MDA研究ハイライト2022/8/10:腎臓がんtelaglenastat、KRAS/NRAS変異大腸がん標的療法

MDアンダーソンがんセンター研究ハイライト2022/8/10

2  エベロリムスとテラグレナスタットの併用により腎細胞がん患者の無増悪生存期間が改善

腎細胞がん(RCC)では特定の遺伝子変異により、がん細胞におけるグルタミン代謝が増大している場合が多い。mTOR阻害剤エベロリムス(販売名:アフィニトール)とグルタミナーゼ阻害剤telaglenastat[テラグレナスタット]によるグルコースとグルタミン代謝のデュアルターゲット療法は、前臨床試験で相乗的な抗がん作用を示した。Nizar Tannir医師が主導した第2相ENTRATA試験には転移性進行腎細胞がん患者69人が登録された。100%の患者が前治療として2種類以上のチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、88%がチェックポイント阻害剤を使用しており、前治療ラインの中央値は3ラインだった。追跡期間中央値7.5カ月の時点での無増悪生存期間(PFS)中央値は併用療法群が3.8カ月、プラセボ群が1.9カ月だった。この試験の結果は、テラグレナスタットとエベロリムスの併用がいくつもの前治療を受けた腎細胞がん患者のPFSを改善することを示しており、新しい治療法としてのグルタミナーゼ阻害剤の可能性について、今後さらなる評価が期待される。詳細についてはClinical Cancer Research誌を参照。

監訳:榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

5 KRAS/NRAS 変異型大腸がんにビニメチニブ+パルボシクリブ併用が抗腫瘍活性を示す

大腸がんの約45%はKRAS/NRAS変異を有し、現在承認されている標的療法に反応しない。新しいKRAS G12C阻害剤は有望であるが、KRAS G12C変異は大腸がんのごく一部にしか発現がみられないことから、研究者たちは、より良い治療法を提供するために、KRAS/NRASの下流にある複数のシグナル伝達経路を標的とすることを提案している。Alexey Sorokin博士、Michael Lee医師、Scott Kopetz医学博士が主導した新しい研究では、MEKに対する標的療法[ビニメチニブ(販売名:メクトビ)]とCDK4/6に対する標的療法[パルボシクリブ(販売名:イブランス)]の併用が、並行臨床試験において有望な抗腫瘍活性の徴候を示すという結果が得られた。18匹の患者腫瘍組織移植(PDX)モデルにおいて60%の腫瘍がこの併用療法に反応し、反応の指標となるいくつかのバイオマーカー、そして治療抵抗性のメカニズムも特定することができた。またKRAS/NRAS遺伝子変異を有する転移大腸がん患者6人を対象とした第2相試験の安全性評価リードインでは、本併用療法の忍容性の高さが示されたほか、1人の患者で奏効が認められた。これらの初期データはこの並行臨床試験の価値を、そしてこの併用療法の可能性を強く示唆している。詳細についてはCancer Research誌を参照。

監訳: 野長瀬 祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)    

翻訳担当者 岩佐 薫子

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