行動療法は、前立腺全摘除術後の失禁を軽減する

キャンサーコンサルタンツ

骨盤底筋体操、膀胱訓練法、および摂取水分の管理による行動療法は、早期前立腺癌の前立腺全摘除術後に生じる尿失禁を(根治するのはまれだが)軽減する。この調査結果は、Journal of the American Medical Association誌で発表された。

早期前立腺癌の男性には、手術(前立腺全摘除術)、放射線療法、あるいは監視療法(active surveillance)による治療の選択肢がある。監視療法では、患者を綿密に観察するが前立腺癌が悪化するまで治療は行わない。治療法の選択は難しいことがある。というのは、低リスク前立腺癌の男性の場合、早期治療が、疾患の進行が認められるまで治療を延期するより延命効果が高いという明確な証拠がないためである。

前立腺全摘除術を受けた男性は、尿失禁(尿漏れ)や勃起障害などの副作用を経験する可能性がある。こうした副作用は、生活の質に深刻な影響を及ぼすと考えられる。

失禁の頻度を減らす目的で、研究者らは、早期前立腺癌の前立腺全摘徐術を受け、1年以上尿失禁を経験している208人の男性を対象に試験を実施した[1]。 患者は3つの群のいずれかに割り当てられた。

1. 骨盤底筋体操、膀胱訓練法(尿漏れをきたす特定の行動を起こす前とその最中に骨盤底筋肉を収縮するなど)からなる行動療法、および摂取水分の管理に関する指導
2. バイオフィードバックを併用した行動療法と骨盤底電気刺激法
3. 遅延治療(比較対照群)

失禁の週平均発現数は、行動療法を受けた男性で28回から13回へ(55%の低下)、バイオフィードバック併用の行動療法と電気刺激法を受けた男性で26回から12回へ(51%の低下)、比較対照群の男性で25回から21回へ(24%の低下)と減少した。

8週間の治療終了後、失禁を完全に克服した男性は、行動療法群で16%、行動療法+電気刺激群で17%、比較対照群で6%であった。

今回の結果は、早期前立腺癌に対する前立腺全摘除術を受けた男性において、行動療法が尿失禁の頻度を減らす可能性を示唆している。バイオフィードバックと骨盤底電気刺激法を併用しても、行動療法の結果が改善されないと考えられる。

付随論説は、低リスク前立腺癌の男性に監視療法を一層適用することが、早期前立腺癌の男性における失禁を予防する最も効果的な方法だと指摘している[2]。

参考文献:

[1] Goode PS, Burgio KL, Johnson TM et al. Behavioral therapy with or without biofeedback and pelvic floor electrical stimulation for persistent prostatectomy incontinence: a randomized controlled trial. JAMA. 2011:305:151-159.
[2] Penson DF. Treatment for prostatectomy incontinence: is this as good as it gets? JAMA. 2011;305:197-198.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容は555Cancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 マクドナルド 晋子

監修 榎本 裕 (泌尿器科/東京大学医学部付属病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

前立腺がんに関連する記事

前立腺がんにおけるテストステロンの逆説的効果を解明の画像

前立腺がんにおけるテストステロンの逆説的効果を解明

デューク大学医学部デューク大学医療センター最近、前立腺がんの治療において矛盾した事実が明らかになった: テストステロンの産生を阻害することで、病気の初期段階では腫瘍の成長が止ま...
一部の生化学的再発前立腺がんに、精密医薬品オラパリブがホルモン療法なしで有効な可能性の画像

一部の生化学的再発前立腺がんに、精密医薬品オラパリブがホルモン療法なしで有効な可能性

ジョンズホプキンス大学抗がん剤オラパリブ(販売名:リムパーザ)は、BRCA2などの遺伝子に変異を有する患者に対し、男性ホルモン療法を併用せずに、生化学的再発をきたした前立腺がんの治療に...
転移性前立腺がん試験、アンドロゲン受容体経路阻害薬の変更よりも放射性リガンド療法を支持の画像

転移性前立腺がん試験、アンドロゲン受容体経路阻害薬の変更よりも放射性リガンド療法を支持

第3相PSMAforeの追跡研究研究概要表題タキサン未投与の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者における[177Lu]Lu-PSMA-617の有効性とARPI変更との比較:ラ...
転移性前立腺がんに生物学的製剤SV-102とデバイスの併用免疫療法SYNC-Tは有望の画像

転移性前立腺がんに生物学的製剤SV-102とデバイスの併用免疫療法SYNC-Tは有望

低温プローブを用いる治験的治療では、前立腺がん細胞の一部を死滅させ、腫瘍特異的ネオアンチゲン(※がん細胞特有の遺伝子変異などによって新たに生じた抗原)を放出させ免疫反応を促進する。...