進行前立腺がんにカボザンチニブ+アテゾリズマブ併用療法が有望

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

ASCO専門家の見解

「転移を有する去勢抵抗性前立腺がんの予後は非常に不良です。アテゾリズマブ(販売名:テセントリク)とカボザンチニブ(販売名:カボメティクス)との併用療法は、臨床的相乗効果のある特異的な作用機序をもちます。これにより、患者の治療選択肢の幅が広がる可能性があります。最も重要かつ目新しいことに、この併用療法は治療が最も困難な患者の一部集団、例えば、内臓の腫瘍転移など、急速に進行する疾患の患者集団で有効でした。CONTACT-02の最初の結果を大変嬉しく思います」とASCOの専門家であるMark T. Fleming 医師は述べた。

試験要旨

目的骨盤外リンパ節または内臓への転移を伴う転移去勢抵抗性前立腺がん
対象者新規ホルモン療法で進行したがん患者507人
主な結果新規ホルモン療法での治療歴がある転移を有する去勢抵抗性前立腺がんで、カボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法を受けた患者は、新規ホルモン療法の2回目の治療を受けた患者と比較して、画像診断に基づく無増悪生存期間が良好であった。
意義・新規ホルモン療法で進行した、骨盤外リンパ節または内臓への転移を有する去勢抵抗性前立腺がん患者は、予後不良であり治療の選択肢も限られている。
・本試験は、内臓転移を有する患者の割合が高い進行した前立腺がんにおけるチロシンキナーゼ阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法の第3相試験として唯一、画像診断に基づく無増悪生存期間が有意に、かつ臨床的に意義のある改善を示したものである。

骨盤外リンパ節または内臓への転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者で、カボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法を受けた患者は、ホルモン療法を受けた患者に比べ、病勢進行までの期間が有意に改善した。本研究は、1月25日から27日までカリフォルニア州サンフランシスコで開催される2024年ASCO泌尿生殖器がんシンポジウムで発表される。

試験について

「転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)は依然として致命的な疾患であり、リアルワールドエビデンス(実臨床で得られるエビデンス)によると、新規ホルモン療法による治療にもかかわらず進行したmCRPC患者の全生存期間中央値は2年未満です。その上、内臓への転移を有するmCRPC患者の中央値はさらに悪く、特に肝臓への転移を有する患者の全生存期間中央値は14カ月未満です。この患者集団はCONTACT-02の患者集団の約4分の1を占め、全体の試験集団で認められたものと同等の有益性が確認されました」と、本研究の筆頭著者であるユタ大学Huntsman Cancer InstituteのNeeraj Agarwal医師は述べた。

CONTACT-02試験では、治療歴のある507人の患者が無作為に割り付けられ、チロシンキナーゼ阻害薬であるカボザンチニブとプログラム細胞死タンパク質1(PD-L1)阻害薬であるアテゾリズマブの併用療法(n=253)またはホルモン療法(n=254)のいずれかの治療法を受けた。チロシンキナーゼ阻害薬は標的療法の一種で、チロシンキナーゼ酵素を阻害してがん細胞の増殖を止める。PD-L1阻害薬は免疫療法薬の一種で、T細胞の表面に存在するタンパク質であるPD-1を標的とし、免疫系がより効果的に病気を排除できるようにするものである。

患者の年齢中央値は71歳で、ベースラインの前立腺特異抗原(PSA)スコアの中央値は25~34 ng/mLであった。患者の約5人に4人が骨転移を有し、4人に3人がリンパ節腫大を有していた。また、患者の約40%が内臓転移を有するがんであった。本試験の主要評価項目は、無作為化された最初の400人の患者の画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)および無作為化された全患者の生存期間(OS)であった。副次的評価項目は全奏効率であった。

主な知見

追跡期間中央値14.3カ月後、カボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法を受けた患者では、ホルモン療法を受けた患者と比較して、進行または死亡のリスクが35%減少したことが明らかとなり、無増悪生存期間に統計学的に有意な改善が認められた。(無増悪生存期間中央値 6.3カ月対4.2カ月、HR(ハザード比): 0.65、p値(実験の整合性を示す指標):0.0007)。

肝転移を有する患者において、画像診断に基づく無増悪生存期間は併用療法群で6カ月であったのに対し、ホルモン療法群では2.1カ月であった。

ドセタキセル療法による治療歴のある患者において、画像診断に基づく無増悪生存期間は併用療法群で8.8カ月であったのに対し、ホルモン療法群では4.1カ月であった。

6カ月以上の追跡調査後、カボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法を受けた患者では、ホルモン療法を受けた患者に比べて全奏効率も高かった(それぞれ 13.6%[23/169]対4.2%[7/165])。

グレード3および4の有害事象は、カボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法群では48%、ホルモン療法群では23%に発現し、グレード5の有害事象はそれぞれ9%対12%に発現した。治療に関連したグレード3~4の有害事象で最も発現頻度が高かったのは高血圧で7%、次いで貧血6%(コントロール群より少なかった)、下痢4%、倦怠感4%であった。

次のステップ

CONTACT-02試験は全生存期間データを収集するために継続中であり、研究者らは患者から報告された治療効果の分析も計画している。

本試験はExelixis,Inc.社から資金提供を受けた。

  • 小宮武文(腫瘍内科/Penn State College of Medicine)
  • 翻訳担当者 山口みどり
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  • 原文掲載日 2024/01/22

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