カルボプラチンがセミノーマに放射線より毒性が少ない可能性

米国国立がん研究所(NCI)

Carboplatin May Be Less Toxic Than Radiation for Seminoma
(Posted: 06/07/2004, Updated: 08/03/2005)July 23, 2005, issue of the Lancet(▼PubMed論文抄録参照)によると睾丸腫瘍の一種セミノーマの早期治療にカルボプラチン注射が放射線と同等の効果が得られ、二次発癌率も少なくより安全性が高いとみられる。


要約
カルボプラチン1コースで早期セミノーマ(精巣腫瘍の一種)治療に放射線療法と同等の効果があり、より安全で二次発癌のリスクを減少させると思われます。ベネフィットの持続性を判断するために今後の追加調査が必要です。

出典   2005年7月23日The Lancet  ▼PubMed翻訳抄録

背景
早期セミノーマの大多数は放射線で治ります。しかし胃、膀胱、結腸、直腸おそらく膵臓の諸器官で二次発癌のリスクを増大させます。セミノーマは精巣腫瘍の約30%を占めます。

試験
1996年から2001年に英国、ベルギーの研究者は1,477人のステージⅠセミノーマ患者を登録しました。患者は無作為に二つのグループに割り振られ一方のグループは放射線療法を受け他方はカルボプラチン一回注入を受けました。

試験の研究チームはロンドンSt. Bartholomews病院のR.Timothy Oliver医学博士に先導されました。結果は2004年6月米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で初めて発表されました。

結果
患者たちは中央値で4年間追跡調査されました。癌再発と二次癌の割合は二つのグループで同程度でした。放射線グループの約97%、カルボプラチングループの98%の患者が2年後に癌無しでした。3年後では放射線グループの96%、カルボプラチングループの95%の患者が癌無しでした。

現在中央値4年目のフォローアップでは放射線グループで原発腫瘍の再発が32例であり、カルボプラチングループでは27例でした。二次癌の発症はカルボプラチングループでは3例放射線グループでは11例でした。カルボプラチングループでは残存精巣で腫瘍が発症したのは1例であり放射線グループでは7例でした。

制限事項
付随する論説によればカナダ、オンタリオのトロント大学放射線腫瘍医のPadraige Warde医学博士とMary Gospodarowics医学博士は「この試験結果はステージⅠセミノーマにカルボプラチンの有効性を確認しますが、補助化学療法がこの状況の患者に最適な管理戦略であるのかは確認できません。中央値のフォローアップが短期間のためその後カルボプラチン治療グループでさらに再発があるかもしれません」と書いています。さらにカルボプラチンの長期間の副作用は知られていません。

コメント
「この成果は有望です」と米国国立癌研究所(NCI)の癌研究センターWyndham Wilson医学博士は述べました。「カルボプラチンは二次発癌のリスクに関して放射線より安全かもしれないことを示唆しています」。「さらなるフォローアップによって試験の2比較群の違いはもっと大きくさえなるかもしれません」「放射線による二次癌のリスクは経時的に25年、さらにその先まで増えるとしたら」と付け加えました。

残存精巣の腫瘍発生の減少をみたこの試験結果は特に有望です。「明白な結果を得るにはより長期でより多数のフォローアップが必要ですが、この驚愕的な結果は研究によって最終的に乳房の温存と同じくらい当たり前に精巣の温存を可能にする最初の手がかりです」とOliver氏は述べました。  (内村美里人 訳・Dr.榎本 裕(泌尿器科) 監修 )

*サイト内関連資料:40,576例の精巣癌患者における二次発癌:長期生存者に焦点をあわせて2005/9

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