運動によって前立腺癌の放射線治療を受けている男性の倦怠感が防止される
キャンサーコンサルタンツ
2009年1月
運動により、放射線治療を受けている前立腺癌の男性の倦怠感が少なくとも短期間軽減され、長期的な倦怠感も改善する可能性があることをカナダの研究者らが報告した。この試験の詳細は2009年1月20日発行のJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。[1]
米国では前立腺癌は男性の2番目に多い癌である。放射線治療は余命が長い男性においては初期前立腺癌の重要な役割を担う。しかし、放射線治療を経験した多くの患者は、極度の倦怠感を訴え、治療期間中は倦怠感が強まってゆき、治療が終了した後であっても続く傾向がある。
カナダの研究者らは前立腺癌に対して放射線治療施行中の男性における運動の影響を評価するためにランダム化比較試験を行った。試験では121人の男性が有酸素運動、筋力トレーニング、「通常ケア」の3群に無作為に割付けられた。2つの運動群の被験者は資格のあるトレーナーの指導のもとで週3回、合計で24週間運動を行った。筋力トレーニング集団はウエイトトレーニングを行い、有酸素運動集団はトレッドミルや、エレプティカルマシン、サイクリングマシンで運動した。通常ケア群は、試験実施中は運動を始めないように指示された。
FACT(Functional Assessment of Cancer Therapy)-Fatigue(倦怠感)、FACT-P(前立腺癌用)、FACT-G(癌全般用)スケールを用いて、放射線治療開始前、放射線治療開始後12週目、そして24週目に再度、倦怠感とQOLを評価した。この結果の分析によるとより、有酸素運動と筋力トレーニングの両方が短期間の倦怠感を減少させることが示された。最初の12週間は、筋力トレーニングも有酸素運動も通常ケア群に比べて倦怠感が軽減したが、24週間全体で見た場合は通常ケア群より倦怠感が減少したのは筋力トレーニングのみであった。
研究者らは、運動が、神経筋能力の改善、筋肉疲労の減少、抑うつの軽減、睡眠の改善、そして社交性の向上などといった、さまざまな要因で倦怠感の程度に影響を与えたと考えたが、プラセボ効果の可能性についても認めている。
コメント:
理由はともかく、前立腺癌の放射線治療中で倦怠感のある患者にとって運動は役に立つようである。研究者らは「短期間では筋力トレーニングと有酸素運動の両方が放射線治療を受けている男性前立腺癌患者の倦怠感を軽減させた。筋力トレーニングは長期的な倦怠感の改善に加え、QOL、体力、トリグリセリド、体脂肪にも改善が認められた。」とまとめた。運動は、倦怠感がある場合には辛くて、興味をそそられないことかもしれないが、治療期間中の倦怠感を克服し、QOLを改善するもっともよい方法かもしれない。
参考文献:
[1] Segal RJ, Reid RD, Courneya KS, et al. Randomized controlled trail of resistance or aerobic exercise in men receiving radiation therapy for prostate cancer. Journal of Clinical Oncology. 2009; 27: 344-351.
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