2025年ASCO泌尿生殖器がんシンポジウムの注目演題

2月13日から15日までカリフォルニア州サンフランシスコおよびオンラインで開催される2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)泌尿生殖器がんシンポジウムでは、泌尿生殖器がんの治療に対する新たなアプローチを模索する9つの研究が発表される。
 
ASCOの専門家が、以下の研究について外部のコメントや見解を提供する。インタビューのスケジュールを設定する場合には、ASCOメディア・チームに問い合わせること。
 
アブストラクト21:アンドロゲン除去療法としての経皮エストラジオールパッチ:転移性前立腺がんにおけるアンドロゲン受容体経路阻害剤との併用の有効性と安全性―STAMPEDE試験プラットフォームからのランダム化比較。

アブストラクトの発表は、2月13日木曜日午後5:00(太平洋標準時)から始まるセッションの一部である。
 
「アンドロゲン除去療法は、転移性前立腺がんの治療の要となっています。従来は黄体形成ホルモン放出ホルモン作動薬または拮抗薬が併用されていましたが、経皮エストロゲンは、異なる毒性プロファイル(ほてりの軽減、骨密度の改善、女性化乳房の増加)で同様の結果をもたらします。治療はより早い段階でアンドロゲン受容体経路阻害剤を取り入れる方向に進んでいるため、この研究は、経皮エストラジオールがアンドロゲン受容体経路阻害剤と安全に併用できることを示しました」とASCO専門家のBradley McGregor氏は述べている。

アブストラクト120:アンドロゲン除去療法を受けている進行前立腺がん患者の疲労を軽減するための構造化運動プログラムの前向き試験。

アブストラクトの発表は、2月13日木曜日午前11時25分(太平洋標準時)から始まるポスターセッションの一部である。
 
アブストラクト121:転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療におけるアンドロゲン受容体経路阻害剤併用の有無を問わない177Lu-PSMA-617の有効性:VISION二次解析。

アブストラクトの発表は、2月13日木曜日午前11時25分(太平洋標準時)から始まるポスターセッションの一部である。

アブストラクトLBA138:転移性去勢抵抗性前立腺がん患者におけるzesteホモログ2エンハンサー阻害剤mevrometostat[メブロメトスタット]とエンザルタミド(販売名:イクスタンジ)の併用:ランダム化用量拡大試験。

アブストラクトの発表は、2月13日木曜日午後5:00(太平洋標準時)から始まるセッションの一部である。

「アビラテロン(販売名:ザイティガ)やエンザルタミドなどのアンドロゲン受容体経路阻害剤は、転移性前立腺がんの治療に最初は非常に効果的ですが、進行すると二次耐性が生じ、機序によってその使用が制限されます。多数の文献で、zesteホモログ2エンハンサー(EZH2)が薬剤耐性の促進因子であることが示唆されています。おそらく、系統可塑性を媒介し、アンドロゲン受容体と直接連携してアンドロゲン受容体シグナル伝達を促進するからです。このため、前立腺がん治療薬としてEZH2阻害剤の開発に大きな関心が寄せられています。全体として、アンドロゲン除去療法とアビラテロンの併用で進行が認められた患者では、エンザルタミドにEZH2阻害剤メブロメトスタットを追加すると、エンザルタミド単独の場合と比較して無増悪生存期間が大幅に延長されました。この組み合わせにより、進行リスクがエンザルタミド単独と比較して約50%減少し、無増悪生存期間の中央値は14カ月以上に達しました」と、主任研究著者のMichael Thomas Schwizer医師は述べている。

アブストラクト310:アンドロゲン除去療法後のテストステロン回復が高リスク前立腺がん患者の全生存率に与える影響:第3相試験の長期データ。

アブストラクトの発表は、2月13日木曜日午後5:00(太平洋標準時)から始まるセッションの一部である。
 
アブストラクト662:FGFR3変異を伴う進行固形腫瘍における強力で高度にアイソフォーム選択的なFGFR3阻害剤LY3866288のヒト初回投与第1相試験:FORAGER-1の初期結果。

アブストラクトの発表は、2月14日金曜日午後4:00(太平洋標準時)に始まるセッションの一部である
 
「FGFR3の腫瘍原性変異は、転移性尿路上皮がんの15~20%を含む、いくつかのがん種で腫瘍の増殖を促進します。FGFR3変異を伴う転移性尿路上皮がんの患者は、病気が進行すると選択肢が限られます。エルダフィチニブ(販売名:バルバーサ)は、FGFR3変異を伴う転移性尿路上皮がんの患者に対するFDA承認治療薬ですが、FGFR1~4の阻害による大きな毒性によって治療効果は制限されます。FORAGER-1試験の目的は、新しいFGFR3アイソフォーム特異的阻害剤LY3866288の安全性と予備的な有効性を定義することで、このアンメットニーズに対処することでした。LY3866288は、FGFR3変異を伴う転移性尿路上皮がん患者で予備的な抗腫瘍活性を示し、客観的奏効率は41%、FGFR3変異患者での病勢制御率は90%、エルダフィチニブを含むFGFR阻害剤を以前に投与された患者での奏効率は50%でした。これらのデータは、エルダフィチニブで疾患が進行した患者を含むFGFR3変異転移性尿路上皮がん患者に対して、LY3866288が忍容性があり効果的な標的療法であることを裏付けています」と、筆頭著者のGopa Iyer医師は述べている。

アブストラクト664:EV-302:局所進行または転移を伴う未治療の尿路上皮がんにおけるエンホルツマブ ベドチン(販売名:パドセブ)とペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)の併用と化学療法を比較する第3相国際共同試験の最新分析。

アブストラクトの発表は、2月14日金曜日午後4:00(太平洋標準時)に始まるセッションの一部である。

一次治療薬のエンホルツマブ ベドチンとペムブロリズマブは、幅広い患者集団および事前に指定されたサブグループ全体で化学療法と比較して優れた有効性を示し続けた。エンホルツマブ ベドチンとペムブロリズマブに対する奏効は持続的であり、全集団における奏効期間の中央値は約2年であった。また、エンホルツマブ ベドチンとペムブロリズマブの併用2年後に臨床的な完全奏効が持続する確率は74%であった。「これらの結果は、局所進行または転移を伴う尿路上皮がん患者の一次治療の標準治療薬として、エンホルツマブ ベドチンとペンブロリズマブの有効性を裏付けるものです」と、主任研究著者のThomas Powles医学博士(FCRP)は述べている。

アブストラクト618:前向きCOTRIMS(Cologne trial of retroperitoneal lymphadectomy in metastatic seminoma)試験:最終結果。

アブストラクトの発表は、2月15日(土)午前8:10(太平洋標準時間)から始まるセッションの一部である。

「臨床病期IIA/Bセミノーマに対する現在の標準治療選択肢はどちらも治癒率が高く、5年全生存率は95%ですが、長期にわたる心血管、代謝、または内分泌の副作用が伴い、その発生率は未治療の同等の集団と比較すると3~7倍高くなります。さらに、二次悪性腫瘍を発症するリスクも大幅に高まります。これらの長期毒性により、非癌関連死亡率が2~3倍に増加します。私たちの研究目標は、高い腫瘍学的有効性を維持しながら、治療関連の副作用が少ない治療選択肢を提供することです。神経温存後腹膜リンパ節郭清術は、ハイボリュームセンターで手術件数の多い外科医によって実施される必要がありますが、治療に伴う副作用は患者の約10%に発生するものの、副作用は最小限で安全に実施できることが分かりました。後腹膜リンパ節郭清術によって高い無再発生存率と全生存率が認められ、中央値41カ月の追跡期間後でそれぞれ90%と100%でした」と、主任研究著者のAxel Heidenreich医師は述べている。

アブストラクト437:進行腎細胞がんの予後および効果予測バイオマーカーとしての循環血中腎障害マーカー-1(KIM-1)の評価:CheckMate 214の事後解析。

アブストラクトの発表は、2月15日(土)午前10時15分(太平洋標準時)から始まるセッションの一部である
 
「現在、腎細胞がんの治療の指針となる血液検査はありません。タンパク質である腎障害分子-1(KIM-1)は、腎臓がん細胞から放出され、血液中に検出されます。ニボルマブとイピリムマブ(販売名:ヤーボイ)の併用は、CheckMate 214試験で確立された腎臓がんの標準的な一次治療薬です。この研究では、CheckMate 214の患者821人の患者を分析し、KIM-1血液検査が有用な予後および効果予測情報を提供するかどうかを確認しました。本研究では、3週間後のKIM-1検査が、腎臓がん患者のその後の免疫治療に対する反応性を予測する初めての血液検査であることがわかりました。他の試験で検証されれば、この血液検査は予後を予測する能力を向上させ、患者をより早く適切な治療に導くのに役立つ可能性があります」と、主任研究著者のWenxin (Wincent) Xu医師は述べた。

  • 監修 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)
  • 記事担当者 仲里芳子
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  • 原文掲載日 2025/02/11

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