腎がん術後キイトルーダの延命効果が初めて試験で示された
米国臨床腫瘍学会(ASCO)
ASCO専門家の見解
「KEYNOTE-564試験の最新結果は、腎臓がんの術後療法におけるペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)の有効性に焦点を当てており、治療プロトコルに重要な進化を及ぼすこととなります。本試験において無病生存期間と全生存期間の双方の改善が認められたことから、ペムブロリズマブは高リスク患者に対する標準治療の選択肢に位置付けられました」と、Mark T. Fleming医師(ASCO専門医)は述べた。
試験要旨
目的 | 腎臓がんの一種である淡明型腎細胞がんに対する術後療法 |
対象者 | 中等度から高度の再発リスクを有する淡明型腎細胞がん患者994人(転移病歴を有するが病変を認めない、術後1年以内の患者を含む) |
主な結果 | ペムブロリズマブは、術後の再発リスクが高い淡明型腎細胞がん患者において、プラセボと比較して全生存期間を有意に改善した。 |
意義 | ・著者らによると、淡明型腎細胞がん患者の30~50%は、根治を目的とした手術後に再発する可能性があり、しばしば不治の遠隔転移をもたらす。 ・本試験は、約50年の腎がん術後療法で延命効果を示した最初の第3相試験である。 |
第3相KEYNOTE-564試験では、手術後の再発リスクが高い淡明型腎細胞がん(ccRCC)患者を対象に、ペムブロリズマブによる術後療法が全生存期間を有意に改善したことが報告された。本試験は、腎臓がんにおけるあらゆる術後療法で全生存期間の改善が示された最初の第3相試験であり、意義深い。本試験は、1月25日~27日、カリフォルニア州サンフランシスコで開催される2024年米国臨床腫瘍学会(ASCO)泌尿生殖器(GU)がんシンポジウムで発表される。
試験について
KEYNOTE-564試験は、ランダム化多施設二重盲検試験であり、淡明型腎細胞がん(ccRCC)患者を対象に、術後療法としてのペムブロリズマブの有効性を評価するためにデザインされた。合計994人の患者が、ペムブロリズマブ投与群(n=496)またはプラセボ投与群(n=498)に1対1で無作為に割り付けられた。年齢18歳以上、再発リスクが中高または高リスクのccRCC(侵襲的性の高いがんであることを示す肉腫様特徴の有無は問わない)を有し、腎がん治療歴がなく、試験開始の12週間以内に手術を受けた患者を対象とした。
本試験の主要評価項目は無病生存期間であり、副次的評価項目は安全性および全生存期間であった。
主な知見
- 患者の追跡期間中央値は約57カ月であり、その範囲は47.9カ月~74.5カ月であった。48カ月時点での推定全生存率は、ペムブロリズマブ投与群91.2%、プラセボ投与群86.0%であった。
- がんの再発リスクについては、プラセボ投与群の患者と比較してペムブロリズマブ投与群の患者は28%減少した。
- 死亡リスクについては、プラセボ投与群の患者と比較してペムブロリズマブ投与群の患者は、38%低下した。
- 本試験では、さまざまな特性の患者にわたって有効性が示された。
KEYNOTE-564試験において患者に認められた副作用は、主に自己免疫性であり、PD-1阻害薬で一般的に観察される副作用と一致しており、さまざまな臓器に影響を及ぼした。約18%の患者がこれら副作用によりペムブロリズマブを中止したが、治療に直接関連した死亡例はなかった。
「本試験を通じて、ペムブロリズマブは単に腎臓がん再発を遅延させるだけではなく、患者の全生存期間を有意に改善する手段となることがわかりました。多くの淡明型腎細胞がん患者が、根治不可能な遠隔転移につながる再発リスクが高いことを考慮すると、本試験結果によって臨床現場は変化していくでしょう」と、本試験の筆頭著者であるToni K. Choueiri医師(ダナファーバーがん研究所ランク泌尿生殖器がんセンター長)は述べた。
次のステップ
KEYNOTE-564試験におけるペムブロリズマブの成功を踏まえ、研究者らは現在、ペムブロリズマブと低酸素誘導因子2(HIF-2)阻害薬ベルズチファンを併用する新たな試験の患者を募集している。
本試験は、Merck & Co., Inc.の子会社であるMerck Sharp & Dohme LLC社から資金提供を受けた。
- 監訳 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)
- 翻訳担当者 平 千鶴
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- 原文掲載日 2024/01/27
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