進行性腎臓がんへのアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用で全生存期間は延長せず

IMmotion151試験では、治療歴のない転移性腎細胞がん(mRCC)に対する、抗PD-L1抗体の免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブ(販売名:テセントリク)と、抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬であるベバシズマブ(販売名:アバスチン)を用いる一次治療で、全生存期間はスニチニブを用いる標準治療と比較して延長されなかった。

しかし、バイオマーカー解析によって、抗PD-L1抗体薬と抗VEGF薬の併用療法が有効となる患者を特定できる可能性があることが探索的サブ解析の結果から示唆されていると同試験チームがJAMA Oncology誌で述べている。

IMmotion151試験では、治療歴のない転移性腎細胞がん患者915人を、アテゾリズマブ(1,200 mg)とベバシズマブ(15 mg/kg)を3週間ごとに静脈内投与する群、またはスニチニブを経口投与する(50 mg/日を4週間、その後2週間投与休止)群に無作為に割り付けた。患者はPD-L1の状態によって層別化された。

中間解析では、アテゾリズマブとベバシズマブの併用療法は良好な安全性プロファイルを示し、無増悪生存期間(PFS)の延長が認められた。解析時、全生存期間の結果は未達であった。

最終解析では、アテゾリズマブとベバシズマブの併用療法群と標準的なスニチニブ群との間で全生存期間に有意差はなく(全生存期間の中央値:併用療法群36.1カ月対スニチニブ群35.3カ月)、PD-L1陽性の患者集団においても有意差は認められなかった(併用療法群38.7カ月対スニチニブ群31.6カ月)と、ニューヨークのスローンケタリング記念がんセンターのRobert Motzer医師らは報告している。

しかし、アテゾリズマブとベバシズマブの併用療法群とスニチニブ群の探索的解析では、「腫瘍のトランスクリプトーム解析でクラスター化された、エフェクターT細胞/腫瘍増殖、腫瘍増殖、または核内低分子RNAの特徴によって全生存期間の中央値の改善傾向」が認められた(併用療法群35.4カ月対スニチニブ群21.2カ月、ハザード比:0.70、95%CI:0.50~0.98)とのことである。

また「バイオマーカーの結果は有望でしたが、術後療法などの他の臨床環境への他の抗血管新生阻害薬とチェックポイント阻害薬の併用療法の適用性や、既存の臨床リスクグループモデルへの付加価値を示すには、さらなるデータセットでこれらの分子グループを評価および検証する必要があります」と指摘している。

本試験はF. Hoffmann-La Roche Ltd.社およびGenentech, Inc.社から資金提供を受けている。Motzer医師はGenentech/Roche社およびその他の製薬会社と金銭的利害関係がある。

出典:https://bit.ly/3EuX2e9 JAMA Oncology誌、オンライン版2021年12月23日

翻訳担当者 瀧井希純

監修 高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学病院 腫瘍内科/ゲノム医療センター)

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