薬の併用療法が前立腺癌の進行を止める助けとなる

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薬の併用療法が前立腺癌の進行を止める助けとなることがオレゴン健康科学大学癌研究所によって発見
オレゴン健康科学大学 2007年2月16日

オレゴン州ポートランド-抗癌剤であるドセタキセル〔docetaxel〕に高用量の活性型ビタミンDを併用すると、進行性前立腺癌患者の予後が延長される。そしてドセタキセル単独療法と比較しても、この併用療法による副作用の増強は見られなかったと、オレゴン健康科学大学癌研究所(Oregon Health & Science University Cancer Institute)の主任研究員であり、この臨床試験の指導者であるTomasz M Beer医師による発表がJournal of Clinical Oncology誌2月20日号に掲載された。

高用量の錠剤であるDN-101は癌治療のために開発された。カルシトリオール〔calcitriol〕は天然のホルモンであり生物学的に活性型のビタミンDである。DN-101は、このホルモンの自然のレベルよりかなり高用量な活性型ビタミンDを供給する。

この試験結果は、Androgen Independent Prostate Cancer Study of Calcitriol Enhancing Taxotere (ASCENT:アンドロゲン非依存性前立腺癌におけるタキソテール併用カルシトリオール試験)の一部である。この試験は、DN-101の製造会社であるNovacea社とタキソテールの製造会社であるSanofi-Aventis社によって資金援助された。

ASCENTは、アンドロゲン非依存性前立腺癌として知られている、ホルモン療法に反応しなくなった進行性前立腺癌患者に対するDN-101とドセタキセルの併用療法を評価するランダム化二重盲検プラセボ対照試験である。全米およびカナダの48施設から250人がこの試験に参加した。

この併用療法の延命効果は、多変量解析によってDN-101とドセタキセルの併用療法群の患者の生存期間は、ドセタキセル単独群の患者より49%延長したことによって確認された(p=0.035)。

「この試験の第一の目的は、小規模な第2相臨床試験であるOHSU試験結果を確認し、この併用療法を進行性前立腺癌の新しい治療法として開発するべきかどうかを判断することであった」と、Beer医師は語った。「私たちの結果は、DN-101は患者の予後をかなり向上させる見込みがあることをはっきり示している。」Beer医師はOHSU癌研究所の前立腺癌研究部長でありOHSU医学部の血液腫瘍内科学の准教授である。

全生存率はASCENTの副次的評価項目であった。この試験の主要評価項目は、前立腺細胞のみで作られるタンパク質の前立腺特異抗原(PSA)の50%以上の減少であった。前立腺癌を含む、前立腺のある状態は、血中PSA値が高いことと関係がある。

PSA全奏効率は、ドセタキセル単独群の患者(52%)よりDN-101とドセタキセル併用群患者(63%)により多く現れた。この2つの群の違いに統計的有意性は無かった(p=0.07)ものの、歴史的に見て併用群の結果は高いPSA奏効率である。治療開始6ヶ月の時点でDN-101群患者の58%とプレセボ群患者の49%がPSA値で奏効した。

「昨年共同研究者が行ったこの分野の新しい研究で、生存者のほぼ半数しかPSAの変化で説明できないことが示されていた」とBeer医師は語った。「PSAは変わらず重要であるが、平凡な予後因子であることが判明した。」

DN-101は、人体が食物中のビタミンDやビタミンDのサプリメントから作れるよりはるかに高いカルシトリオール(1,25ジヒドロキシコレカルシフェロール)の血中濃度を作り出すことによって作用する。高濃度の1,25ジヒドロキシコレカルシフェロールは、多くの一般的に使用される抗癌剤の働きを一層高め実験室や動物モデルにおいて抗腫瘍活性を示す。

ASCENT試験の予期していなかった結果は、カルシトリオールを内服した癌患者は血栓症も減ったことで、オレゴン健康科学大学癌研究所のチームにより明らかとなった。これらの結果は最近のBritish Journal of Haematology誌に掲載された。血栓症、つまり血液の凝固は進行性の癌患者にとって深刻な合併症であり、全ての癌患者の15~20%が罹患している。

DN-101の製造会社であるNovacea社は、DN-101とドセタキセルの併用療法に関して、全生存率を主要評価項目とした第3相ランダム化試験を継続中である。

DN-101はNovacea社によって製造されている。OHSUとBeer医師は、この研究と技術の結果に商業的利害があるNovacea社と多大な経済的利害関係がある。この潜在的な利害関係が検討され、OHSUの利益相反審査委員会(Conflict of Interest in Research Committee)と保全管理監督委員会(Integrity Program Oversight Council)により承認されたマネージメントプランが実行された。

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Nogawa 訳
榎本 裕(泌尿器科医)監修 
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