デノスマブにより前立腺癌患者の骨密度が改善

キャンサーコンサルタンツ
2008年7月

デノスマブ(denosumab)はアンドロゲン抑制療法(ADT)を受けている非転移性前立腺癌患者の骨密度を改善させ、脊椎骨折のリスクを減少させたと、アムジェン社は報告した。

ADTを受け続けている患者は、治療開始後24ヶ月以内に骨密度が著しく減少する。骨量が減少すると、骨粗鬆症や骨折、疼痛、入院、不動のリスクが高まり、その結果、医療費が増加する。ADTによる骨量の減少は、早期のビスフォスフォネート治療で軽減されるというエビデンスがある。だが、非転移性疾患男性患者に対する診療の明確なガイドラインは未だに確立されていない。(転移性疾患男性患者にはビスフォスフォネートが推奨されている)

デノスマブは完全ヒトモノクロナール抗体で、骨リモデリングにおける骨吸収の重要なメディエーターであるNF-κB活性化受容体リガンド(RANKL)を特異的に標的としたものである。デノスマブは骨粗鬆症、治療誘発性骨量減少、リューマチ性関節炎、骨転移、多発性骨髄腫など様々な疾病で試験中である。

2006年2月23日発行の the New England Journal of Medicine誌に掲載された過去の研究では、骨量の少ない閉経後の女性にデノスマブを3ヶ月あるいは6ヶ月ごとに12ヶ月に渡って皮下投与すると、骨密度は増加し、骨吸収が減少した。この試験に参加した412例の女性をデノスマブ投与群、アレンドロネート(フォサマックス)投与群、あるいはプラセボ投与群に無作為に割り付けた。

デノスマブ群は、骨密度の増加に関しては少なくともアレンドロネート群と同様の効果が観察され、いくつかの測定ではアンドロネート群より優れた効果がみられた。乳癌骨転移が見られる女性患者を対象にしたデノスマブの無作為化第2相試験では、骨代謝の抑制および骨関連事象の減少に関して、デノスマブの皮下投与は静注ビスフォスフォネートと同程度の効果があった。本試験に参加した患者(n=255)を無作為に割り付け、デノスマブの投与量を5段階に分けたうちの一つ、あるいは静注でビスフォスフォネートを投与した。デノスマブはアロマターゼ阻害剤で長期に渡って治療を受けている非転移性乳癌患者の骨密度を着実に増加させると米国およびカナダの研究者らは報告し、これらの結果は、2007年サンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で発表された。

ADTを受けている前立腺癌患者におけるデノスマブの効果を評価するために、1400例以上の非転移性前立腺癌患者を対象とした第3相臨床試験を実施した。患者にはADTに加え、デノスマブあるいはプラセボを投与した。

●プラセボの投与を受けていた患者と比較すると、デノスマブの投与を受けていた患者の骨密度は腰椎およびその他骨部位で有意に大幅な増加となった。

●デノスマブ投与群の患者は、プラセボ投与群より脊椎骨折が有意に少なかった。

●プラセボ投与群とデノスマブ投与群間の有害事象発生率はほぼ類似した結果であった。

これらの結果は、デノスマブがADTを受けた前立腺癌患者の骨密度を改善させ、骨折リスクを低下させるための新たな治療選択となる可能性を示唆している。

コメント:
デノスマブは、前立腺癌など様々な疾病による骨量減少の治療と予防における大きな進歩を示すものと考えられる。

参照文献:
1 Amgen Press Release. Amgen announces positive top-line results for denosumab treatment of bone loss in men with non-metastatic prostate cancer undergoing androgen deprivation therapy. Available at 1174433. Accessed July 14, 2008.
2 McClung MR, Lewiecki EM, Cohen SB, et al. Denosumab in postmenopausal women with low bone mineral density. New England Journal of Medicine. 2006;354:821-831.
3 Lipton A, Steiger GG, Gigueroa J, et al. Randomized active-controlled phase II study of denosumab efficacy and safety in patients with breast cancer-related bone metastasis. Journal of Clinical Oncology. 2007;25:4431-4437.
4 Ellis G, Bone HG, Chlebowski R et al. A phase 3 study of the effect of denosumab therapy on bone mineral density in women receiving aromatase inhibitors for non metatastatic breast cancer. Presented at the 30th Annual San Antonio Breast Cancer Symposium. San Antonio, TX, December 13-16, 2007. Abstract #47.


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翻訳担当者 Yuko Watanabe

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

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