前立腺癌治療が必要になるまでの期間を延長する可能性がある薬剤デュタステリド

キャンサーコンサルタンツ

初期段階の前立腺癌に対する監視療法(active surveillance)を選択した男性患者において、Avodart(dutasteride、デュタステリド)は癌の進行を遅延させ、癌治療が必要になるまでの期間を延長するかもしれない。これらの結果がLancet誌で発表された。

初期段階の前立腺癌の治療としては、外科手術、放射線治療、監視療法(患者の状態を綿密に観察するが、癌の悪化の兆候がみられるまで治療を行わない方法)が含まれる。すべての前立腺癌が生命を脅かすものではないので、監視療法により、外科手術や放射線療法に伴う副作用を回避(または、少なくとも遅延)できる患者もいる。

Avodartは5-α還元酵素阻害剤である。本薬剤により、ジヒドロテストステロン(dihydrotestosterone (DHT))として知られている活性型テストステロンの前立腺への曝露が抑制される。Avodartは現在、良性前立腺過形成(benign prostatic hyperplasia (BPH))の治療に用いられている。しかし、前立腺癌の治療または予防を適応とした認可はされていない。

これまでの研究により、前立腺癌のリスクが高い男性患者において、5-α還元酵素阻害剤が前立腺癌の発生頻度を減少させ得ることが報告されている。しかし、これらの薬剤が、悪性度が高い(より重篤な)前立腺癌のリスクをわずかに増加させるという懸念も少なからず存在する。この疑問はまだ解明されていない。

初期段階の前立腺癌に対して監視療法を選択した男性患者におけるAvodartの効果を研究する目的で、グリーソンスコアが5〜6の小さな前立腺癌を有する患者302人を対象に調査を行なった。患者を3年間のAvodart投与群あるいはプラセボ投与群に割り付けた。すべての患者は試験の中間点と終了時、ときには必要に応じて前立腺の生検を受けた。

関心のある主要評価項目は癌の増悪であった。本研究ために、癌の増悪の定義を癌の進行あるいは癌治療開始の決定とした。

  • Avodart治療を受けた男性患者は癌の進行を経験する可能性が低かった。すなわち、癌の進行はAvodart群では患者の38%、プラセボ群では48%に生じた。
  • 性機能への副作用または乳房肥大がAvodart群では患者の24%、プラセボ群では15%で報告された。心血管系副作用の頻度は二つの群間で同等(5%)であった。

これらの結果により、初期段階の前立腺癌に対し監視療法を受けている男性患者において、Avodartが前立腺癌の成長を遅らせる可能性が示唆された。しかしながら、本薬剤の前立腺癌への適応は米国食品医薬品局にいまだ承認されていない。

参考文献:

Fleshner NE, Lucia MS, Egerdie B et al. Dutasteride in localized prostate cancer management: the REDEEM randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. Early online publication January 24, 2012.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 下野龍太郎

監修 野長瀬祥兼(工学/医学)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

前立腺がんに関連する記事

前立腺がんにおけるテストステロンの逆説的効果を解明する研究結果の画像

前立腺がんにおけるテストステロンの逆説的効果を解明する研究結果

デューク大学医学部デューク大学医療センター最近、前立腺がんの治療において矛盾した事実が明らかになった: テストステロンの産生を阻害することで、病気の初期段階では腫瘍の成長が止まり、一方...
一部の生化学的再発前立腺がんに、精密医薬品オラパリブがホルモン療法なしで有効な可能性の画像

一部の生化学的再発前立腺がんに、精密医薬品オラパリブがホルモン療法なしで有効な可能性

ジョンズホプキンス大学抗がん剤オラパリブ(販売名:リムパーザ)は、BRCA2などの遺伝子に変異を有する患者に対し、男性ホルモン療法を併用せずに、生化学的再発をきたした前立腺がんの治療に...
転移性前立腺がん試験、アンドロゲン受容体経路阻害薬の変更よりも放射性リガンド療法を支持の画像

転移性前立腺がん試験、アンドロゲン受容体経路阻害薬の変更よりも放射性リガンド療法を支持

第3相PSMAforeの追跡研究研究概要表題タキサン未投与の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者における[177Lu]Lu-PSMA-617の有効性とARPI変更との比較:ラ...
転移性前立腺がんに生物学的製剤SV-102とデバイスの併用免疫療法SYNC-Tは有望の画像

転移性前立腺がんに生物学的製剤SV-102とデバイスの併用免疫療法SYNC-Tは有望

低温プローブを用いる治験的治療では、前立腺がん細胞の一部を死滅させ、腫瘍特異的ネオアンチゲン(※がん細胞特有の遺伝子変異などによって新たに生じた抗原)を放出させ免疫反応を促進する。...