前立腺癌の凍結外科手術は放射線治療と同等であるとランダム化試験で示唆される

キャンサーコンサルタンツ
2007年6月

カルガリーの研究者らの報告によれば、ステージ1~3の前立腺癌の凍結外科手術による転帰は、放射線治療と同等の転帰が得られた。このランダム化試験の詳細については2007年米国泌尿器科学会総会で発表された。

凍結外科療法が最初に前立腺癌の治療に用いられたのは、70年代初期であったが、その潜在的なメリットが初めて明らかになったのは、1993年に超音波ガイド下経皮的凍結外科療法の結果が発表されたときであった。器具や手技の変遷にともない、凍結外科手術の成績は腫瘍コントロールと合併症発生率の両方で改善された。超音波ガイド下で冷凍プローブを経皮・経会陰的に挿入することにより、リアルタイムでの凍結モニタリングが可能になった。危険部位の温度をモニタリングし、生理食塩水を注入して直腸と前立腺を分離し、液体窒素ではなくアルゴンガスを使用した器具により、結果に改善がみられ合併症発生率が低下した。このような手技により、密封小線源挿入療法や三次元原体照射法を使用した場合と同様の転帰が得られると報告された。凍結外科手術のメリットには、合併症の率を上昇させずに再治療が可能であることや、放射線療法後のサルベージ治療として許容しうる結果と合併症率が得られることなどがある。「神経温存」凍結外科療法も可能であるかもしれない。

現在までのところ、限局性前立腺癌治療における凍結外科療法と他の治療モダリティーを比較したランダム化試験の報告はない。事実上、本試験が限局性前立腺癌に対する異なる2つの治療法を比較した初めてのランダム化試験であろう。たとえば、前立腺全摘出術と放射線療法その他のいかなる治療法とを比較したランダム化試験も存在しない。実際には本試験は244例の登録後、参加者の登録がなかったため中断された。参加を求められた症例のうちわずか3分の1が試験に参加したにすぎなかった。

本試験はステージ1~3の前立腺癌244例を含み、放射線外照射療法または凍結外科療法にランダムに割り付けた。本試験の経過観察期間の中央値は73ヶ月であった。主な所見を以下の表に記す。

放射線療法

凍結外科手術

前立腺癌による死亡

4

5

48ヶ月無病生存率

74.6%

81%

PSA(前立腺特異抗原)再発

26%

20%

36ヶ月生検で陽性

26.3%

6.6%

本論文著者の結論によれば、限局性前立腺癌のランダム化試験実施は可能ではあるが難しい。また凍結外科手術は限局性前立腺癌の治療において、放射線療法と有効性は同等である、とも結論づけている。

コメント

限局性前立腺癌治療について本試験以前にランダム化試験が実施されたことはなかった。その理由は主に、医師が職業上先入観を持っており、それが患者に伝わっていたことにある。こうした状況が続き、今後も比較試験は非ランダム化が通常となるのは明らかであろう。しかしながら凍結外科療法は、限局性前立腺癌に対してますます受け入れられていく治療法と思われる。

参考文献

Donnelly BJ, Saliken JC, Brasher P, et al. Randomized controlled trial comparing external beam radiation and cryoablation in localized prostate cancer. Proceedings of the American Urological Association of 2007; Abstract #1141. http://www.abstracts2view.com/aua/authorindex.php

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翻訳担当者 Chachan

監修 榎本 裕(泌尿器科医)

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