放射線治療は腎臓がん全身療法の代替として安全で有効な可能性

新たな単群試験において、オリゴメタスタシス性腎細胞がん(RCC)に対して、放射線治療の単独療法が安全かつ有効な非侵襲的治療であると、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らが発表した。この研究結果は2021年10月27日にLancet Oncology誌に掲載された。

放射線腫瘍学准教授のChad Tang医師主導の、MDアンダーソン腎細胞がんオリゴメタスタシス第2相試験は、オリゴメタスタシス性腎細胞がん(少数の腎細胞がん腫瘍が体内の他の1~2箇所のみに転移している病態である)に対する標準的な全身療法の代替治療としての体幹部定位放射線治療(SBRT)の使用について調査して報告する最初の試験である。単独療法としての体幹部定位放射線治療は、腎臓がんのもっとも多いタイプである腎細胞がんの患者に対して、抗腫瘍効果を示し、無増悪生存期間(PFS)の中央値22.7カ月を達成した。

「これらの知見は興味深いものです。なぜなら、腎細胞がんは生物学的に放射線抵抗性であるという放射線腫瘍学の定説に挑戦しようとしているのですから」とTang医師は述べた。「腫瘍が増殖および発生するたびに繰り返し放射線を照射するという方針は、有望な結果を示しました。今回の結果は、腎細胞がん患者にとって放射線治療が全身療法に代わる治療方法になり得ることを示す証拠が増えたことを意味します」。

体幹部定位放射線治療(SBRT)は高線量の放射線を用い、周囲の正常組織を損傷することなく腫瘍部位を正確に治療する。コンピュータ断層画像(CT)、磁気共鳴画像(MRI)、およびその他の高度な画像技術のガイド下で、腫瘍の位置と形状をマッピングし、的確な照射角度と放射線強度を決定する。体幹部定位放射線治療は非侵襲的な局所治療であり、さまざまな解剖学的位置の転移性病変の抑制に繰り返し適用できる。この方法は通常、小さな早期肺がんや前立腺がんに用いられる。

腎臓がんの患者にとって、放射線治療は、痛みの軽減や症状の管理といった緩和目的で用いられることが多く、通常は免疫療法や分子標的薬などの全身療法が、最前線の治療として用いられる。全身療法の薬剤は非常に有効であるが、その一方で全身に影響をおよぼし、強い毒性を伴う可能性がある。

「この新しい放射線治療を使った戦略を構築することで、治療パラダイムの転換を試み、全身療法に代わる低コストかつ低毒性の代替治療を、条件に適合した一部の腎細胞がん患者さんに提供できるようにしたいと考えています」とTang医師は述べた。

2018年7月から2020年9月までの間に、研究者らは、明細胞型の腎細胞がんと診断され、かつ5つ以下の転移性病変を有する患者30人を登録した。本試験は、白人20人(67%)、ヒスパニック7人(23%)、黒人2人(7%)、およびアメリカ先住民1人(3%)の参加者で構成されている。年齢の中央値は65歳、女性が6人(20%)、男性が24人(80%)であった。本試験の主要評価項目は、推定無増悪生存期間および実施可能性の評価であった。

結果として、放射線治療は、経過観察で良好な忍容性が示された。すべての患者が、1回以上の放射線治療を完了し、毒性による線量減少や中止を必要としなかった。グレード2以下の有害事象を経験した患者が6人(20%)、グレード3の事象(疼痛および筋力低下)を経験した患者が2人、およびグレード4の事象(高血糖)を経験した患者が1人であった。

治療から3カ月後に採取した生検から、放射線治療により、生存腫瘍細胞の消失または腫瘍細胞の増殖を著しく抑制する効果があることが確認された。研究者らは、14人の患者に対し初回フォローアップ時にコンピュータ断層画像(CT)ガイド下生検を実施した。6人の患者(43%)は生存悪性腫瘍の試験で陰性であった。その他の患者のうち、検査が可能だったすべての患者で、腫瘍細胞の増殖が有意に減少を示し、放射線治療前の15%から治療後の6%に低下した。報告された試験期間の終了時点で、23人の患者(77%)は全身療法を受けていなかった。

単独療法としての体幹部定位放射線治療のリスクと利益をさらに調査するためにより大規模なランダム化試験が必要であるが、本試験ではオリゴメタスタシス性腎細胞がんの治療に対して放射線治療が実施可能であり最少の毒性で良好な転帰を示した。

「これらの結果を受けて、オリゴメタスタシス性腎細胞がんに対する放射線治療は、従来の治療方法を変える可能性があると確信しています」とTang医師は述べた。「毒性による身体の負担を最小限にする治療の選択肢を提供することにより、生存期間を延長し、生活の質を最大限に高められるでしょう。病状がやや重い患者さんを対象にこの治療方法の研究を続け、治療をしたこれらの患者さんのバイオマーカーを分析し、この治療方法が有効な患者さんを上手に選択できるようにする計画です」。

本試験はthe Anna Fuller Foundation、the Cancer Prevention and Research Institute of Texas (CPRIT)、the National Cancer Instituteの支援を受けた。Genitourinary Medical Oncology准教授であるPavlos Msaouel医学博士が共著者、Genitourinary Medical Oncology教授であるNizar Tannir医師が筆頭著者である。共同執筆者とその情報開示については、こちらに掲載されている。

翻訳担当者 三宅久美子

監修 河村光栄(放射線科/京都医療センター放射線治療科)

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