ASCO泌尿生殖器がんシンポジウムの最新知見

米国臨床腫瘍学会(ASCO)
2023年米国臨床腫瘍学会(ASCO)泌尿生殖器(GU)がんシンポジウム(2月16日~18日、カリフォルニア州サンフランシスコMoscone West Building)において、泌尿生殖器がんの新たな治療法および管理方法を探る注目すべき試験が8件発表された。

泌尿生殖器のエキスパートは下記の試験について見解を述べる用意があり、またASCOメディアチームは、試験の著者や外部専門家への取材希望があれば手配することができる。

木曜日の発表

【アブストラクト18】 転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対するrucaparib[ルカパリブ]。ドセタキセル(タキソテール)または第2世代アンドロゲン経路阻害薬治療との比較におけるルカパリブの全生存期間および有効性に関するTRITON3試験の中間解析。アブストラクト全文はこちら(2月16日(木)セッションのアブストラクト発表部分)

「ルカパリブは、最新のアンドロゲン経路阻害薬による治療を1回以上受けたBRCA変異型転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対して、現在行われているどの標準治療よりも優れており、mCRPCに対してドセタキセルを含む対照群よりも良好な結果を出したはじめての薬剤です。長期的には、この試験はルカパリブがBRCA変異型mCRPC患者に対する優れた治療選択肢となると実証しています」と、筆頭著者のAlan Haruo Bryce医師は述べている。

【アブストラクト15】 第3相ARASENS試験における、ダロルタミド(DARO)(ニュベクオ)とアンドロゲン除去療法(ADT)およびドセタキセル(DOC)の併用療法の、疾患量と疾患リスク別の有効性と安全性。アブストラクトの全文はこちら(2月16日午前10:00開始のセッションのアブストラクト発表部分)

【アブストラクト176】  小細胞神経内分泌(SCNC)表現型の転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対するファーストインクラスである経口自然免疫活性剤BXCL701とペムブロリズマブ(キイトルーダ)の併用。第2a相試験の最終結果。アブストラクト全文はこちら(2月16日(木)午前11:30開始のポスターセッションのアブストラクト発表部分)

「この第2a相試験における有効性と安全性に関する素晴らしい結果が、現在行われている追加試験によって実証されれば、BXCL701とペムブロリズマブの併用はいずれ、プラチナベース化学療法に続く新しい治療法の確立が待たれるこの高リスク型前立腺がんに対して、新たな治療選択肢となるかもしれません」と、筆頭著者のRahul Raj Aggarwal医師は述べている。

【アブストラクト170】  転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)および相同組換え修復(HRR)遺伝子変異を有する患者に対するニラパリブ(NIRA)(ゼジューラ)とアビラテロン酢酸エステルおよびプレドニゾン(AAP)の併用。MAGNITUDE試験の第2回中間解析(IA2)。アブストラクト全文はこちら(2月16日(木)午前11:30開始のポスターセッションのアブストラクト発表部分)

【アブストラクト20】 高齢者(70歳以上)のde novo転移性去勢感受性前立腺がん患者におけるアビラテロン酢酸エステル+プレドニゾンおよびアンドロゲン除去療法+/-ドセタキセルの有効性と安全性を、若年者(70歳未満)と比較して検討。PEACE-1試験。アブストラクト全文はこちら(2月16日(木)午後4:45開始のセッションのアブストラクト発表部分)

金曜日の発表

【アブストラクト LBA442】 BCG不応性の高リスク筋層非浸潤性膀胱がん(HR NMIBC)患者に対するペムブロリズマブ(キートルーダ)単剤療法。第2相KEYNOTE-057試験のコホートBの結果。アブストラクト全文はこちら(2月17日(金)午後2:00開始のセッションのアブストラクト発表部分)

「今回の結果は、BCG不応性の乳頭状高リスク筋層非浸潤性膀胱がん(HR NMIBC)で、根治的膀胱全摘除術を拒否または不適格であった患者が、ペムブロリズマブ単剤療法により効果を得られる可能性を示唆しており、上内皮がん(乳頭状腫瘍を伴なうもの、あるいは伴わないもの)の患者集団に関するこれまでの知見を拡大するものです。本試験結果は、BCG不応性乳頭状HR NMIBCの新規全身療法に関して、(サンプルサイズと追跡期間の点で)最も強固なデータのひとつです」と、筆頭著者のAndrea Necchi医師は述べた。

【アブストラクトLBA443】 CheckMate274試験の延長追跡調査結果。アブストラクトの全文はこちら(2月17日(金)午後2:00開始のセッションのアブストラクト発表部分)
(※CheckMate 274 は、根治的切除後の高リスクの筋肉浸潤性尿路上皮がん (MIUC) (膀胱、尿管、または腎盂) に対するアジュバント NIVO と PBO の第 3 相二重盲検試験)

「今回、最小追跡期間31.6カ月のITT集団で、ニボルマブ(オプシーボ)による無病生存期間中央値はプラセボと比較して2倍になりました。PD-L1≧1%の集団では、ニボルマブによる無病生存期間中央値は、プラセボ群の6倍以上となりました。これらの結果は、根治手術後再発リスクが高い筋層浸潤性尿路上皮がん患者に対する標準治療としてのニボルマブによる術後療法を推進するものです」と、筆頭著者でASCOフェローのMatt D. Galsky医師は述べている。

土曜日の発表

【アブストラクト607】 ランダム化第2相BIONIKK試験で治療を受けた転移性淡明細胞型腎細胞がん(mRCC)患者における二次治療の全生存期間(OS)と有効性結果。アブストラクト全文はこちら(2月18日(土)午前7:00開始のセッションのアブストラクト発表部分)

「今回はじめて、追跡期間中央値46カ月における二次治療の有効性および全生存期間を報告します。この試験により、ccrcc4腫瘍患者におけるニボルマブ+イピリムマブ(ヤーボイ)の高い有効性、ccrcc2腫瘍のVEGFR-TKI単独に対する感受性、ニボルマブ単独と比較した場合のニボルマブ+イピリムマブの全般的に優れた有効性を確認しました。この結果は、二次治療におけるTKIの有効性が分子グループ(ccrcc2でより高い有効性)および一次治療で受けた治療(ccrcc4において、ニボルマブ+イピリムマブ後でニボルマブ単独より高い有効性)によって影響を受ける可能性を示唆しています。これらの結果は、われわれが新しい仮説をたてる助けとなるし、バイオマーカーを利用した臨床試験を後押しするものです」と、筆頭著者のYann-Alexandre Vano医学博士は述べている。

2023 ASCO Genitourinary Cancers Symposium News Planning Teamの情報開示はこちら

  • 監訳 榎本 裕 (泌尿器科/三井記念病院)
  • 翻訳担当者 奥山 浩子
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2023/2/18

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