14):1549–1556.

追加参考文献

Prostate Cancer  (NCI)

Antioxidants and Cancer Prevention  (NCI)

Antioxidants Information

Cancer Prevention and Treatment Information

Vitamins and Minerals Information

翻訳担当者 濱田 希

監修 大野 智(腫瘍免疫/早稲田大学・東京女子医科大学)

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