転移病変への放射線+ホルモン療法は、進行前立腺がんの無増悪生存を改善
MDアンダーソンがんセンター
転移病変を対象とした放射線療法を間欠的なホルモン療法に追加することより、オリゴ転移前立腺がん患者の無増悪生存期間(PFS)が改善することが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究で明らかになった。多施設共同研究EXTEND試験の結果は、本日JAMA Oncology誌に掲載された(2022年米国放射線腫瘍学会(ASTRO)年次総会に以前、発表されている)。
追跡調査期間中央値22.1カ月の時点で、併用療法を受けた患者のPFS中央値は未到達であり、ホルモン療法のみを受けた患者のPFS中央値15.8カ月よりも有意に改善したことを示唆している。本併用療法は忍容性が高く、患者がホルモン療法を中断しても進行しない期間を延長することができ、本治療法が進行前立腺がんの患者のQOLを改善する可能性を示唆している。
「放射線技術は、前立腺がんの患者に対して、転移巣を直接狙い、副作用を減らし、より良い治療を提供するよう進化してきた」と、研究代表者で放射線腫瘍学准教授のChad Tang医師は述べている。「この研究は、これらの新しい放射線技術とホルモン療法を組み合わせて治療成績を向上させることの利点について、大いに有用なデータを提供している」。
転移指向治療(MDT)は、手術や放射線照射によって転移病巣の局所的な治療を直接行い、その場所のがん細胞をすべて死滅させることを目的としている。転移性前立腺がんは通常全身療法で治療され、その中で最も一般的なのは継続的なホルモン療法である。近年、オリゴ転移を有する患者の治療にMDTを使用することが増えている。
画像で確認される転移が5個以下と定義されるオリゴ転移がんは、局所転移と広範囲転移の間の過渡的な状態を表している。限局性の局所療法による効果を示す最初の研究は、MDアンダーソンで実施され、2016年に発表された。それ以来、この領域では多くの研究が行われている。
しかし、早期からのホルモン療法と放射線治療の相乗効果を支持するデータがあるにもかかわらず、オリゴ転移前立腺がん患者を対象にこの併用療法を検証するランダム化比較試験は行われていなかった。
EXTEND試験は、多発性固形がんを対象とした第2相ランダム化バスケット試験で、MDTの追加によりオリゴ転移がん患者の無増悪生存期間が改善されるかどうかを検証している。無増悪生存期間は、独立に評価され、追跡期間中央値22.1カ月後に発生した41の進行イベントで報告されるよう事前に規定されていた。
前立腺がんコホートでは、87人の患者が放射線と間欠的なホルモン療法を受けるか、ホルモン療法のみを受けるかのいずれかに無作為に割り付けられた。ほとんどの参加者(72人)は白人で、黒人患者7人、ヒスパニック系患者6人、その他の患者2人が含まれていた。
ホルモン療法は、黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト/アンタゴニストと第2世代のアンドロゲン受容体標的薬の併用または非併用であった。MDTの利点は、新世代アンドロゲン遮断薬の投与の有無にかかわらず、患者全体で維持された。登録から6カ月後にホルモン療法の中断が予定され、進行時にはすべての患者がホルモン療法を再開した。
また、副次評価項目として、ホルモン療法を中断している間、患者が正常なテストステロン値を維持できる期間もモニターされた。MDTを追加すると、進行までの期間が延長された。併用群では中央値に達しなかったが、ホルモン療法のみを受けた患者では進行までの期間の中央値は6.1カ月であった。これらの結果は、放射線療法と間欠的なホルモン療法の戦略により、患者が安全に正常なテストステロン値を維持できる時間を最大化し、患者のQOLを維持できることを示している。
本治療の忍容性は良好で、グレード3の毒性は各群で3例ずつ観察された。これらは、筋運動障害、泌尿器系および消化器系の副作用であったが、いずれも容易に対処可能であった。
「本研究は、オリゴ転移疾患に対して、転移指向放射線療法と間欠的なホルモン療法の併用が、管理可能な毒性で、無増悪生存率を有意に改善させたことを示している」とTang医師は述べた。「私は、このデータと今後の試験で得られる知識を組み合わせることで、このような診断後の患者のQOLを安全に維持することができるようになると確信している」。
また、ベースライン時と3カ月後の末梢血から採取した臨床サンプルを用いて、フローサイトメトリーやT細胞受容体シーケンシングなどの探索的な解析も行った。その結果、併用療法群では特にT細胞の活性化、増殖、クローン拡大の指標が増加することが示された。
これらの知見をよりよく理解し、どの患者がこの治療法の併用で利益を得るかを予測するバイオマーカーを特定するためには、さらなる研究が必要である。継続的なホルモン療法と定期的な治療中断を直接比較する大規模なランダム化比較試験が必要である。
本研究は、Cancer Prevention and Research Institute of Texas(CPRIT)(RP200669)、National Cancer Institute of the National Institutes of Health(P30 CA016672)、Andrew Sabin Family Fellowshipの支援を受けた。Tang医師には利益相反はない。共著者の全リストと著者の開示はこちら。
- 監訳 河村光栄(放射線科/京都桂病院)
- 翻訳担当者 河合加奈
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- 原文掲載日 2023/04/06
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